スカイラインGT-Rをニスモがリフレッシュしてほぼ新車として生き返らせる!? 「ニスモヘリテージ」プログラムのすべて
2020年12月17日
ニスモによる徹底的かつ完璧なリフレッシュプログラムで、ニッサン スカイラインR32、R33、R34 GT-Rが新車同様に蘇る!
日産の子会社ニスモ(NISMO=Nissan Motorsports International)による、ニッサン スカイラインR32、R33、R34 GT-Rの完全レストレーションプログラム。ニスモは36万ユーロ(約4,500万円)で、あなたのスカイラインGT-Rを新車に生まれ変わらせる。今後、多くのメーカーが「ニスモヘリテージ」プログラムに記載されているレストア項目と作業を見習うことになりそうだと思わせるほど充実したメニューだ。ニスモが提供しているのは、罪深いほど高価なフルコンプリートレストアカーだ。
ニスモのヘリテージプログラムは、旧い日産モデルから新しい日産モデルまで、ほとんどの車種の面倒を見てくれる。再生部品の品揃えの範囲はほぼ無限だ。特に、スカイラインのR32からR34までのモデルについては、ほぼすべてのパーツが用意されている。伝説の6気筒、「RB26DETT型エンジン」でさえも、完全に新品で用意されている。そして今、日産のモータースポーツ&チューニング部門は、さらに一歩進んだ取り組みを行っている。ニスモは、オーナーが希望するならば、その車が新車以上の状態になることを約束する。しかし、完全なレストアのためには、当然のことながら、それなりの費用がかかることは言うまでもない。
※ RB26DETTの仕組みに関するレポートは以下をご参照ください。
100%オーバーホール&ニスモ製スペシャルパーツも購入可能
まず、スカイラインを個々のパーツに分解し、ボディシェルの錆などももちろん取り除き、ねじれ剛性をチェックする。これがレストアの目標に合致しない場合には、ボディそのものをオーバーホールして剛性を高める。希望に応じて、元の色またはお好みの色で完全に再塗装することもできるようになっている。ニスモによれば、素材と技術の向上のおかげで、現代の塗装は当時の工場出荷時よりもさらに良くなっているとのこと。
次のステップは、280馬力の直列6気筒RB26DETTのレストアだ。ツインターボエンジンもフルオーバーホールを行い、摩耗した部品をすべて交換。パワートレーン、シャシー、ブレーキも同様にすべて新品と交換される。また、スカイラインのポテンシャル(可能性)を最大限に引き出すために、オリジナルパーツの代わりに、ニスモのチューニングパーツを装着することも可能(有料)となっている。さらに、通常の「ベースモデルGT-R」を、Vスペックなどのオリジナル特別仕様車にすることも可能だ。
※初代ホンダNSXのレストアプログラムに関しては、以下のレポートをご参照ください。
R35 GT-Rのシートカバー
インテリアには特に細心の注意が払われている。摩耗したプラスチック部品はすべて交換され、電気系統も一新され、エアコンシステムはオーバーホールされ、シートは張り替えられる。張り替える場合は、R35 GT-R用のカバーを採用することになる。ニスモによれば、オリジナルのシート用ファブリックは現在の安全基準では燃えやすいからとのこと。しかし、絶対的なオリジナリティを重視する人は、オリジナルシートに徹底的なクリーニングを施した上でそのまま使用することもできるようになっている。最後に、顧客のクルマを一台一台、社内のテストコースで、ニスモのファクトリードライバーがテスト&チェックし、そのクルマが納車初日と同じような、新車同様の状態で走れるかどうかを確認する。
357,000ユーロ(約4,500万円)と1年間の保証
すべてのプロセスは日本のニスモの施設内で直接行われる。車両の輸送はオーナー自身で手配するか、ニスモに相談して輸送の手配を依頼するようになっている。R32、R33、R34シリーズのスカイラインGT-Rのレストアは、部分的なレストアかフルレストアかの作業範囲にもよるが、作業期間は6ヶ月から12ヶ月とのこと。日産とニスモのオリジナルパーツのみが使用され、ひとつひとつの工程が記録されて、そのノートがオーナーに渡される。しかし、レストア作業は、どれもこれも高額なようだ。完全なレストアの場合、参考値として、ニスモは4,500万円を提示しているが、これは約35万7000ユーロに相当する。しかし、レストアの後は新品(以上)のスカイラインを手に入れることができる上に、1年間の保証も付いてくる。それは、場合によっては、高値で取引されている中古のスカイラインよりも安いはずだ!
NSXが先鞭をつけ、ユーノス ロードスターにも利用できるようになった、メーカーによるリフレッシュプログラムが、今度はスカイラインGT-Rにも適応されることになった。注目するべき点は2つ。ひとつはニスモが担当するということで、このリフレッシュプログラムを実施することにより、ニスモの価値と評価が高まることは間違いないし、ユーザーとしてもあのニスモという十分知られたブランドが実施していることで得られる安心感のようなものもある。あまり知られていないお店に大切な時計をオーバーホールに出すのは心配だが、ちゃんとオーソライズされたディーラーなら高いけれど、間違いなく安心、世の中はそういうものなのである。もう一点は、R32、R33、R34と、3つの世代のGT-Rでリフレッシュプログラムを利用できるという点で、これはちょっと考えてみれば、かなりの労力とエネルギーを必要とすることがすぐわかる。スペアパーツの保有や管理は大変なことになるし、第一そのノウハウに関しても相当なものが必要になるだろう。現行GT-Rも将来的にはこういう形でリフレッシュプログラムを受けられることになると予想されるが、さて王者トヨタはどんな形で対応してくるのか、ちょっと楽しみだ。
Text: Moritz Doka
加筆:大林晃平
Photo: NISSAN MOTORSPORTS INTERNATIONAL CO., LTD.