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【伝説の一台】フェラーリ製V8エンジンを搭載した唯一無二のランチア「ランチア テーマ 8.32」はどのようにして生まれたのか?

2026年1月18日

ランチア テーマ 8.32(Lancia Thema 8.32):フェラーリ製V8とセダンの融合。1989年、ランチア テーマ 8.32は、私が初めて手にした自動車のパンフレットだった。今ではイタリア車ファンにとっての夢の車となっている。

フェラーリ製のV8エンジンを搭載したイタリアの高級セダンという、過激なスタートを切ったこの車は、イタリア車の控えめな愛好家たちにとって、排他的なアウトサイダーとなった。それでもなお、この時代のランチアブランドをこれほどよく表現している車は他にない。技術的な卓越性、デザインの優雅さ、メーカーとしてのランチアにとっての経済的自滅が、印象的に再現されている。

天才と狂気の境界線は、しばしば紙一重だと言われる。1980年代のセダンの中で、この言葉がこれほどまでに当てはまるモデルは、「ランチア テーマ 8.32」をおいてほかにない。

この特別なクルマとの最初の出会いは、ジュネーブ モーターショーだった。8歳の自動車好きの少年だった私は、ランチアのブースに足を踏み入れ、フラッグシップモデルの光沢ある黒いカタログを手にしてそこを後にした。「テーマ 8.32」は、両親が乗っていたミドルクラスのフォルクスワーゲンやアウディによって形作られていた私のクルマ観を、根底から覆した。

控えめな佇まいの全長4.59メートルのセダンでありながら、予想外にもスポーツカーの心臓を宿していたこのクルマを、私は決して忘れることがない。私にとってそれは、移動の道具というよりも、むしろ一つの芸術作品だった。フェラーリ製V8エンジンのイラスト、最高級のポルトローナ フラウ製レザーに包まれたコクピットの眺め、そして技術的スケッチの数々―それらは、私の理想とする自動車像を深く形作ることになった。

高速走行時の安定性を高める格納式リヤスポイラーは、8.32の独占的なディテールだ。

それは単なる強いブランド忠誠心の始まりにとどまらず、今日に至るまで続く“アンダードッグ”への嗜好の原点でもあった。なお、エンツォ・フェラーリの決定により、「テーマ 8.32」は「ランチア フェラーリ」を名乗ることは許されなかったが、その法外とも言える高コストな技術的綱渡りは、ランチアの経営陣に大きな衝撃を与えた。

テクニカルデータランチア テーマ 8.32
エンジンV型8気筒DOHC フロント横置き
排気量2,927cc
最高出力215PS@6,750rpm
最大トルク285Nm@4,500rpm
0–100 km/h加速6.8秒
最高時速240km/h
駆動システム前輪駆動 5速マニュアルトランスミッション
全長/全幅/全高4,590/1,758/1,420mm
燃費6.3km/L
車重1,400kg
新車価格(1987年当時)72,600ドイツマルク(約670万円)

量産車プラットフォームをベースに、フェラーリ製V8エンジンを横置きで搭載した「テーマ 8.32」は、1987年から1992年にかけて2シリーズ、3,520台という限定的な生産台数にとどまり、生産はボルゴ サン パオロ工場で行われた。一方、「テーマ」はキヴァッソ工場で生産されている。車両の基盤となった「ティーポ クアトロ」アーキテクチャは、きわめて実用本位のものだった。しかし1987年以降、ランチアがそこから生み出した内容には、今なお最大級の敬意を抱かざるを得ない。車重わずか1.4トンで215馬力、格納式リアスポイラーによるアクティブエアロダイナミクス、アクティブサスペンション、そして同クラスでも屈指の凝ったインテリア―これらすべてが、アウトサイダー的存在であったこのブランドの強烈な自己主張となっていた。

