【感動物語】旧い911が新たな生命を吹き込まれる場所!過去19年間にわたり2,300台以上もの空冷式ポルシェ911を蘇らせたレストアラー“Early 911S”訪問記
2026年1月12日
「Early 911S」は空冷式ポルシェ911を修復する聖地だ。過去19年間で、彼らは膨大な数のレストアとスペアパーツの在庫を構築してきた。我々はヴッパータールにある本社を訪問した。
ヴッパータール—世界的に有名な懸垂式モノレールだけの街だと思っていませんか?答えは「ノー」です。ポルシェファンであれば、すぐに「Early 911S」を思い浮かべるでしょう。社名が示すとおり、このヴッパータールに拠点を置く企業は、クラシックポルシェのレストアを専門としています。
オーナーのマンフレッド ヘリング(Manfred Hering)氏は、空冷ポルシェ911を「デザイン、控えめな佇まい、そしてスポーティさが完璧に融合した存在」だと捉えています。とりわけ、工業エンジニアとしての訓練を受けた彼にとって、ツッフェンハウゼン製スポーツカーは、自身の会社にとって欠かせない成功要因だと位置付けられています。
マンフレッド ヘリング氏が、筋金入りの自動車マニアや天才的なメカニックというタイプではないことは、容易に想像がつきます。彼はむしろ、冷静沈着に計算するビジネスマンです。それでも、クラシックなポルシェ911についての知識は、他の追随を許しません。というのも、長年にわたって数多くの個体を手にしてきたからであり、その中には手つかずのオリジナル状態を保った車両も多数含まれています。
2300件を超えるポルシェ プロジェクト
「新車当時の納車状態を維持しているクルマも何台かあります。これまで一度も、ネジ一本たりとも緩められていません。もちろん、そうしたクルマがあれば、最も多くのことを学べます」。すべての車両には通しのプロジェクト番号が割り当てられており、その数はすでに2300件を超えています。

「Early 911S」では、これまでに大半の車両をレストアし、再販売してきました。中には、大規模なオーバーホールを行う価値がないとして、手を加えずにそのまま販売される個体もあります。現在も約700台ものクラシックポルシェが完成を待っており、この保有台数はツッフェンハウゼンのポルシェ本社工場に次ぐ規模です。
ヘリング氏がポルシェの世界に足を踏み入れたきっかけ
すべての始まりは、当時まだ広告代理店の代表だったマンフレッド ヘリング氏が、広告キャンペーンおよびプロモーションイベント用に購入した1台のポルシェ911でした。その後まもなく、彼はその911を自ら引き取り、レストアに出します。「あれはひどい出来でした」と彼は振り返ります。「それで思ったのです。こんなに難しいはずがない、と」。
しかし、約20年前当時は、部品を手配するだけでも相当な苦労を伴いました。ヴッパータールのポルシェセンターで工場長を務めていた人物が「もはや最新モデルには興味がない」と打ち明けたとき、マンフレッド ヘリング氏はそこに好機を見出します。「彼がいなければ、私はこの事業を始めていなかったでしょう」と、ヘリング氏は率直に認めています。
2006年、彼はそのポルシェの専門家とともに、スペシャリストのネットワークを構築しました。「最高のエンジンビルダー、最高の鈑金職人、最高の塗装職人、最高の内装スペシャリストです」。当初の計画では、年間2〜3台のポルシェをレストアするつもりでした。「クルマはもともと自分のためのものでしたが、私にはそれなりに良い審美眼があるので、十分に売れるとも分かっていました」。

ネットワーク化は、すぐにデメリットも露呈しました。マンフレッド ヘリング氏のもとに車両が最後に届くため、その後に多くの手直し作業が必要になったのです。それでも彼は、クラシックなポルシェ911Sを完璧にレストアするという哲学を貫きました。創業からわずか5年後、会社はヴッパータールにある元内装工場へと移転。当時の従業員数は16名でしたが、現在では鈑金、エンジンおよびトランスミッション、電装、内装の各部門に、見習いを含めて約100人が在籍しています。作業のほぼすべてを同一施設内で完結させており、外注しているのは塗装のみ。可能な限りオリジナルの素材を維持しながら、新車時の納車状態への復元を行っています。
空冷こそ絶対条件
「当初は1964年から1973年に生産された初期モデルだけを扱うつもりでした。もしそうしていたら、今の規模にはなっていなかったでしょう」とヘリングは語ります。「現在は、空冷であればすべてを扱っています」。対象には、ポルシェ356やポルシェ ヤークトワーゲンに加え、Gモデル、964、993シリーズも含まれます。

