【ハイパーカー試乗記】世界で最も速く、最も感動的な車「パガーニ ウアイラ R Evo ロードスター」を我々は世界で1番最初にハンドルを握った!
2025年11月6日
パガーニ ウアイラ R Evoロードスター(Pagani Huayra R Evo Roadster):これ以上ないほどエクストリーム。パガーニは、不可能と思われることを可能にし、ウアイラ Rをさらに改良した。我々は、そのウアイラ R Evo ロードスターをスパ フランコルシャンで世界で1番最初に走らせることを許された!
史上最もエクストリームなパガーニが、さらにエクストリームになった!「ウアイラ R Evoロードスター」は、あらゆる面でさらにパワーアップ:より多くのパワー、より大きなダウンフォース、より大きな感動、そしてオープンカーという魅力も加わった!
2022年8月2日は、私が決して忘れることのない日となった。この日、私は、スパ フランコルシャン(Spa-Francorchamps)で、30台限定生産の「パガーニ ウアイラ R」を、ジャーナリストとして初めて試乗する機会を得たのだ。850馬力の「ウアイラ R」で、世界で最も恐ろしいサーキットのひとつを10周走ったことは、私の記憶に焼き付いている。興奮、感動、加速、そして何よりも、HWA(HWA=ドイツのレーシングカー開発・製造会社)がこの車のために特別に開発したV12自然吸気エンジンの耳をつんざくようなサウンドは、今でも耳の奥に残っている。この走行の後、私は確信した。これ以上のものはない、と。
その1,023日後、私は再びスパのピットレーンに戻ってきた。黒いレーシングスーツを着て、ヘルメットをかぶり、そして今まで体験した中で最も感動的なエンジンのスタートボタンを押した。でも、まずは最初から話そう。私が戻ってきた理由は、パガーニが「もっと上がある」と主張しているからだ。そして、その「もっと上」のモデルは、私の前に置かれた「パガーニ ウアイラ R Evoロードスター」という名前で呼ばれている新型ハイパーカーだ。
パガーニ ウアイラ R Evo・ロードスターの主な特徴
・サーキット専用、公道走行不可
・HWAによるパガーニV12-R Evoエンジンの改良
・900馬力、770Nm のトルク(ウライアRより50馬力、20Nm向上)
・回転数制限は9,200rpmに引き上げ
・乾燥重量:1,060kg
・取り外し可能なルーフ
・35台限定生産
・基本価格:458万ユーロ(約8億150万円)
・既に完売
35台限定生産
35台限定のレーシングカーのアイデアは、同社創設者であり、首謀者である、オラチオ パガーニ氏(Horacio Pagani)が、米国で開催されたインディカーレース観戦中に思いついたものだという。「ウアイラ R Evoロードスター」の目標は、顧客にさらに強烈なドライビング体験を提供することである。しかし、「ウライアR」を運転した私にとっては、それは不可能に思えた。
パガーニは、2021年に開始したサーキットプログラム「Arte in Pista(アルテ イン ピスタ=トラック上の芸術)」の一環として、年間4~5回の「トラックデイ」を世界中で開催している。2年間の休止期間を経て、顧客からの明確な要望により、スパ フランコルシャン サーキットが今年、再びプログラムに組み込まれた。これは簡単なことではない。この伝説的なサーキットでは、厳格な騒音規制が適用されており、140デシベルの騒音を発する「ウアイラ R」は、この規制を大幅に超えてしまうからだ。この規制が解除されるのは、年間4日間のみだ。「アルテ イン ピスタ」は、2025年にそのうちの2日間を利用することができたのだった。

