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エレガントな佇まいとは裏腹の超高速ツアラー「フェラーリ・アマルフィ」が早くも日本上陸

2025年8月4日

去る7月29日、フェラーリ・ジャパンは東京・浜離宮恩賜庭園を臨むウォーターズ竹芝にて、フェラーリ・アマルフィ(Ferrari Amalfi)の日本初披露イベントを開催した。

世界遺産に登録された景勝の地アマルフィで7月初旬に世界初公開を果たしたばかりの最新モデルが、早くも日本市場に登場したことになる。アマルフィはフロントにV8エンジンを搭載する2+クーペで、2019年に登場した「ローマ」の後継モデルである。

まずはフェラーリ・ジャパン代表取締役社長ドナート・ロマニエッロ氏が登壇、流暢な日本語でオープニングの挨拶を披露した。続いてこの日のために来日したエマヌエレ・カランド氏がプレゼンターとしてマイクを引き継ぐ。氏はマラネッロ本社にてヘッド オブ プロダクト マーケティングという重職を担う人物。アマルフィの詳細を語るのに最適な人物だ。

フェラーリS.p.A.ヘッド オブ プロダクト マーケティングのエマヌエレ・カランド氏(右)とフェラーリ・ジャパン代表取締役社長ドナート・ロマニエッロ氏。

歯切れのいい英語でプレゼンテーションを始めたカランド氏は開口一番、アマルフィを「スポーティネスと、ライフスタイルに密着した日常性という2つのコンセプトを両立させたスポーツカー」だと定義する。

全長x全幅x 全高: 4660 x 1974 x 1301mm。ホイールベース:2670mm。乾燥重量:1470kg。

スポーティネスのカギを握る要素の1つがエンジンだ。フロントミッドに搭載される3855ccツインターボV型8気筒はF154ファミリーの最新進化形。インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーを 4 年連続で獲得したフェラーリ自慢のパワーユニットである。アマルフィでは最高出力640PS/7500rpm、最大トルク760Nm/ 3000~5750rpmを生み出す。ローマが 620PS /7500 rpmだったから、最高出力で20PSの上乗せを果たしている。

パワーの向上を可能にした主役は、回転スピードを個別に制御できるようになった2基のターボチャージャーにある。同時にターボの最高回転数が17万1000rpmに高まったほか、スロットルレスポンスも向上している。

ツインターボV8エンジン。排気量: 3855cc。ボアストローク: 86.5 x 82mm。最高出力:
640PS/7500rpm。最大トルク:760Nm/3000~5750rpm。最高許容回転数: 7600rpm。圧縮比: 9.4:1。比出力: 166PS/リッター。

エンジン単体の軽量化にも意を注いだ。軽量カムシャフト(従来比-1.3kg)を採用したほか、非構造部材の切削加工を精密化することで約1kgの削減に成功している。フェラーリ製エンジンとしては初めて低粘度オイルを採用したのもニュースで、低温時の抵抗が従来比で30%低減、ウオームアップが早くなった。

マラネッロの技術陣はエンジンサウンドも入念にチューンした。サイレンサーを新しくすることで最も厳しい騒音規制にも準拠しつつ、フラットプレーンクランクシャフトと等長排気マニフォールドによる点火順序が奏でるフェラーリV8独特のサウンドを維持している。

このようにパワーユニットに磨きを掛けたアマルフィは一流の動力性能を誇る。最高速度320km/h、0―100km/h加速3.3秒、同200km/h加速9秒フラットと、どこに出しても恥ずかしくない数値が並ぶ。

アマルフィが紛う方なきハイパフォーマンス スポーツカーであることはわかった。では次にカランド氏が強調したもう1つのコンセプト、「ライフスタイルに密着した日常性」に注目していこう。

オプション設定ながら、車速35km/h以下で稼働するフロントリフター・システムが備わる価値は大きい。車高が最大40mm上がるので、例えば歩道との段差を乗り越えてガソリンスタンドに乗り入れる際など、必需品に思える。

アマルフィは時代の趨勢を敏感に捉えて、ADASシステム(先進運転支援システム)を搭載する。アダプティブ・クルーズ・コントロール、自動緊急ブレーキ、ブラインドスポット検出、レーン・デパーチャー・ウォーニング、レーン・キープ・アシストなど、装備するデバイスは広範囲にわたる。

エンジン制御ソフトウェアとの統合化を深めたことにより、8速F1 DCTの変速が一層スムーズかつ迅速になった。ストップ&ゴーの多い市街地での走行が一層滑らかになり、アマルフィの実用性を高めている。

2+シートレイアウトはアマルフィを日々の足に供したいオーナーにとって朗報だろう。小さくてもリヤシートがあればちょっとした荷物を積めるし、子ども連れの旅行にも使える。

