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「MAZDA CX-80」は現行マツダ車唯一のピープルムーバー マツダの市販乗用車イッキ乗り その2

2025年9月11日

マツダを心から応援したい!ここ20年ほどガレージには必ず一台マツダのクルマがある筆者が、今のマツダのクルマに乗って、心から「頑張れ!」と勝手に叫ぶ連載企画。CX-60 に続く2回目はCX-80 である。

堂々とした存在感

上品なシャンパン色のCX-60に並んだ、アーティザンレッドプレミアムメタリックと呼ばれる、深いボルドーに塗られたCX-80ははるかに大きく立派で迫力があった。実際には1890㎜の全幅はそのままに、全長とホイールベースが250㎜(と全高が25㎜)大きくなっているだけのはずなのに、実物はもっと堂々と大きく長く立派に見える。

カッコイイSUVに3列シートを設定してミニバンに頼らずピープルムーバーを仕立てたマツダの姿勢には共感する。

タイヤサイズも235/50 R20と同サイズ(銘柄はCX-60がブリヂストンであったのに対し今回のCX-80はグッドイヤーであった)なのに、ブラックに塗装されたアルミホイールのせいかはるかに立派でワルに見える。

内装の色が変えるクルマのキャラクター

内装もさっきまで乗っていたCX-60がホワイトに明るいウッド仕上げだったのに対し、茶色の本革(アルカンターラ)シートと黒っぽいウッドで雰囲気がガラッと異なっている。あえてたとえて言えばホワイト内装はボルボXC60かXC90、こちらはちょっと古いマセラティ430かカレイドスが選べた頃のランチア イプシロン(古い)だろうか。

CX-60のホワイト調もいいが、こちらも素敵なカラーコーディネート。幅広くすっきりとしたセンターコンソールにゆとりを感じる。

いずれにしてもカラーコーディネートは実に絶妙で、各部の作り込みにはまったく抜かりがないところが、今のマツダのすごいところである。そしてこういうカラーの違いで乗る人の気持ちがガラッと変わるのだから、自動車というのは面白い。

最上級グレード「XD ハイブリッド プレミアムスポーツ」

さて55,000円のオプションであるアーティザンレッドプレミアムメタリックに塗られた今回のCX-80はXD ハイブリッド プレミアムスポーツと呼ばれる最上級グレードで、その名の通りハイブリッドシステムを搭載したモデルである。

CX-80のフロントマスクはギラギラしておらずスポーティーな雰囲気。

3.3リッターの直列6気筒の254PS 550Nmのターボディーゼルエンジンに16.3PS 153 Nmのモーターが組み合わされる。変速機はこちらもトルクコンバーターを持たない8速ATとなり、このハイブリッドシステムを搭載したモデルと、プラグインハイブリッドモデルに関しては4輪駆動モデルとなる。価格は6,402,000円と一瞬驚く金額ではあるが、これにはツインガラスルーフもBOSEサウンドシステムも、全後席のシートヒーター・ベンチレーションなどもすべて含まれ、ボディカラー以外はオプションなしの状態で、とにかく装備満載である。もはや装備面や前述の内装の魅力で他車に劣っていることは一切ないし、特にヨーロッパの同級SUVと比較するならばかなり説得力のある価格設定ではある。

ボリューム感があるCX-80のボディ。素直にカッコイイと思う。欧州SUVに引けを取らない。

さらに昨今、オプション価格が50万、100万、200万(!)、などという価格表を見慣れてしまっているせいか、なんだか意外とお得に感じてしまう自分が悔しいが、冷静になって考えれば650万円という高価格のマツダ最高級SUVが普通に存在している、というちょっとした違和感を伴った現実が目の前にあるのであった。

この操作系はぜひ残してほしい!

大きなドアを開け、たっぷりとした居住空間に乗り込み、適切なドライビングポジションをとると視界が開けて意外とサイズが気にならなくなる。またこれもマツダ全車に共通する扱いやすく、わかりやすく、心地よいタッチの操作系がなんとも嬉しい。ロータリーコマンダー式のコントローラーもこの手のものの中で一番直感的にわかりやすいし、ハザードスイッチなども実に適切な位置についている。エアコンコントローラーなども迷わずに操作できるのがなんとも嬉しいではないか。

CX-80のスイッチ類は配置も良く使いやすい。ピアノブラック仕上げはない。これがいい。

どうかこの部分はタッチスイッチ等に進まずこのまま使い続けてほしいと思ったのだが、次期CX-5ではタッチスイッチに進化しているではないか。せっかくここまで洗練され使いやすいコントロール類を持っているのだから、このままブラインドタッチのできる操作系を残してほしいと思うのは私だけではないはずだ。