コースに出る前に、まずはブリーフィングに参加する。何と言っても安全は最優先事項だから。3人の国際的なジャーナリスト仲間たちと一緒に、旗の知識の復習とステアリングホイールの機能についての簡単な説明を受けた。元F1ドライバーのアンドレア モンテルミニ氏は、「ウアイラ R Evoロードスター」のパフォーマンスはLMHカー(Le Mans Hypercar=ル マン ハイパーカー)と同レベルであるため、落ち着いて運転するよう、さりげなくアドバイスをしてくれた。
徐々に興奮が高まっていくのを感じた。そしていよいよカウントダウンが始まった。
私は更衣室へ向かった。ノーメックスの下着、靴下、レーシングスーツ、グローブ。フル装備だ。その後、パガーニの公式テストドライバーであるアンドレア パルマ氏と短い打ち合わせを行った。彼は、パガーニの工場所有の「ウライアR(まさに私が2022年に運転した車)」でペースを設定する予定だ。
ウアイラ R Evoロードスターの試乗
初めての試乗。3年前と変わらず、乗り込みは相変わらず優雅とは言い難いものだが、とにかく乗り込んだ。すぐに気づいたのは、コックピットが「ウアイラR」ほど質素ではないということだった。ドライバーの視線の正面に2つのディスプレイがあり、そのうちの1つはバックカメラの画像を常時表示している。「ウアイラ R」では目に見えていたロールケージは、「R Evoロードスター」では新しいシャーシに組み込まれている。中央に支柱のあるハローシステム(Halo)は、ここに多大な労力が費やされたことを示している。一方、シートとステアリングホイールのグリップ部分がペッカリーレザー(特に高級な革の一種)で覆われていることは、パガーニの細部へのこだわりを象徴している。

次の瞬間、私は思考から引き戻される。なぜなら、今は集中すべき時だからだ。シートはモノコックの一部であるため、調整することはできない。その代わりに、ペダルボックスとハンドルが私に合わせて調整される。フィットしたら、再び車外に出る。整備士がイタリア訛りの英語で、オープンで走行したいかどうか尋ねてきた。なんて質問だろう。もちろん!結局のところ、2つの取り外し可能なルーフは、「ウアイラ R Evoロードスター」の最大の特徴であり、この車がロードスターと呼ばれるのには理由がある。わずか数回の操作で、2つの軽量カーボンパネルを取り外すことができる。その代わりに、コックピット内の空気の乱流を軽減するための2つのカーボンパーツが取り付けられる。
パガーニ ウアイラ R Evoロードスターのハンドルを握る
いよいよ本番だ。HANSシステム付きのヘルメットをかぶり、バタフライドアからシートに身を押し込み、シートベルトを締める。動きの自由度?ほぼゼロ。脈拍?180くらい。無線チェック?問題なし!
スタートの合図が来た。ブレーキを踏んで、スタートボタンを長押しする。6.0リッターの「パガーニV12-R」エンジンは、クランキングして、そして、なんと、生き返った!アイドリング状態でも、「ウアイラ R Evoロードスター」はとてもうるさいので、ピットにいる全員が耳をふさぎ、私もちょっとひるんでしまった。
紳士的なドライバーもすぐにこのレーシングカーを扱えるよう、HWAは自動始動システムとEクラッチを開発した。ブレーキを力強く踏み、1速に入れ、ステアリングの「ドライブ」ボタンを押し、少し待ってからブレーキを離し、アクセルを踏むだけで、「ウアイラ R Evoロードスター」はスムーズに発進した。最高速度60km/hでピットを通過しながら、私は冷静さを保つよう自分に言い聞かせた。感情が私を圧倒していたからだ。私は、「パガーニ ウアイラ R Evoロードスター」を世界で初めて運転するジャーナリストとなったのだ。なんと光栄なことだろう!
900馬力&9,200rpm
導入ラウンドの途中で、興奮は純粋な喜びへと変わった。慎重にコースと車に慣れ、タイヤとブレーキを適温に温める。集中力を高めて最初の1周をあっという間に走り終え、気がつくと、最後のコーナー「シケイン」に差し掛かっていた。ブレーキをかけ、1速にシフトダウンし、右にハンドルを切り、左にハンドルを切り、ステアリングを戻す。そして、初めてフルスロットル!
次の数秒間、私の周りのすべてが静止しているように感じた。「パガーニ ウアイラ R Evo」の加速は、この世のものとは思えないほどだった。新しいカムシャフト、改良された吸気システム、調整されたソフトウェアにより、HWAは、すでに素晴らしいエンジンからさらに50馬力と20Nmを引き出した。これは、900馬力、770Nmという数値に相当し、乾燥重量1,060kgに匹敵する。さらに、その勢いで、レッドラインも9,000rpmから9,200rpmに引き上げられた。