オリジナリティは、マンフレッド ヘリング氏にとって極めて重要な要素です。例外を認めるのは快適性に関してのみ。「スポーツシートのような感覚で、もう少し身体を支える専用のスプリングコアを開発しました」と彼は説明します。顧客の要望があれば、電動エアコン、ナビゲーションシステム、電子点火装置なども装着します。しかし、出力向上だけは、どれほど資金を積まれても、あるいは口説かれても受け付けません。「190馬力の2.4Sなら、それで十分です。私たちはチューニングはしません」。
パーツ商いではなく、パーツ倉庫
完璧なレストアに欠かせないのが、オリジナルの純正部品です。「Early 911S」は膨大な数のパーツを保有しており、ヴッパータールにある4拠点のうち3拠点に分散して保管されています。本社の倉庫もすでに限界状態で、エンジンブロックが数百基、ボディシェルが数十点、ドア、ホイール、ミラーなど、あらゆる部品が天井近くまで積み上げられています。ただし、これらはすべて社内用であり、部品単体の販売は行っていません。販売には多くの追加人員が必要になるうえ、「Early 911S」自身が手掛けるプロジェクトが十分すぎるほど控えているからです。常時100〜140台の車両が並行して作業されています。

他人の車両をレストアするのは、「特別な存在」に限られます。ヘリングがその範疇に含めるのは、初期型911ターボのような希少車に加え、かつてのプレスカーや警察車両、特別なボディカラーを持つ個体などです。そうでなければ、コストが見合わないのです。「私たちが投入する労力を考えると、割に合いません。その場合は、プロジェクトとして売却するか、他でレストアした方がいいと伝えます。912や911T、あるいは964のティプトロニックでは、投資する価値はありません」。そうした車両をまとめて購入し、部品取りを行い、不要なものは処分することもあります。
保証と忍耐を伴うレストア
評価基準でいう「コンディション1」を目指すため、「Early 911S」ではすべての車両を完全に分解します。エンジンとトランスミッションはオーバーホールされ、ワイヤーハーネスは新調、内装は修復または再製作され、ボディは必要に応じて錆取りと再塗装が施されます。「塗装や内装が完全にオリジナルであれば、そのまま残します」とヘリング氏は言います。その場合、別のヴィンテージシートの素材を使って、座面のみを補修する程度にとどめます。
「Early 911S」の高い基準には、レストア後に必ず行われる1,000kmの慣らし走行と、2年間の保証も含まれます。1件のプロジェクトにかかる作業時間は、おおよそ1,500〜3,000時間。その結果、完璧にレストアされたポルシェ911の価格は、軽く6桁(約1,800万円以上)を超えます。

数百件のプロジェクトが順番待ちをしているにもかかわらず、マンフレッド ヘリング氏は常に新たな車両を探し続けています。「基本的にはヨーロッパで、主にドイツ国内でしか買いません」。その中には、他所で雑にレストアされた911や、オーナーが見積もりを誤って途中で放置してしまった分解途中の車両も多く含まれています。
ヘリング氏は個人購入者に対し、車両確認の際には必ず専門家を同伴し、技術的コンディションを見極めるよう助言しています。また、十分な余裕を持った予算設定も重要だと強調します。「購入価格はあくまで一部に過ぎません。車種によっては、後から発生する追加コストが想像以上に膨らむことが多いのです」。
毎日のように常に何かが起きている
「Early 911S」の顧客の約70%は海外からです。価格が高額にもかかわらず、需要は非常に旺盛。幸いなことに、時差のおかげで電話は分散されます。「朝はアジア、日中はヨーロッパ、午後はアメリカとカナダから電話が来ます。毎日のように常に何かが起きています」。
ただし、「Early 911S」がレストアした車を購入する顧客には、ひとつ共通点があります。十分な資金力を持ち、そして―ヴッパータールにいるマンフレート・ヘリングのもとを、実際に訪れることです。
Text: Michael Struve
Photo: Marcus Gloger / AUTO BILD