トランク容量は273リッターを確保。2名乗車の小旅行には充分な広さを提供する。

アマルフィほどの高性能車ではエアロダイナミクスは重要だ。ここで注目なのはテールと一体化された可動アクティブ・ウィング。ロー・ドラッグ(LD)、ミディアム・ダウンフォース(MD)、ハイ・ダウンフォース(HD)の3つの位置があり、前後と横方向の加速度や車速に応じて自動で作動する。直線走行では、ウィングはLDかMDの位置にあり、空気抵抗を最小化する。一方、高速コーナリングやハードブレーキングといった、よりダイナミックな走行時にはHDに変化して、車速250km/hでは110kgものダウンフォースを生み出し、しかも空気抵抗の増加は4%に留まる。

カランド氏はこの日のプレゼンテーションで「last but not least(=最後になったが、前述に劣らず重要なこと)」というフレーズを少なくとも3回用いたように思う。シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』に由来するこのフレーズを彼が最初に使ったのはマネッティーノの進化に言及したとき。2番目がエアロダイナミクスの解説の最後に、ブレーキ・バイ・ワイヤを採用したときだった。カランド氏はここで、潤沢なペダルフィールを伝えるこのブレーキシステムによって、ドライバーは路面状況をより良好に理解できると強調した。

実際、プレスリリースでも、このブレーキ・バイ・ワイヤは制動効率を大幅に向上し、ペダルストロークを減少するなどの実効があり、アマルフィのビークル・ダイナミクスに関連するシステムの中心になると謳う。

各輪の制動力を最適に分配するABS Evoや、サイド・スリップ・コントロールSSC 6.1を完備するなど、ビークル・ダイナミクスを司る電子制御装置にも抜かりない。

インテリアは、ドライバーとパッセンジャーを2つの空間で包みこむデュアル・コクピット・レイアウトを採用。HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)を完全に刷新したという。ドライバー前の15.6インチ・デジタル計器クラスター、ダッシュボード中央の10.25インチ・タッチスクリーン、そしてパッセンジャー前の8.8インチ・ディスプレイから成る3個のメインディスプレイがダッシュボード上のHMIシステムを構成する。なお、アマルフィはApple CarPlayとAndroid Autoに対応する。

ドライバーとパッセンジャーを2つの空間で包みこむデュアル・コクピット・レイアウト。モニターは15.6インチのデジタルメータークラスターとダッシュボード中央にマルチメディア、電話、エアコンなど主要機能にドライバーとパッセンジャー両方からアクセスできる10.25インチディスプレイ。そしてGフォースやエンジン回転などを表示する8.8インチのパッセンジャー側ディスプレイ。

カランド氏は「last but not least」のフレーズを用いて、ステアリングホイール上に物理スイッチが復活したことを力説した。「私たちは典型的なフェラーリ・スタイルに回帰したのです」と高らかに宣言する。フェラーリに限らず、一時期、自動車メーカーは仮想スイッチに走りすぎた感がある。しかしタッチスクリーン上の仮想スイッチは操作感に欠け、ブラインド操作が難しい。フェラーリが一部にせよ物理スイッチに回帰したことを喜ばしく思うオーナーは多いだろう。

エクステリアではミニマルなアプローチを基準にして、彫刻的な統一感のあるデザインを完成させた。

ノーズからはグリルが消えた。左右ヘッドライトを結ぶダークカラーのストライプは、その内部にセンサー類を内蔵する。ノーズ下部のスプリッターが車幅を広く見せ、スポーティな印象を強める。
リヤスタイル。リヤスクリーンとスポイラーは一体化してクリーンなサーフェスを造り上げている。大きくアップスイープしたディフューザーはアマルフィの空力特性で重要な役割を果たす。
Photo:フェラーリ・ジャパン
ホイールは前後とも20インチ。タイヤサイズは前:245/35 R20、後:285/35 R20。指定ブランドはブリヂストン・ポテンザ・スポーツとピレリPゼロ。

「内燃機関はまだまだ可能性を秘めている」。フェラーリ・アマルフィをつぶさに眺めた私の素直な感想だ。電気の力に頼らない純ICEをフロントに搭載し、600PS超の強大なパワーを後輪のみで伝える。そのトラディショナルな成り立ちは、今や衝撃的までに新鮮で魅力的だった。オーナーの忠実な足として日々働く一方で、快適極まりないロングツアラーの一面を併せ持ち、しかもワインディングロードに持ち込めば一流のスポーツカーとしての実力を発揮してみせるーー。フェラーリ・アマルフィは自動車好きの夢を形にした1台だ。そんな印象が冒頭の感想に繋がったのだと思う。3418万円の車両本体価格にしても、アマルフィが提唱する「La Nuova Dolce Vita」の世界にひとたび触れれば法外ではないのかもしれない。

Text:相原俊樹
Photo:アウトビルトジャパン