ル・マン クラシック2025(Le Mans Classic 2025)“チームJAPAN”応援記
2025年8月15日

ル・マン24時間耐久レースといえば、その存在はモータースポーツの枠を超えた自動車耐久レース。1923年に初開催、103年の大歴史を誇る。デイトナ、スパ・フランコルシャンと並び世界3大耐久レースと呼ばれ、毎年5月にフランスのルマンにあるサルト・サーキットにて開催。そのルマン24時間レースの長い歴史で、実際に参戦したヒストリックレーサーと、それを愛してやまない世界中のコレクターが自慢のマシンを持ち寄り、熱く濃密な週末を楽しみ闘う。それが「ル・マン クラシック」だ。
今年は7月3日から6日に開催され、約700台が参加。今回はそこに複数の日本人がエントリー、参加するという。筆者の友人でジェントルマンレーサーの多田純二選手も、松淵孝太郎選手、羽根幸浩選手らとポルシェ 904 Carerra GTS 1964でエントリー。このクルマは4気筒の904でとても希少性が高く、前回も参加を認められていたが、メカトラブルに泣き、今年はリベンジしたいと意気込む。これはもう熱く応援せねばと決心し、憧れの地を訪ねることに。
ル・マン24時間レースといえば1971年公開のスティーブ・マックイーンが主演した『栄光のル・マン』を思い浮かべる。本編冒頭にマックイーンがグレーのポルシェ911で現れ、ユノディエールを疾走するマシンのエンジン音が蘇り…筆者ももれなく影響を受け、こんな過酷なレースを観戦したい、ル・マンに行ってみたい!と憧れていた。
当時の少年たちは大人になり、その中でも一握りの幸運なコレクターが、自らの夢を乗せたマシーンをこのイベントのために仕上げ、世界中から集まって来る。2年に一度、本戦と同じルマン市街の公道を一部使用したサルト・サーキットを舞台に3日間のスケジュールに挑戦するために。

7月3日木曜日、TGVにてパリから1時間半くらいかけル・マンへ。小さな街。中央駅からトラムで約15分でサルト・サーキットのゲート前に到着。イベントのチケットは日本でパドック入場券付き3日間のチケットをオンライン購入した。
木曜日からすでにお祭り気分で、レース好きな人々と珍しいスーパーカーが行き交う。その日もモンテベルディハイの実車が街中を走っているのを初めて見た。世界中からミニチュアカーや昔の雑誌でしか見たことが無かったような、素晴らしいヴィンテージレーサーが続々搬入されて来る。

到着したエントラントは、搬入、エントリー受付などを済ませると、ドレスコード付きのウェルカムパーティーに臨むことになる。今年のフランスは日本でも報道されるくらいの猛暑で、イブニングスーツは罰ゲームの様だったが、パーティの演出は素晴らしくゴージャスで、これから繰り広げられる金曜日からの3日間がタダものではないことを予感させる。

35度の猛暑に涼しい表情の松淵孝太郎選手。ドレスコードも耐久なのだ。
7月4日金曜日、すでにマシン、機材などの搬入を終えたチームは、グリッドと呼ばれるヒストリックレーサーの生産年別(グループCカーのみ別枠)クラスに区分けされ、指定された特設パドックにて配置され整備を行う。パドックにもチケットがあれば入場可能で、ル・マンクラシックは、パドックを見て回ることがひとつ大きな楽しみだ。全く夢のようなクルマのラインアップである。



金曜日は朝から予選が行われる。ル・マンの名がついているとはいえ、所詮はヒストリックカーイベント、お楽しみ走行だろうとタカを括り、コースインしていく名車たちを見送ったが、考えが甘かった!クオリイファイが始まると、コース上では超本気モードのバトルが繰り広げられた。サーキット内全員本気!そうか!このために世界中から集まってきたんだ!本場のヒストリックレーシングイベントを甘く見ていた。
どのクラスも熱い戦いが繰り広げられた。1950~60年代などの古いクルマのクラスは、当然バランス、アシ周りが、現代とは全く違うために固定のコーナーで見ていると、さながら自動車の運動性能の進化フィイルムを見ているよう。

加えてドライバーがまた上手い!必ずロールとドリフトをコントロールし駆け抜ける。ダンロップでは、毎回ああ!横転!という姿勢から持ち直し、優雅にテールスライドしながらコーナーを泳ぎ抜ける。そんなテクニックと度胸がある者が、ビンテージレーサーをこのル・マンで走らせることができるのだ。
それでもコース上かなりの台数が、実戦さながらでアタックしているので、各クラスかなりの頻度でイエローフラッグが出る。時には全損してしまうようなクラッシュも。それゆえ各クラス40分程度の予選がだいぶディレイし、最後のレジェンドクラスの予選は7時を過ぎた。ただし、この時期フランスは午後10時まで明るく、サーキット施設の全体が、お祭りの活気に満ちている。
世界各国から様々なカークラブが集結し、自動車グッズ、アパレル、部品などのテントショップが多数並ぶ。オフィシャルグッズショップなどは、いつ行っても行列だ。映画のように小さな遊園地もある。中央のステージでは昼夜ライブ演奏が行われている。だから全く時間を長いと感じることは無い。ただし驚くほど高価なマシンを最後まで委ねられたドライバーは別として。