「ウアイラ R」と比べてパワーアップを実感できるかどうか?いいえ!「ウアイラ R Evo ロードスター」が、この瞬間、世界で最も速く、最も感動的な車だと感じるかどうか?もちろん!その感覚、そして何よりもそのサウンドは、言葉では表現しきれないほどだ。ビデオでは、轟音を轟かせるV12エンジンに打ち勝とうと試みた。しかし、それは無駄だった。必要はないものの(最高出力は8,750rpmで発生するため)、私はすべてのギアをフル回転させた。純粋に、この機械工学の傑作の回転を、1回転ごとに感じ、楽しみたかったのだ。
2周目から6周目。「ラ ソース」を過ぎると、悪名高い「オー ルージュ」に入る。ここで勇気を失ってはいけない。アンドレアが、「ウアイラ R Evo ロードスター」の「勇気のカーブ」は「フル」ではないと教えてくれた言葉を、私はふと思い返した。真剣に試したわけではないのだが、そのアドバイスに感謝した。丘の下で少しブレーキをかけ、ギアを1つ下げ、その後アクセルを踏んだまま走り抜ける。一瞬、「ウライアR」が私の前から消え、私は空を見上げた。直感的に左にハンドルを切り、縁石を少し越えると、先導車が再び見えた。「ケメル ストレート」に入り、458万ユーロ(約8億150万円)以上の「R Evo ロードスター」がその実力を発揮する。ブレーキングポイントの直前で、スピードメーターをちらりと見た。302km/h。急ブレーキをかけ、6速から2速にシフトダウンし、技術的に難しいインフィールドに入った。
そのサウンドは比類のないものだ
私はまさに陶酔感に陥っていた。周回を重ねるごとに、この車への信頼が高まる。2022年と同様、パガーニは、これほどまでに猛烈なスピードを誇る車を、どうしてこれほどまでに制御しやすいものに仕上げることができたのか、と私は自問する。そして、この瞬間、私は確信した。「ウアイラ R Evo ロードスター」では、「ウアイラ R」よりもさらに大きな感動を味わえるということだ。その主な理由は、ルーフの半分がないため、V12のサウンドをフィルタリングされることなく、しかもハリケーンにさらされているような感覚も感じることなく、より純粋に楽しむことができるからだ。

「ウアイラ R」と比べると、サウンドは微妙に変化しているが、その魅力はまったく失われていない。V12エンジンが轟音を響かせ、栄光のF1時代を彷彿とさせるその音は、まさに神々しいほどだ。自動車ファンなら、たとえ耳鳴りのリスクがあっても、このサウンドをぜひ体験すべきだろう。「ウアイラ R Evo ロードスター」のハンドルを握ると、V12エンジンが、私の右耳のすぐそばにあるルーフのエアインテークから空気を吸い込む音がはっきりと聞こえるような気がしてならない。
ウライアR Evoロードスターのスピード
しかし、その感動的な走りを実現しながらも、この車は常に非常に予測可能な挙動を維持している。全長5.18mにもかかわらず、「ウアイラ R Evoロードスター」の重量は、「ウアイラ R」よりわずか10kg重いだけだ。その軽さは、実際に体感することができる。この車が、どんなに小さなステアリング操作にも即座に反応するそのダイレクトさは、まさに圧巻だ。そして、ラップごとにスピードが上がっても、まだもっと速くなる余地があることは明らかだ。パガーニは、「ウアイラ R Evo ロードスター」がスパ フランコルシャンで2分09秒のラップタイムを達成できると予測している(ウアイラ Rのラップタイムは2分20秒だった)。

