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55年に及ぶBMW3シリーズの進化の歴史を辿る

2020年12月5日

BMW3シリーズの歴史、そのルーツとなるモデルとは

BMW3シリーズの進化、その歴史とは。BMWのエントリーモデルから最大生産モデルへと発展し、他に類を見ないブランドエッセンスを体現した3シリーズ。2002からG20まで、その全世代を写真とともに振り返る。

 BMW 3シリーズは、デビュー以来、ミドルクラスを代表するスポーティなモデルとして高い評価を得てきた。
BMWの3シリーズと言えば「後輪駆動で、6気筒エンジン」を連想するのはもはやミドルエイジ以上の人に過ぎない。
今やボディとパワーユニットと駆動方式の多様化で、その形式やスペックは大幅に変化している。
E21やE36からG20までの7世代にわたって、3シリーズはBMWの中で最も販売台数の多いモデルであり続け、今や小型ディーゼルエンジンを搭載したファミリー向けステーションワゴンから、500馬力を超える全輪駆動のクーペまで、多くのバリエーションがラインナップされている。
ここでは、BMW 3シリーズの全世代の概要と進化の歴史を紹介する。

BMW 2002ターボは、1970年代のオイルショックの時期にデビューし、当時のメディアからは敬遠されていたが、今日では、人気の高いクラシックモデルとなっている。 ©Angelika Emmerling / AUTO BILD

ターボパンチでスポーティな評判に

すべては、1966年にBMWがモデルラインアップを一新した3シリーズの祖先、2002「マルニ」から始まった。
このモデルは、1962年以降、BMWを財政破綻から救った4ドアの「ノイエクラッセ」をベースにしていた。
2ドア専用の2002は、「スポーツセダンメーカー」としてのBMWの地位を確立し、3シリーズへの道を開いた。
加えて、2種類のコンバーチブルバージョンは、ボディワークのスペシャリストであるコーチビルダーのバウアー(Baur)社が手掛けた。
エントリーレベルのエンジンは、ダウンドラフトキャブレター付きの1.6リッター4気筒で、75馬力を発揮した。
1973年に投入されたトップモデルは、わずか1,672台か製造されなかった、ドイツ初の排気ガスターボチャージャーを搭載した「2002ターボ」だった。
そのターボチャージャーは、2リッター4気筒インジェクターから170馬力という驚異的な数値を発揮した。

初代3シリーズの4気筒と6気筒

3シリーズの最初のE21は、1975年にデビュー、140万台近くが生産され、大成功を収めた。
2ドアセダンのみの設定で、6気筒エンジンが搭載された。
M20(SOHC直6エンジン)の最上位モデル、323iは143馬力を発揮した。
6気筒モデルは、4気筒エンジンを搭載した小型の兄弟車とは異なり、ヘッドライトが2灯ではなく4灯になっていた。
また、バウアー(Baur=シュトゥットガルトにあるコーチビルダーで1930年代からBMWのコンバーチブル製作を担っていた)は、E21にソフトトップを装着したバージョンも用意していた。
しかし、ロールバー付きの1バージョンのみで、フルコンバーチブルではなかった。

初代「純正3シリーズ」の代表車となったE21は、140万台近くが生産され、大成功を収めた。1975年にデビューしたこのモデルは、2ドアセダンとしてのみ販売された。
323iは143馬力を発生した。6気筒モデルは、ヘッドライトが2灯ではなく4灯になっていた。
日本でもこのE30は圧倒的な人気を得て普及し、BMWという自動車が日本で一般的な自動車となったのは、このモデルがあったからこそともいえよう。 ©Gem.classic.cars.com

豊富なモデルバリエーションを持つE30

1982年以降に販売されたE30は、爆発的な人気を博した。
初めて3シリーズは2ドアセダンだけでなく、4ドア、コンバーチブル、ステーションワゴンとしても発売された。
バウアーの手掛けたコンバーチブルも引き続き製造され販売された。
E30のカブリオレは、ロールバーなどを持たない完全なフルオープン4座のモデルとなった。
3シリーズで初めてディーゼルエンジンを搭載した324dは、524tdに次いでBMW史上2番目にディーゼルエンジンを搭載するモデルである。
さらに、325iXは初めての四輪駆動モデルとなった。
とりわけ画期的だったことは、E30シリーズが初代となるM3を生み出したことだった。
S14 B23/B25と呼ばれるその4気筒は、238馬力を発揮した。
M3にはコンバーチブルも用意された。
そして、E30をベースに、325iの6気筒エンジンを搭載したZシリーズの最初のモデル、Z1も誕生した。