マラネロで鋳造され、ドゥカティによって組み上げられたV8エンジンは横置きでエンジンルームに押し込まれている。

しかし同時に、それは大きな賭けでもあった。エンジンルーム内は常に高温で、冷却系は能力の上限まで追い込まれていた。横置き搭載されたV8は、整備性や日常的な使い勝手は極めて悪く、一般的な整備工場では手に負えない存在でもあった。20,000kmごとに必要とされるタイミングベルト交換は、伝説的なほど複雑かつ高額で知られている。熟練したランチアのメカニックでさえ、エンジンを降ろさず、ホイールハウス内のサービスホールから作業するだけでも、3,000ユーロ(約53万円)を優に超える費用を提示するほどだ。では、それらをすべて無視すべきなのだろうか。

夢から悪夢へ:中古車の運命

こうした現実を前に、必ずしも裕福とは言えない一部の中古車購入者は、「テーマ 8.32」を「1万ユーロ以下で手に入る廉価なフェラーリ」と捉え、適切なメンテナンスをほとんど行わなかった。その結果、ずさんな整備やベルト交換の怠りが致命的なエンジン損傷を招く危険性は極めて高い。さらに、ボディの鈑金品質自体は良好であるにもかかわらず、30年以上を経た個体では深刻な錆が広範囲に進行している可能性もある。純正スペアパーツは、時に法外な価格であるばかりか、入手自体が困難な場合も少なくない。

インテリア全体に用いられた上質なウッドとレザーは、細部までこだわった作りだとわかる。トランスミッションはマニュアルのみで、「テーマ 8.32」はオーナードライバーのために設計されたモデルであった。

制御ユニット、内装部品、ホイール―多くのパーツは、入手できたとしてもヨーロッパ全域のネットワークを持つクラブを通じてしか入手できない。ランチアのドイツにおける販売は、2017年に(ひとまず)終了している。そのため「テーマ 8.32」を所有するには、上級クラス相当の予算だけでなく、経年劣化を受け入れる度量と、洗練されたメンテナンス戦略が不可欠となる。

その走りに魅了される

「テーマ 8.32」の機械的に堅牢なエンジンが本調子であれば、パワーとサウンドというご褒美が返ってくる。キーを回した瞬間から、V8は驚くほど滑らかで豊かな響きを伴って鼓動する。フェラーリのシリーズモデルに比べると、その性格は控えめに仕立てられており、クランクシャフトのジャーナルはマスバランス向上のため90度オフセットされ、点火順序も1-8-4-2-7-3-6-5へと変更されている。

クラッチの反応は良好だが、過度にシビアではない。中回転域から上では、内燃機関のシンフォニーが立ち上がり、決して安くはない維持費を十分に補って余りある。パワーの出方は滑らかで、触媒をまだ装着していなかった初期型の8.32は、簡単に200km/hを超え、余裕で240km/hに達する。

1989年以降はオプションのアクティブサスペンションにより、快適性とコントロール性を巧みに両立させている。高速道路では、前輪駆動の「テーマ 8.32」は安定感に優れ、このブランドが数々のラリー世界選手権で優勝したことを示す。

「ランチア・テーマ 8.32」は紳士的でありながら、飾り気のない独特の魅力を備えている。パフォーマンスとラグジュアリーを体現するブランドマニフェストとして構想されたモデルだ。今日では、その矛盾と大胆さこそが、私にとって最大の魅力である。

結論:
フェラーリの血統を受け継ぐ控えめな「紳士のエクスプレス」として、「テーマ 8.32」は今なお中古市場で手の届く価格帯にあり、強烈な吸引力を放っている。しかし、その高度な複雑性は確実に代償を伴う。入念な整備と専門的なケアがあってこそ、この高性能セダンはかろうじて理にかなった選択となる。経済的な忍耐力こそが、「テーマ 8.32」を所有するうえで今も昔も不可欠な前提条件なのである。

Text: Lars Jakumeit
Photo: Tom Salt