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トップリスト AUTO BILD編集記者の目から見て最も独創的なクルマ×13台

2020年12月31日

AUTO BILD編集記者が13台のクルマのどこが独創的なのか、その根拠や論理を語る。そしてそのうち日本車は何台あるのか?

AUTO BILD編集部が考える「このクルマは比べるものがないくらい素晴らしい!」 人目を惹くクルマたち。 以下のAUTO BILDの記者たちの選んだ車とその理由には、うなずけるものもあれば、首をかしげるものもあるかもしれないが、彼らが個人的に「これは独創的だ」と考えるクルマの一覧をご紹介する。

当然のことながら、AUTO BILD編集部で働く記者たちは、一日中車の仕事をしている。
テストし、検査し、測定を行う。
むろん、これには市場に出回っている最新モデルだけでなく、中古車やキャンピングカー、クラシックカーにも含まれる。
そして、編集記者たちは、多種多様なクルマの知識を蓄積しているだけでなく、さまざまに異なるクルマに対してエンスージアスティックで、熱心なことも言うまでもない。

しかし、個人的な記憶に残る1台ということになればどうだろうか?
それはレーシーなスポーツカー? エレガントなクーペ? あるいは他とは全く異なるクルマということになるのだろうか?
編集記者たちに彼らの率直な意見や想いを聞いてみた。
彼らが選んだ史上最も独創的な車のリストは、ルノー トゥインゴとボルボ240から始まり、テスラ モデルSとトヨタ プリウスで終わる。
以下、フォトギャラリーとともに、すべてのモデルと彼らが選んだ理由を紹介する。