Photo: PEMAC Automotive Engineering GmbH
E30からE36へのデザインの飛躍は、これまでにないほど大きなものだった。E30と比較すると大幅に未来的となったのがE36である。
※快適性なども各段に向上し、2ドアモデルよりも4ドアモデルが多く販売された。

根本的に新しいデザインのE36

前の2世代が02のデザインを発展させたかたちを採ったのに対し、3世代目の3シリーズは革命的に変化した。
1990年に登場したE36は、ヘッドランプがカバーレンズで覆われた斬新なフロントマスクとなった。
E36は四輪駆動を失ったが、その一方で1シリーズの前身となるショートコンパクトを搭載した新しいボディバリエーションを獲得した。
また、E36はクーペとして初めて、独自のプロポーションを持つオリジナルボディを持つことになった。
これまでは、2ドアモデルと4ドアモデルの寸法は同じだった。
さらに、90馬力を発揮する新開発の4気筒ディーゼルを搭載した318tdsが市場へ投入された。
むろん、究極のモデルは、M3で、ボンネットの下には、今では伝説となった321馬力を発揮するS50/S52直列6気筒エンジンと可変カムシャスフトコントロールシステムが兼ね備わっていた。
M3には初めて4ドアモデルも用意された。

E36のM3は今では伝説的なS50/S52直列6気筒エンジンを搭載し、最大321馬力と可変カムシャスフトコントロールシステムをボンネットの下に備え持っていた。M3に初めて4ドアバージョンも用意された。 Photo: Classic Car Auctions
「2 BOX」モデルも用意されたE36、まだ日本でも5ナンバーで登録できたサイズであった。
Photo: Classic Car Auctions
M3 GTRはアメリカのルマンシリーズのホモロゲーションモデルとして、約10台しか生産されていない3シリーズで初めてV8を搭載したモデルだった。

E46で初のスモール生産シリーズのV8モデル導入

1998年に発売されたE46は、デザイン面で再び進化を遂げた。
バウアー製コンバーチブルを除き、すべてのボディバリエーションを先代モデルから継承した。
しかし、素材の品質と衝突安全性に関しては、E46はE36に比べて大きな進化を遂げた。
これには、多数のドライビング補助装置と高強度スチールの採用が大きく貢献している。
エンジン技術の観点からは、M3が特に興味深い。
360馬力の直列6気筒エンジンを搭載し、レーストラックに特化したCSLは、今でも多くの人々にとっての強烈な印象とともに鮮やかな記憶として残っている。
そして、M3 GTRも特別な1台として記憶に残っている。
それは、アメリカン ル マン シリーズのホモロゲーションモデルとして約10台しか生産されなかったV8を搭載した初の3シリーズだった。

CSLの名が復活。360馬力の直列6気筒エンジンを搭載したレーストラックに特化したCSLが深く記憶に残る。

300馬力のハードルをクリアしたE90

E90で、BMWは2005年から根本的に異なるデザインで再び人々を驚かせた。
クリス バングルがデザインした第5世代の3シリーズは、先代モデルとはまったく異なっていた。
そして、E90はまた、他の多くの革新をスタートさせたことでも知られる3シリーズモデルだ。
第一に、この時から1シリーズがコンパクトの役割を引き継いだ。
第二に、3シリーズをベースに、初代X3世代のE83が誕生した。
第三に、コンバーチブルに、初めて布製のソフトトップに替えて、スチール製のフォールディングルーフが採用された。
そして第四に、335iは、モデル名から3.5リッターエンジンを連想させるが、その心臓は直噴3リッターツインターボで、306馬力を発揮し、300馬力の壁を超えることになる。
M3は、その3リッター直列6気筒を、420馬力の4リッターV8に変更した。

