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2025年を振り返って―やっぱり自動車って楽しい―

2025年12月30日

2025年もまばたきしている間に終わろうとしている師走の最終週に、今年還暦を迎えた大林晃平が新旧ロードスターで早朝の三浦半島をドライブしながら、一年間を振り返ることにした。アウトビルトジャパンに掲載する記事の取材を通して感じた一年間の雑感はいかに。

2025年の今年は記念すべき昭和100年でもあるが、さらにものすごく個人的な話題で恐縮だが還暦を迎えた年でもあった。そんな今年もおかげさまで健康で楽しくアウトビルトジャパンの取材を担当させていただき、幸せな1年だったと思っている。

いつも思うことだが普通の生活では絶対に見ることのできない世界や人に接することを、今年も取材を通して行わせていただき、素晴らしい一年であったと心から感謝している。そして、こうして文章を書かせてもらえていることも、僕にとっては幸運であり、こんな駄文を読んでいただけていることも、本当に幸運だし皆様には心からありがとう、と伝えたい。

本当に今年もありがとうございました。

さてそんな貴重なアウトビルトジャパンの取材を数多く行わせていただいた2025年だったが、その中から特に印象に残っているものはなんだったんだろう、と師走もあと数日で終わろうとしている年末の早朝に、NAロードスターとNDロードスター(990S)を2台連ねて三浦半島をのんびり周回しながら反芻することとした。

マツダ ロードスターはやっぱりいい

そういえば、ロードスターを多数集めてとっかえひっかえ乗ったのも三浦半島で、あの時もNAとグレード・年式違いのNDを乗り比べて原稿を書いた。あの時のNAと今回のNAは全く違う個体なのだが、どちらも乗ってみればこれこそまごうかたなき「ユーノス ロードスター」で、風を轟々と巻き込みながら走っているととにかく軽さとダイレクト感が今のNDとは全く違うことに驚く。

もちろん990Sは大変優れた車で、実際に愛車として日常使いしている僕としては乗り降りが辛くなってきたこととバックモニターがないこと(笑)を除いては買い物にも仕事にも一切困ることがない信頼性抜群の実用車ともいえるオープンカーである。

しかし、NAは味が濃い。前述の風の巻き込み方はもちろんだが、ノンパワーステアリングの感覚やエンジンの回転感などが、なんというかオールドミニみたいなちょっと(かなり)古いイギリスの自動車に似ていて、アナログでダイレクト感に溢れている。そしてそれこそがNAを愛する人たちの心を捕まえて離さないファクターであるといえよう。

観音崎の近くにある短く細いトンネルに入り、もちろんオートライトではないのでマルチユースレバーをひねるとぱかっと目の前にリトラクタブルのヘッドライトカバーが持ち上がる。その瞬間にいつも、ああ今乗っているのはNAだったんだと心底ちょっと誇らしげに痛感する。NAロードスターはそんな自動車なのである。

身近になったジープ ラングラー

などと感じながらも2025年を振り返ると、2月のJAIAのことを思い出した。

毎年とっかえひっかえいろいろな自動車に乗る一日なのだが、節分の日に乗った自動車の中で一番今でも印象に残っているのはジープ ラングラーのルビコンで、走り始めた瞬間に、こんな車だっけ?と一緒に試乗したアメリカ大好きな鬼軍曹閣下と顔を見合わせた。ルビコンというグレードなわけだし、なんというか個人的にもっとワイルドで漢(おとこ)っぽい車と思いきや、軽やかにふわーっと回る4気筒ターボエンジンで走るルビコンはワイルド感ゼロ。それはテンガロンハットをかぶりカウボーイブーツを履いたひげ面の男が、晩御飯のディナーのメニューを開きながらカロリーを気にして悩んでいるかのようで、哀れささえ感じられた。ステランティス大丈夫かいな、と余計なおせっかいが口に出てしまう。

そんな悪態をついたというのにステランティスは我々をアルファロメオ ジュニアとプジョー3008の試乗会に招待してくれた。なんとも太っ腹である。

プジョー 3008は秀逸

だからおべっかを言うのではないが、どちらも完成度の高い自動車で、特に3008のお洒落な室内の雰囲気となんとも洗練された走行感覚に大変感動した。個人的に2025年の乗り逃げ一位はこの3008で、なんとも残念ながらもはやディーゼルエンジンがないことだけが寂しいが、それ以外は久しぶりに、往年のプジョーらしいしっかり骨太ながらもしなやかな実用車に接することができて嬉しかった。

その反対に乗った瞬間に複雑な思いになったのは、マイバッハEQSで、豪華絢爛で滑らかな走行感覚は認めるものの、リヤシートに設けられた折りたたむことのできないまま起立しているスマートフォンスタンドを見ながら、微振動するリヤシートに座っていると、あの57とか62と名前の付けられたマイバッハの路線はいったいどうした(???)と余計なツッコミを入れたくなった。もちろんBEVの方向でマイバッハが進化することには大賛成だが、高級さを醸し出すにはもう少しだけ重厚さとかエレガンスであってほしいと思う。

