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ジムニーJB64に乗るすべての人にお薦めしたい APIOの「トツゲキECU」を試す その1 

2025年10月24日

ジムニーを普段使いする:アウトビルトジャパンスタッフが所有する“素のジムニー(JB64)”をデイリーユースに適した状態へモディファイする企画。第一弾は「More Power!」を実現するべくアピオ(APIO)でECUチューンをお願いした。

 「日本が世界に誇れる自動車」、そんな題目を見た時に頭に浮かぶ車はいくつかあるが、筆頭にあげられるのは軽自動車であると思う。軽自動車といってもジャンルはいろいろあるが、日本の生活を日々ささえてくれているのは多くの軽自動車であることは間違えない。

昨今、世界的に特に高級車を中心とした価格の高騰ぶりには驚く以外ないのだが、以前には考えられない金額の自動車が平然と発表されるようになって久しい。もちろんそういうクルマを否定しようとは思わないし、こういうハイブランドなビジネスは「払ってもらえる人から、いかに気持ちよく多くのお金を出させるか」が重要な部分だし、経済のためにもそういう方たちにはぜひこれからも高額な自動車を多く購入していただきたい。それは決して皮肉やっかみでもなんでもない。

だが例えば、予算の上限を気にせず御飯を作る場合と、予算2,000円で御飯を作る場合、どちらがより多くの知恵と工夫が込められるかを考えた時、僕は上限なくなんでもアリの世界よりも、制約が多く創意工夫がより必要な世界の方が難しく、しかしその目標を達成した時の喜びや楽しさが多いのではないか、とも思う。

そんな例えを自動車にすべて当てはめることは間違えなのかもしれないが、やはりなんでもありの1億円のスーパーカーよりも、僕は頑張れば普通に購入できる自動車に魅力を感じてしまうことは事実である。

と、小難しい話はともかく、日本の自動車の中でも軽自動車の存在とその意味は、われわれにとってかけがえのないものだ。介護施設のケアマネジャーが乗るアルトも、アマゾンの配達物を満載して走るハイゼットも、何十年も洗われないまま不満のひとつも言わずに酷使されている農家のキャリーも、それぞれすべてが今の日本に欠かせない存在だし、その姿を見るたびに頼もしく、美しく感じてしまう。

ジムニーカスタムのメッカであるAPIO(アピオ)に到着。

そんな中でもジムニーの存在というのは特別なもので、一切の忖度なしに世界に誇れる日本の自動車の一台であると断言できる。かくいう私もジムニーがあまりに便利で楽しいために、一つ前のモデルであるJB23のマニュアルトランスミッションモデルを筆頭に、現行の軽自動車ジムニーであるJB64(いずれもオートマティックトランスミッション)を2台乗り継いで今も所有している。とはいっても、生粋の(?)ジムニーマニアにはお恥ずかしいのだが、悪い道に行くことはほぼほぼなく、主に僕よりも家族が普段の生活の移動手段としてジムニーを100パーセントアスファルト舗装の都市の路上で、ちょこまかと乗ることがすべてである。

一切悪路にいかないにも関わらず、ガレージにある他のクルマを差し置いて、つい家族が手に取るキーはジムニーになってしまうのは、とにかく運転しやすく便利だからで、これほど的確なサイズ感と乗った時の楽しさが同居する自動車はなかなかない。だからジムニーを購入する時には自動車を購入するというよりも、ちょっと良いアウトドア用品とか、丈夫なカバンとか、ちょっと(かなり)良いコートを購入するような気持ちになることがほとんどで、そんな自分の身の回りに、いつも必ず置いておきたいアイテムがジムニーなのである。

APIOのコンプリートカーがまた魅力的でした。APIOのパーツ、グッズはシンプルながらデザイン性が高く、あれやこれやと足していってもくどくならないのがいいですね。

と長い前置きになったが、家族一同気に入っていてキーを取り合いながら乗っているジムニーではあるが、ちょっと気になる部分がないわけではない。そういう不便もジムニーの魅力のうち、と生粋のマニアは思うのかもしれないが、普通の家族の我が家一同にはそういう甲斐性はあまりなく、こうだったらいいのになぁ、という台詞がつい口をついてしまう。

特に僕がJB23からJB64に乗り換えて一番残念だったことは、エンジンが何となく眠い、というかはっきり言ってパワー感がいまいちなことで、この部分だけは前の方がよかったのではないか、と思ってしまうことが多い。(もう一つ、乗り心地もJB23の方がしっとりと良かったように記憶しているが、それはまた別の話である)

もちろん軽自動車に多くを望みすぎてはいけないし、多くの安全装備や各段に上がったボディのしっかり感などJB64のほうが進化していることは間違えないのだが、特に長い上り坂や、高速道路の走行車線に流入する時など、ああもうちょっとだけパワーがあったらなぁ、と感じながら、それでもかけがえのない存在としてJB64を2台乗り継ぎながら愛用していた。