当時BMWのデザインチーフだったクリス バングルは、E90の外観をも根本的に刷新した。E36をさらに未来的に快適さを重視して発展させたのがE90だ。
※クリス バングルのデザインは物議を醸したが、7シリーズなどに比べるとおとなしかったこともあったため、比較的日本でも違和感なく受け止められた。こうしてみるとキドニーグリルの形状も大幅に変更されているのがよくわかる。 ©Christof R. Schmidt
Photo: Markus Heimbach
F30は、より大型の5シリーズに迫り、初めて3気筒エンジンが搭載された。
※内容的にも各種エレクトロニクスデバイスも多く採用され、内容的には5シリーズと並べても見劣りしないほどの大きさとなった。エンジンのバリエーションが多いことと、内装のバリエーションなどもとにかく豊富だった。 ©AUTO PICTURE

F30にクーペの新モデル指定

BMWは2012年、新シリーズF30を発表した。
クーペ、カブリオレが投入され、新たに4ドアのグランクーペが「4シリーズ」と改名された。
これは当初、E90で計画されていたが、F30まで実施されなかったアイディアだ。
3シリーズのベースは何も変わらなかった。
5シリーズに続いて、3シリーズにもGTバージョンが設定され、ステーションワゴンの空間とクーペのフォルムを融合させたものとなった。
新しくなったのは、シャシー、トランスミッション、エンジンの特性を変更できる「ドライビングエクスペリエンススイッチ」だった。
6気筒NAエンジンは4気筒ターボエンジンに置き換えられた。
また、初めて136馬力の3気筒パワーユニットも登場した。
6気筒NAエンジンを欲するならば、335i/340iか、460馬力のCSモデルとして頂点を極めたM3を選ぶしかなかった。

2012年から、BMWはF30世代の新3シリーズを投入した。クーペ、カブリオの他、新型4ドアのグランクーペが4シリーズに改名された。新しくなったのは、シャシー、トランスミッション、エンジンの特性を変更できるドライビングエクスペリエンススイッチだった。
3シリーズGTバージョン。大幅に多数のグレードを準備して展開したり、多数のエンジンバリエーションを用意するようにしたりして発展し続けたのがF30だ。言うまでもなくライバルはメルセデスベンツCクラスだが、性能や快適性でももはや劣る部分は全くなく、凌駕する部分も多くなった。それにより価格も大幅に上昇した。Photo: Werk
2019年には、5シリーズや7シリーズと共通のプラットフォームを持つ、現行のG20 3シリーズ世代が登場した。それは、最先端のインフォテインメントと、オプションのデジタルコックピットを備え持つ。Photo: Toni Bader / AUTO BILD

全輪駆動の初代M3としてのG20

2019年には、5シリーズや7シリーズと共通のプラットフォームをベースにした現行のG20 3シリーズ世代が導入された。
それは、最先端のインフォテインメントと、オプションとしてのデジタルコックピットを備えている。
F30の順当な発展形ではあるが、多くの装備なども7シリーズ譲りの充実したものが多く、上級モデルは8万ユーロ(約1,000万円)近い価格帯のクルマとなった。
ほぼすべてのエンジンのマニュアルトランスミッションとともに、3気筒エンジンがラインナップから姿を消すことになる。
マニュアルトランスミッションは現在、最小のディーゼル318dと320dのみに搭載されている。
外観的には、4シリーズが最も大きな変化を遂げた。
3シリーズからさらに距離を置くために、クーペ、コンバーチブル、そしておそらく今後デビューするグランクーペも巨大なキドニーグリルを採用する。
M4やM3も同様で、3シリーズを代表するモデルであるM3にも大きなキドニーグリルが装着され、510馬力のコンペティションモデルには、8速オートマチックトランスミッションと、M3/M4の新機能である全輪駆動が備わっている。
また、BMWは、新型M3にステーションワゴンが加わることを公式に認めた。

発表時には大きな話題となった巨大なキドニーグリル。480馬力の強力なベースのバージョンは、マニュアルトランスミッションも選べる。
510馬力のコンペティションモデルは、8速オートマチックトランスミッションと、全輪駆動を備えている。

こうして「マルニ」を起源とした「3シリーズ」の歴史を振り返り、並べて、しげしげと眺めると自動車とは技術的な進化だけではなく、その時代の潮流や状況、そして数々の制度に影響を受け続けたものであることが良くわかる。それこそが自動車が他の商品と根本的に違う部分なのだ。そしてBMW3シリーズもそんな流れの中で魅力あるシリーズとして今日まで進化を続けている。

Text: Moritz Doka
加筆修正: 大林晃平
Photo: BMW Group