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PASグループとFCAの合併でできた新巨大自動車グループ「Stellantis(ステランティス)」 これからいったい何がどう変わるのか?

2021年1月14日

フィアットクライスラーとプジョーシトロエングループの合併によって生まれた14ブランド(!)を有する新たな「メガオートモビルグループ」の実態とその未来像

新しい巨大自動車グループ「ステランティス」: その意味? PSAグループとFCAの合併だ。全部で14ブランド。オペル、アルファロメオ、マセラティ、フィアット、プジョーなどなど…。その合併が2つのグループの各ブランドにとって意味することは以下の通りだ。その最新情報!

すべて言えますか?

プジョーを中心としたPSAグループとフィアットが主体のFCA。
2つのグループが合併してできた自動車グループ「ステランティス」には、ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、アメリカの14のブランドの集合体だ。
その14のブランドとは?
イタリアの「アルファロメオ」、「マセラティ」、「フィアット」、「アバルト」、「ランチア」。
ドイツの「オペル」。
フランスの「プジョー」、「シトロエン」、「DS」。
アメリカの「クライスラー」、「ジープ」、「ダッジ」、「ラム」
そしてイギリスの「ヴァオクスホール」というラインナップだ。

PSAグループとFiat Chrysler Automobiles(FCA)の合併交渉は長期化したが、成功した。
「ステランティス(Stellantis)」とネーミングされた、新巨大自動車グループは、14の個別自動車ブランドで構成され、現在いくつかの変更と調整が進行中だ。
PSAグループCEOのカルロス タバレスがグループの舵取りをしている。
彼は厳しい再編成を行うことで知られている。
それに伴いレイオフ(解雇)や工場閉鎖が議題となる可能性がある。

レネゲードとパンダがPSAのテクノロジーを取得

会社を健全な状態に戻すために縮小しようとしている新しいグループのボスの指揮下、新しいグループとしての技術的な取り組みは明確だ。
PSAグループのプラットフォームは、FCAグループが提供しているものよりも近代的だ。
そのため、将来的には、主に小型車と小型SUV、電気自動車は、PSAグループのアーキテクチャーを採用したものになると思われる。
これらはPSAグループのプラットフォーム、CMP(Common Modular Platform)をベースとする。
したがって、ジープ レネゲードの次期型モデルなどは、プジョー2008やオペル モッカと技術を共有することになる。
また、フィアット プント、500X、パンダの次期型モデルにもPSAの技術が採用される。
現行モデルのオペル アストラはプジョー308と技術を共有しているが、2021年に投入される新型アストラはEMP2アーキテクチャーをベースに開発されており、同じアーキテクチャーをベースにしたプジョー508と密接な関係を持つことになり、その恩恵を受けることが期待されている。
また、PSAグループ内のラインナップでも、シトロエンC1とプジョー108が電動化されるか、少なくともオール電動モデルが登場することは必然とされている。

ジープ レネゲードは、将来的には、プジョー2008と技術兄弟になる可能性が高い。
Photo: Fiat Chrysler Automobiles

マセラティ、電動フラッグシップモデルに

一方で、アルファロメオやマセラティといったイタリアの高貴なブランドが、すぐに合併の直接的な影響を受けることはないだろう。
アルファロメオはすでに、トナーレ(Tonale)クロスオーバーに、ジープ コンパスとレネゲードにも使われているプラットフォームを使用している。
しかし、その後に発売されるモデルは、新アーキテクチャーやPSAアーキテクチャーをベースにしたものになる可能性が高い。
アルファロメオ ジュリアとSUVのステルヴィオは、ジョルジオ プラットフォームを使用しており、マセラティのクロスオーバー、グレカーレ(Grecale)もこのプラットフォームを使用して開発されている。
新型MC20を筆頭に、数々のスポーティなモデルラインナップを有する「トライデント(3本の矢=マセラティのシンボルマーク)」ブランドは、FCAグループのラグジュアリーブランドとなる。
したがって、MC20スーパースポーツカーのようなスポーティなフラッグシップモデルから派生したフルEVや他の電動モデルは、FCAグループのEVのトップモデルとなるので、特別な位置を占めることになる。
投資対効果が良ければ、マセラティも短期間でプラットフォームを変更しなければならなかったオペルのような抜本的な変更を受ける可能性がある。

マセラティはスポーティな電動ブランドになる。とりわけ、MC20の全電動バージョンで。
Photo: Maserati

オペル、燃料電池駆動を開発

また、PSAグループとフランスの石油大手のトタル(Total=潤滑油で有名)が、欧州で電池セルを製造する合弁会社を設立したことから、将来的には欧州からも電池がやってくることになる。
設立された新合弁会社、「Automotive Cells Company」は、2023年から、フランスのダブリンとドイツのカイザースラウテルンで電池セルを生産開始する計画だ。
オペルのエンジニアが4気筒エンジンや燃料電池などの開発の中心的役割を担う。

ステランティスがPSAの新市場を開拓

PSAグループは、FCAとの合併を通して、オペル、プジョーの2ブランドとともに、米国に進出したいとしている。
遅くとも2026年までには、米国市場に参入することを目指している。
FCAグループとの合併により、ディーラーネットワークが整備される。
不振に陥っているDS部門も、DS 9で、アウディA6、メルセデスEクラス、BMW 5シリーズなどに対抗することが期待される。
全体的な相乗効果としては、コスト削減や自律走行などの将来技術への投資が急務となるグループ全体の財源の節約も期待できる。
加えて、競争が激化する中国市場において、ステランティスは更なる利益を上げることが期待されている。

まったく世の中の誰がプジョーとマセラティとオペルが同じグループになってしまうなんて予想していただろうか。今回のニュースを聞いた時に、いったいいくつのブランドがあるのか指を折りながら数えてみたが、案の定10本じゃ足りなかった。
これほどのブランドを持つ巨大グループが誕生する背景には、EV、自動運転技術、そして国を超えて生産と販売を続けるうえでのメーカーの生き残り戦略といったファクターが絡み合っての合併であることは言うまでもないが、それにしてもこれほどのブランドを有するグループが誕生したことは驚くほかない。
だがちょっと気になるのは、これだけのブランドが合併して生まれた巨大グループだというのに、肝心のEV技術や、自動運転システムに特別長けているメーカー、というのが見当たらないのはどうしたものだろうか、と余計な心配をしてしまう。
どのメーカーも、現時点においてはちょっと上記の技術において劣勢じゃなかったっけ? そんなメーカー同士が合併するということは、水面下で隠し玉が用意されているのだろうか…。
さらに「ステランティス」という、なんだかマゼラン星雲のかなたにあるような星の名前みたいで、覚えにくく、自動車メーカーらしくないのではないだろうか。
もう少しなにかわかりやすく、すっきりした名称で、新しさバリバリのグループが誕生してくれることを期待してしまう(他のメーカーも、いずれここに合流する予定なのだろうか、と勘繰ってしまう)。

Text: Wolfgang Gomoll
加筆:大林晃平
Photo: AUTO BILD montage
Alfa Romeo Giulia, Fiat 500e / Fiat Chrysler Automobiles
Peugeot 208, Opel Mokka / PSA Groupe