そんなさ中、ジムニーのカスタムショップである神奈川県綾瀬市のアピオのECUチューンが効果的で良いのではないか、という話を聞いた。実はアピオのことは以前から知っていて、その発端はJB23を所有していたころ、関内にある横濱頒布鞄で「空母バック」というアピオと横濱頒布鞄のコラボレーションのバックを購入した時にさかのぼる。ジムニーの荷台にすっぽりはまるグレーのバックは、なんともしゃれていて衝動買いしてしまったのだが、その時にアピオのことを検索して存在などは知っていたものの、自分には縁遠いお店だと思ってしまっていたのである。

APIO店内は魅力的なパーツ、グッズがたくさん。

なにしろ前にも記した通り、私と私たち家族のジムニーの使い方は軟弱そのもので、悪路に行くことはほとんど(まったく)なく、雪道も年に2~3回程度。ほとんどは神奈川県、しかも横浜市内のアスファルトで舗装された路面上の雑用と移動の足としてこき使われるという、なんともジムニーにとっては宝の持ち腐れのような状態だからである。

それでもジムニーを家族で愛用しているのはとにかく乗りやすく便利で楽しいからなのだが、とにかく泥んこになったことのない完全ノーマルなジムニーを、名のあるチューニングショップに持ち込むということにかなり躊躇していたことは事実である。こちらは、普段使いがもっと便利になったらいいな、というような軟弱者なのだから……。

「大丈夫です。このトツゲキECU チューンはデイリーユースに主眼を置いて、日常の中で気持ちよく、使いやすくするために開発したのですから」こちらの気持ちを見透かしたかのように、なんともさわやかな笑顔で解説してくださるのはこのECUチューンの開発にも携わったAPIOのクリエイティブサービスアドバイザーの佐藤俊鉱さんである。

ECUチューンの開発にも携わったAPIOのクリエイティブサービスアドバイザーの佐藤俊鉱さんにお話を伺った。

このECUチューンの目的は、様々なリスクを想定し大きくマージンをとったメーカーのECUでは100%の性能を発生しているわけではないため、クルマ本来が持っている性能に近いレベルまで引き上げることであるとされている。

アピオの、その名も「JB64トツゲキECU」ではJB64ジムニーで、ノーマル比20パーセント超(約15PS)の出力向上が可能とされ、もちろん車検も問題なくクリアする。さらに燃費も「実は燃費も良くなるのですが、気持ちよくってつい踏んじゃうので皆さん悪化してしまう(笑)」とのこと。ご自身もJB64を所有し、もちろんECUチューンを施している彼はさらにさわやかに笑いながら説明してくれる。

なおトツゲキECUチューンの施工費用は95,700円(税込)だが、それでもまだパワーが足りないという猛者のためにはAPIO×IHIのハイフローターボキット(198,000円に取り付け工賃33,000円)というチューンもあるが、ハイオク仕様になってしまうし、まずは今回はECUチューンだけを施し、もしそれでも……であればハイフロータ―ボの世界に進みましょうということに相成った。

ワークショップにジムニーを移動して作業開始。

さっそくパリッとエアコンの効いた(!)清潔感極まりない整備工場に自分のクルマを運び込み、ボンネットを開けてECUとコンピューターをコネクターでつなげる。ダイアグノーシスの作業とほとんど変わらない感じで、書き換え自体はものの30分もかからずに終わるが、そのあとにちゃんと書き換えが終わったかどうかをAPIOのスタッフが試乗し、問題がなければ合計で2時間もかからずに終了、というのが流れである。

作業が終了したECUボックスに貼られた「TOTSUGEKI」のステッカーが誇らしげ。

今回もあっという間に作業は終了し、せっかくだからとテストドライブに同乗させてもらうことと相成った。カメラマンも後席に座り3人乗車、酷暑のためエアコンはマックスというなんとも過酷な条件下である。

作業が終わったら必ず走行テストを行います。

もちろんプッシュボタンを押すと、いつも通りにエンジンはおとなしく目覚め、ラフな感じも皆無で、いつも通りである。じゃあ行きましょうか、と言いながら佐藤さんは長めの坂道を上る、いつもならばウーッと苦しそうな音を立てるエンジンだが、なんだか軽快に回りジムニーを軽々と引っ張るではないか。あれれ、いつもとエンジンの回り方が違う(気がする)と助手席でもはっきり感じられるこの違い、これはかなりいいかも……といったところで、次回に続く。

ジムニープロショップアピオ
TEL.0467-79-3732
神奈川県綾瀬市吉岡651
定休日:毎週火曜/水曜,祝日
営業時間:10時から18時
https://apio.jp/

Text:大林晃平
Photo:アウトビルトジャパン