アンドレア パルマがピットレーンに入る。私も後を追う。ピットリミッターをオンにし、ピットに向かい、エンジンを切る。バタフライドアが開く。HWAのプロジェクトマネージャーであり、有名なV12を担当する、トビアス ファイファーがノートパソコンの電源を入れる。すべて順調だ。さあ、2回目のスティントが始まる。7周目から9周目までは、心ゆくまで楽しむことができ、周回を重ねるごとにスピードと自信が増していくのを感じた。この瞬間が永遠に続くことを願っているうちに、赤旗が私のセッションの終了を告げた。私はピットに入り、「ウアイラ R Evo ロードスター」を停めた。深く息を吸い、エンジンを切った。車から降り、ヘルメットを脱ぎ、まずは気持ちを落ち着ける必要があった。
少し息をついた後、パガーニのチーフエンジニア、フランチェスコ ペリーニ氏と一緒に席に着いた。詳しい話の中で、彼は、「ウアイラ R」のより強力なバージョンは当初から予定されていたと説明してくれた。しかし、開発が進むにつれて、「ウライア R」は非常に完成度が高く、高速になったため、パガーニは「ウアイラ R Evo ロードスター」の開発に全力を注ぐ必要があった。これが、開発に2年以上もかかった理由でもある。
45%増加したダウンフォース
「ウアイラ R Evo ロードスター」は、ルーフを取り外せる「ウアイラ R」以上の存在だ。19cm延長されたロングテールにより、45%増加したダウンフォース(ルーフを開けた状態では50%増加)が発生する。数値で言えば、320km/hで1,000kgだ。さらに重要なのは、空力効率(つまり、揚力と抗力の比率)が21%向上したことだ。これは、フロントスプリッターが大幅に延長され、タイヤサイズも(19インチから19/20インチに)大きくなったことも一因だ。空力性能の最適化に加え、「ウアイラ R Evo ロードスター」は技術的にも大幅に改良されている。「パガーニ V12-R」をさらに改良する方法について尋ねたところ、トビアス ファイファー氏は、198kgの軽量V12を設計した時点で、パガーニはいつかさらに上を目指すだろうと予想していたと明かした。

エンジンには新しいカムシャフトとより短いインテークマニホールドが搭載されている。ソフトウェアの調整と相まって、8,750rpm時に900馬力の最高出力、5,800rpm時に770Nmの最大トルクを発揮する。しかし、それだけではない。3つのエンジン特性曲線も調整され、最高出力の到達が大幅に早くなった。さらに、6速シーケンシャルトランスミッションのシフトタイムは45ミリ秒に短縮され、トラクションコントロールとABS制御の調整には非常に細やかな作業が費やされている。
458万ユーロ(約8億150万円)の価値
「ウアイラ R Evo ロードスター」のハンドルを握って、その微調整の成果を実感した。ばかばかしい話に聞こえるかもしれないが、この900馬力のハイパーカーは、プロでなくても操縦できるのだ。過度な運転をしなければ、非常に予測可能で、感動的な運転体験を楽しむことができる。35台の「ウアイラ R Evo ロードスター」は、1台458万ユーロ(約8億150万円)という価格で、すでに完売しているが、パガーニは30人の「ウアイラ R」の顧客に、2段階の改造の機会を提供する。顧客は、技術的なコンポーネントのみを交換するか、ロングテールに直接改造するかを選択できる。取り外し可能なルーフは、新しいシャーシのために後付けできないため、「ウアイラ R Evo ロードスター」にのみ搭載される。

ちなみに、ビデオ撮影のためだけでなく、その感覚を味わうためにも、私は夕方までレーシングスーツを着用し続けた。一日の終わりには、この驚異的な車を自分の体で体験できたことに、純粋な感謝の気持ちを抱いた。また、新たな学びもあり、これ以上はないと断言することはもうない。このドライブを上回る体験があるとは本当に思えないが、2022年8月2日にも同じことを考えていた。そういう意味で、私はこれからも喜んで驚きを受け入れるつもりだ!(笑)
結論:
パガーニは約束を守った。「ウアイラ R Evo ロードスター」は、「ウアイラ R」よりもさらに感動的な運転体験を提供する。これは主に、取り外し可能なルーフによるものだ。HWAによって改良されたV12エンジンは、エンジン製造の傑作だ。ただただ素晴らしい!
フォトギャラリー:パガーニ ウアイラ R Evo ロードスター










Text: Jan Götze
Photo: Pagani Automobili