2.2トン級なのに軽やか、しかも燃費も悪くない

さて心理的にはCX-60よりはるかに大きく立派に感じられるCX-80に乗って走り始めた瞬間、CX-60との違いが如実に感じられた。

ステアリングのフィールも、全体的な乗り心地もこちらの方がしっとりと心地よいのが嬉しい。乗り心地の落ち着き感に関しては130㎏ほども増え、2120㎏となっている車重が影響しているのかもしれないが、とにかくCX-60で感じられた、低速で特に強く感じられた、ちょっと突っ張ったような落ち着かない感じがこちらはものすごく少ない。走行距離はCX-60が7500㎞であったのに対し、CX80が15000㎞余りと2倍ほど走り込んではある個体ではあったが、それだけではない違いがこの2台には存在していた。

CX-80のラゲッジスペースは充分に広い。

モーターのアシストが加担していることもあり発進の瞬間もハイブリッドモデルではなかったCX-60よりももちろん滑らかで力強いし、走行中にも積極的にエンジンを停止しコースティングする機構さえも加わることもあり、酷暑の中、一切容赦なく渋滞路から高速道路、結構な山坂道を800㎞ほど走ったが、燃費は14km/lとその大きさと重さそして快適さを考えれば十分以上に納得できるものとなった。

トルクフルな254PSの3.3リッター直列6気筒ターボディーゼルエンジンに16.3PS 153 Nmのモーターが組み合わされる。2トン超えの車重を変速機はこちらもトルクコンバーターを持たない8速AT。

2.2トンを感じさせない好印象のハンドリングと十分以上のパワーを持ち、4人はもちろんのこと、6人もそれほど無理なく乗れる居住空間を持つSUVとしてCX-80の持っている魅力は十分以上に高い。それでも残念ながら路面の状況によっては大きなショックを伝えることも、微振動を感じることもあるし、乗り心地に関してはあともう一歩滑らかさやしっとりした重厚さが欲しいことも確かではある。だがそれはこれからさらなる熟成が進めば解決できると信じている。

大きさに慣れれば意外と乗りやすい

さて今回の試乗車は6人乗りの、リヤシートの中央に大きなセンターコンソールを持つ仕様のモデルだったが、大きな物入れとアームレスト以上の機能を持たず、取り外すことができない同様の仕様はCX-8にもあったが、せっかくの居住空間がもったいないと思うことも多く、個人的に購入する場合にはこの部分がウオークスルーになっている普通のキャプテンシートの仕様か実用に徹して7人乗りのベンチシートモデルを選ぶと思う。

前席とほぼ同じの2列目シートは快適。センターコンソールは良し悪し。

だがそれ以外にCX-80に大きな欠点があったかと言えばそんなことはまったくなく、最初は大きなサイズに気を使いながら乗り始めたものの、二日目にはあまり気にならず、かなり細い道や狭い場所など、どこへでも気楽に乗っていくことができたのは意外でもあった。日に日に車に馴染みながら。もっとCX-60もCX-80も売れてもいいのに、とは思ったがやはり価格と、それ以上にこのサイズがネックになっていることは予想がつく。

CX-80の3列目シートはエマージェンシー用にあらず。

マツダに求めたいもう一台の現実解

事実、CX-8 を愛車にしている知人が、7年を経過したこともありそろそろ買い替えを検討している。もちろんCX-80は買い替えの筆頭候補車ではあるのだが、「住んでいるマンションの駐車場の大きさでは(特に全幅の問題で)車庫証明がおりないから購入できないんだよ」と残念そうに言っている。駐車場問題は、特に都市部に関しての問題なのかもしれないが、意外とこういうジレンマに陥っているCX-8のユーザーは少なくないはず。せっかく魅力も実力もあるCX-80なのに、一番逃してはいけないはずのCX-8からの乗り換え需要を受け止められないでいるのではないだろうか、そんな現状がなんとも歯がゆいしあまりにもったいない。

「INLINE6」が誇らしげに見える。今や世界的にも少数派となった直6エンジン。

もう少し購入しやすい価格の、サイズ的にもCX-8の後継となるべきピープルムーバーがマツダには必要なのではないか……CX-80 に魅力を感じながらも、現実的に購入できない悩みを抱いている友人を見ながらそう思った。

次は話題独占。ロータリーエンジンを搭載した「MAZDA MX-30 ROTARY-EV」だ。

Text&Photo:大林晃平