それとは対照的に、ああやっぱりドイツ車はすごいなぁ、となんとも陳腐な言葉が口をついて出たのは、千葉のポルシェエクスペリエンスセンターで行われた、ゴルフ8.5のRとGTIの試乗会で、Rはもちろんのこと、GTIでも還暦ジジイが車に置いてきぼりを食らうほどの高性能が、なんの苦労もなく得られることに感動した。サーキットでは限界性能を引き出そうとかなり頑張って振り回したはずなのに、ゴルフのポテンシャルは稚拙な僕の性能をはるかに上回る天上にあり、結局自動車に負けた感じさえ抱きながらアクアラインをげっそりしながら帰ったことを思い出す。そしてこれ以上の性能はもうまったく必要ないとも痛感したが、フォルクスワーゲングループの本来持っている底力を嫌というほど感じた試乗会でもあった。

イッキ乗り

日本車では暑い夏から晩秋にかけて「注目すべき日産車とマツダ車の全部に一人でイッキ乗りする」という無謀な企画を実行させていただいた。一週間ずつ連続して乗るというわがままを、快く許してくださったメーカーと広報に方には本当に感謝するしかないが、連続して乗ることで見えてくるものが実に大きかったことも事実で、個人的にも大変勉強になったし、正直言ってものすごく大変ではあったら楽しく充実した日々だった。許されるのであれば2026年もこのような企画を継続したいし、皆様に一切の忖度なしで自動車の情報をお届けしたい。

人との出会い

試乗会ではないが富士スピードウェイのサーキットホテルで開催されたフェラーリ296スペチアーレの発表会は今でも心に残っている。というのも、僕がたまたま指定された席の隣は元NAVI/エンジン/GQの編集長であった鈴木正文さんがいらしたからで、「間もなく発表会が始まりますので皆様携帯電話の電源をお切りになるかマナーモードにしてください」というアナウンスが会場に流れると同時に「なんでそんなことをしなくてはいけないんだ!王様でもここに来るとでもいうのか!!」と力強く発言されたことに、ああ鈴木さんはあの鈴木さんのままだ、と本当に涙が出るほど嬉しくなった。肝心の車のことはさっぱり忘れてしまったが、まあいっか。

人と言えば、今年お会いした人の中ではAPIOの河野社長が印象に残っている。元デザイナーであったという経歴の河野さんの社長室はまさに趣味と実益の入り混じった(笑)アリババの洞窟のような空間で、ほぼジムニーの話をしないまま、本や文具やカバンの話を長時間にわたって楽しみ、何も肝心のインタビューをしないまま社長室をあとにする、という失態を演じた。

だからおべっかで言うわけは決してないが、APIOのお店の雰囲気はなんだか楽しいい雑貨屋とか文具店のような空間で、ぜひ皆様にも遊びに行ってほしい場所であった。何も買わなくても(というのも失礼極まりないが)なんだか並んでいる商品を見たり、ぶらぶらしているだけでも特にジムニー乗りには楽しい雰囲気のお店で、この手の専門店にありがちな敷居の高さゼロなので、気楽に一人でも多くの方に訪れてほしいと思う。

同じように自動車のことは一切覚えていないが、まだまだみんな自動車が好きなんだなぁ、と嬉しくなったイベントが二つある。一つは筑波サーキットで行われたハイパーミーティングと、もう一つは桐生のクラシックカーフェスティバルで、どちらも会場は押すな押すなの大盛況だった。本当に自動車というのは多くの人に楽しさと明るさと元気を与えるものだということを痛感する瞬間だし、そんな雰囲気をこれからもレポートしていきたいと思う。

イベントと言えば、東京モビリティショーも印象に強く残ったイベントであった。2年前の雰囲気が心に残っていたためか、イベントに行く前日まで、会場に行くのがちょっと億劫だなぁ、と思っていたのだが、行ってびっくりしたことは、なんだか思い切り楽しくニコニコしている自分がそこにいたことである。多くのメディアにすでにレポートされているように、もう圧倒的な空間演出と全力で展開していたトヨタのブースは言うまでもなく楽しかったし、いつもと同じようにトラックブースに行くと心は自然と童心に戻ってしまう。

本当に多くの優秀で熱く、そして魅力的な方々の知恵と工夫で自動車は作られている、ということを毎回感動する部品ブースはいくらいても時間が足らないほどの情報量と素晴らしいエンジニアに満ち溢れていた。これからもあの方たちの英知と情熱によって、自動車は人の生活を潤し思い出を紡ぎ続けてくれる、と僕は信じている。モビリティショーに行って本当に良かった。

などとつらつら思い出しながら、早朝の観音崎の交差点で信号待ちをしていると、対向車線にいい感じに使い込まれた一台のスーパーセブンが点対称に止まった。ものすごく寒い朝にもかかわらずどちらももちろん屋根を開けてオープン状態で、周囲の歩行者から見ればなんとも愚かで変な行為にみられていたかもしれない。青信号になりすれ違いざまに僕はちょっと手をあげてスーパーセブンのドライバーに挨拶すると、向こうも手をあげて挨拶を返してくれた。ドライバーは間違えなく僕よりも一回り以上先輩で、実にいい感じの赤いスカーフがおしゃれに風に揺れていた。そんな瞬間に、僕はいつも「自動車っていいなぁ」となんとも言えない多幸感を抱く。

難しくも魅力的で不思議な存在、それが自動車。年の瀬を感じる三浦半島をドライブしながら、来年も皆様が自動車と幸せな時間を送ることができることを、心からお祈りしています。2026年も何卒宜しくお願い致します。

Text&Photo:大林晃平