Photo: JDM Expo Co., Ltd.
まずは日産ニスモ スカイラインR34 GT-R Z-Tune(2005)だ。
「日産のモータースポーツ部門であるニスモは、会社の記念日を記念して、生産終了から3年経ったスカイラインR34(写真)の特別シリーズ「Z-Tune」を発売した。このために、顧客の車は買い戻され、完全にリビルドされた。全輪駆動と全輪ステアリングが改良され、2万ドル(約210万円)のザックス製サスペンションが装着された。2.8リッターの直列6気筒ツインターボは排気量を増し、最高出力は507馬力にまで引き上げられた。象徴的なカラーであるミッドナイトパープルIIIを含む約19台のみが生産された」と、編集記者のモリッツ ドカ(Moritz Doka)はこのクルマがいかに特別なものであるかを書いている。
※R32でもR35でもなく、R34、というのがなんとも興味深いが、各種チューニングを施すにはサンヨンが適していることは確かだし、電子デバイスの迷宮のようなR35よりも、R34を選びたくなる気持ちも十分にわかる気がする。
Photo: EKanooRacing/youtube
デニス ペターマン(Dennis Petermann)記者は、マツダMX-5(NA=ユーノス ロードスター)への想いを次のように語っている。「初代であろうと最新世代であろうと、このロードスターはそれ自体に忠実であり続けている。楽しく、耐久性があり、安価で、それゆえに独創的にシンプルなモデルなのだ。それは乗ってみれば即座にわかる。マツダMX-5は、運転する人の顔に笑顔を与えてくれる」。
※初代ロードスターが選ばれたこと、それは日本人として純粋に嬉しい。思えばこの車から世の中に「オープン2シーター」というジャンルが復権したからである。その後登場した多くの亜流の2シーターは消えていってしまったが、ロードスターはロードスターのまま正常進化している。この初代は本当にまごうかたなきアイコンである。
Photo: Christian Bittmann / AUTO BILD
ジュリアン ラーベ(Julian Rabe)記者は、アウディA5 8Tに深い思い入れがある。「私が13年前のモデルをブリリアント(素晴らしい)と呼んでいるという事実は、多くの人を怒らせるかもしれません。しかし、私がブリリアントカーといえば、2007年から2016年まで製造されたA5が真っ先に思い浮かびます。なぜか? それは、A5が新しいボディルックを確立したからであり、それは当時のデザイン的革新であり、そしてそれが今日ではほぼクラシックだからです。しかも、それは全くそのようには見えない。ルックスは時代を超越して美しい。”単純に独創的”なのです」と、語る。
※なぜA5 8T限定モデルなのかはわからないが、このころのアウディ、特にA6の2.7Tなどは、風のようになめらかで速いモデルであったことを覚えている。そしてそれは今のアウディと比べてもまったく劣っていないばかりか、今でも新鮮さを保っていることもまた事実だ。
Photo: Toni Bader / AUTO BILD
ラルフ コプナー(Ralf Kopner)記者は「ポールスター2」について次のように語っている。「私を含む一般消費者にとって、電気自動車が内燃機関やハイブリッドに代わる本当の意味での代替車になるまでには長い時間がかかるでしょう。それにもかかわらず、私は現在、ポールスター2に非常に強い興味を持って見つめています。最高のデザイン、高品質、そして素晴らしい技術、トータルパッケージで、とても楽しいです。あなたがそれを買う余裕があるか、あるいはそれを望むならば…」。
※今年登場したポールスターは本当にいいらしい。2020年のベストモデルに挙げる人も多いほどで、その完成度はボルボ(といってはいけないのか)の中で一番という声も多い。価格についてはあともう一歩だが、ボルボ/ポールスターがいかにEVに真剣であるかを如実に物語る一台であるといえよう。
Photo: Christoph Boerries / AUTO BILD
Photo: Markus Heimbach
マティアス テッハウ(Matthias Techau)記者は、初代ルノー トゥインゴにとても強く惹き付けられた。彼は次のように書いている。「スマートよりもずっと前の、最初の、本当の楽しさとライフスタイルを兼ね備えた車。このミニマルなモビリティエッグは、急進的なスペースのコンセプトと巨大な折りたたみ式ルーフが印象的です。さらに、この車はオリジナルな外観で個性を体現しています。14年の歳月をかけて製造され、200万台以上が販売されました」。
※わかるよ、わかる、このトゥインゴ、名車だったようねぇ、と嬉しくなるようなチョイス。私の身近にもこの車をしゃぶりつくすように乗っている人物がいたが、シンプルで、タフで、人も荷物もいっぱい積んだまま長距離もこなせて、それは、それは、かわいい一台だった。内装のチャーミングさも、今となってはなんとも愛らしい。
Photo: Renault Twingo Initiale
カタリーナ ベルント(Katharina Berndt)記者は、初代テスラモデルSは衝撃的なクーデターだったと考えている。その理由は? 「テスラは大衆向けの最初の電気自動車を発売しましたが、そのデザインは根本的に異なるものではなく、高品質のセダンのものでした。さらに重要なのは、それまでの電気自動車のバッテリーは、通常、近くのスーパーまで往復するだけで精一杯というものでしたが、それもモデルSは劇的に変化させました」。
※テスラSはEVの性能を飛躍的に向上させた初めての自動車だと思う。それは航続距離だけではなく、腰が抜けるほどの加速という意味でもとびぬけた存在で、さらに(完成度は別として)自動運転のさきがけでもある。信頼性と安全性などに関していささかの不安もあるが、自動車の進化の歴史絵巻の上ではなくてはならない一台であることは間違いない。
Photo: Thomas Ruddies / AUTO BILD
マティアス ブリュッゲ(Matthias Brügge)記者は自問自答する。「トヨタ プリウスがなかったら、我々は今どこにいただろうか? 技術的には内燃機関と電気モーターの平和的な共存への道を示したのです。初代のプリウスはさておき、2代目プリウス(写真)は素晴らしいですね。一目でプリウスと認識できるそのスタイリングとともに、ドライバーは彼の「環境負荷低減への気持ち」を、誇らしげに運転することができます。多くの人はそれをどう思うのかわかりませんが、私はそれが素晴らしいと思います」。
※エポックメーキングに登場した初代ではなく、あえて2代目プリウスというのが面白いが、ハイブリッドシステムモデルの車を普通の人が普通に選ぶ、という時代を作ったのは間違いなくこの2代目。そういえばハリウッドスターの中でもこの2代目に乗ることが一時期流行り、チャイニーズシアター前の赤じゅうたんの近くまでに乗りつけていた姿が思い出されて懐かしい。
Photo: AUTO BILD / Sven Krieger
ラース ハンシュ-ペターセン(Lars Hänsch-Petersen)記者は、ボルボ240を高く評価している。「独創的なものは贅沢で珍しいものである必要はありません。逆もまた真なりです。ボルボ240はバスのように広々としていて、スイスアーミーナイフのように実用的で、戦車のように頑丈です。ボルボ愛好家の間では、このような車は売らないで、継承すべきだという意見が多いです。それが可能なのは、適切な手入れをすれば、このスウェーデン車は簡単に何世代も受け継ぐことができるからです。私は特にそのスポーティな才能に感銘を受けました。赤レンガでドリフトができない人は、単にドリフトができない人なだけです」
※ザ・ボルボと言うべき一台が240だろう。今思えばコンパクトなサイズと、ちょっと北欧を思わせる(?)内装などなど、世界中で流行った最初のボルボがこの240だった。この車と比べると今のボルボはどのモデルもびっくりするほど大きく、びっくりするほど豪華で高価になったなあ、としみじみ思う。
Photo: Roman Raetzke / AUTO BILD
ヤン ゴッツェ(Jan Götze)記者のお気に入りは「ミニ」。「美しく、印象的で実用的な車はたくさんあります。巧妙なディテールの車もたくさんありますが、車のコンセプトという点では、私の目には本当に独創的な車は数台しかありません。私にとって最も独創的な車は、1959年に登場した「ミニ」です。自動車史に残る画期的な車であるだけでなく、真のオールラウンダーでもありました。手頃な価格で、驚くほど広く、クーパーSのように、より大きく、よりパワフルな車も生み出しました。今日に至るまで、私にとって「ミニ」は他の追随を許さない存在です」。
※私ごときが付け加えるコメントなどもはやないが、初代ミニはきっとこれからも、EV時代がやってこようとも、ずっとミニのまま、永遠に多くの人々に愛され続ける、そういうアニメキャラクターのような自動車である。
Photo: Sven Krieger / AUTO BILD
アンドレアス フーバー(Andreas Huber)記者にとって、ケーニグセグ ゲメラがこのリストに含まれる。「絶対的なテクノロジーファンである私は、特に新しいケーニグセグ ゲメラに心を奪われています。グランツーリスモは、パワフルなeモーター、長大な航続距離(1000km!)、600馬力の3気筒ガソリンエンジン(eモーターを加えた総出力:1700馬力!)など、現在の自動車製造業で可能なすべての要素を兼ね備えています。0から100kmまで1.9秒で走り、ハイパーアスリートには4人乗りと荷物を積めるスペースもあります。宝くじにさえ当たったなら…」。
※一応解説しておくと、ゲメラはケーニグセグ初の4シーターカーで、2リッター3気筒エンジンをツインターボで加給し、さらに後輪にそれぞれモーターを付けて総出力は1270kWW、トルクが3500Nm(350ではない)、0~100km/h加速が1.9秒で、最高速度が400キロ、というハイパーカーだ。総生産台数は300台(結構多い)を予定、価格は一億円以上。もうじき販売開始するそうだ。
Photo: Koenigsegg
ピーター フィッシャー(Peter Fischer)記者の心はプジョーにある。「そう、プジョー106ラリーは小さい。それは非常にスパルタンです。そして、良い状態の個体は現在でも8,000ユーロ(約100万円)もする。それなのに、なぜ私はまだ106ラリーをそれほど魅力的に感じるのか? それは、空の状態では800キロ以下の重さの本物のミニスポーツカーだからで、単純に備わった98馬力で十分です。そして、愛好家だけがそれを特別なものとして認識するでしょう」。
※前述のルノー トゥインゴと同世代に登場したプジョー106。その中でも走りを追求した一台がこの「106ラリー」で、わが国でも輸入された106ラリーにのった愛好家やジャーナリストから喝采を浴びた。エアコンは装着不可能だが、そんなことは問題にならないほど楽しいらしい(残念ながら私は乗ったことはない)。
Photo: Peugeot
レナ トラウターマン(Lena Trautermann)記者は、アウディA2を高く評価しています。「A2に視覚的な魅力を感じる人はほとんどいませんが、多くの愛好家はこのアウディに夢中です。超軽量アルミボディは純粋なエアロダイナミクスから生まれたもので、車は経済的で、他の多くの90年代の車とは異なり、錆びることもありません」。
※やや忘れられているのが残念だが、このアウディA2は今見ても斬新で、まだまだ未来的な存在感を備えた1台である。内容にも革命的な部分が多く、このまま進化していればとも思うが、生産コストが大変高価であったため、こういうアウディは最初で最後になってしまったことが残念である。
Photo: Christoph Boerries / AUTO BILD
ミヒャエル ヴォース(Michael Voß)記者はスズキ ジムニーが大好きだ。「このスズキは、コンセプトがシンプルだからこそ独創的なんだ。ジムニーは先代の象徴的なモデルに似ていて、オフロードも走れるんだ。実際、この車は今販売してもホットケーキのように売れるだろう。もしそれが許されたならばだが…。残念ながらジムニーはかなりレトロな仕様であるため、そのエンジンは欧州の新車の排ガス規制を満たすことができず、今のままではジムニーは、ドイツでは将来的には2名乗車の商用車としてしか登録できないだろう。そこでスズキへの提案!「電気駆動を追加する」、というのはどうだろう。独創的だろ?」。
※ジムニーは日本が誇る名車の一台である、というジャーナリストは多い。実際世界的にも、これほどの悪路における走行性能を持つ小さなクルマもないだろう。だが今のままでは今後生存することはできないし、実際にヨーロッパでは正式に輸入できなくなっている国も多い。ハイブリッドになるのか、この記者も書いているようにEVにするのか、当のスズキも悩んでいるに違いない。このサイズで、この性能のまま生き延びてくれることを、雪深い地域の愛用者や、森林・山岳地帯における仕事の必需品として使用しているプロたちも切に願っているはずだ。
Photo: Toni Bader

Text: Lars Hänsch-Petersen
加筆:大林晃平
Photo: Roman Raetzke / AUTO BILD