1. ホーム
  2. ニュース
  3. フォルクスワーゲン ジャパン、フル電動ミニバン「ID. Buzz」を正式発表

フォルクスワーゲン ジャパン、フル電動ミニバン「ID. Buzz」を正式発表

2025年6月23日

去る6月20日、東京・六本木ヒルズにてフォルクスワーゲン ジャパンは「Volkswagen Brand Exhibition – Press Conference 2025」と題したイベントを開催、フル電動ミニバン「ID. Buzz(アイディー バズ)」を発表した。

ようやく日本市場への導入を果たしたID. Buzz。フロントフェイスに冠された特大のVWロゴ、クラシックなスライディング・ウインドウなどType 2 のDNAを受け継ぐアイコニックなデザインが特徴だ。

まずは同社ブランドディレクターのイモー・ブッシュマン氏が正面ステージに登壇した。2025年1月~5月の国内販売台数が1万4322台に上り、前年同期比で33%のアップを果たしたと好調ぶりを伝える。技術面では、今後もICEモデル用にはMQBプラットフォームを、BEVモデル用にはMEBプラットフォームを使い分ける「2ピラー・ストラテジー」を展開するとの説明があった。

日本での任期を終えたブランドディレクターのイモー・ブッシュマン氏。ID. Buzzの発表は任期の最後に花を添えることになった。

そして、いよいよこの日の主役ID. Buzzが正面ステージにゆっくりと現れた。車両の説明を担当するのはプロダクトマネージャーの沢村 武史氏。

車両の説明を担当したプロダクトマネージャーの沢村 武史氏。

1950年に生産が始まったフォルクスワーゲンType 2は、「ワーゲンバス」の愛称で今も親しまれている。ID. Buzzは最新のEV技術を投入して生まれた現代版ワーゲンバスである。

発表会場に展示されたオリジナルのトランスポーター・バス。展示車は1950~1967年にかけて生産されたスプリット・ウインドスクリーン・モデル。エンジン冷却用ルーバーが内側に向けて10本切られていることから、63年3月以降の生産分だと思われる。

ID. Buzzはドイツ・ハノーバーにあるフォルクスワーゲン商用車部門の工場で生産される。今時点での我が国の市場に話を限れば、多人数が乗れるミニバンという条件を満たす唯一の電気自動車である。プラットフォームは「MEB(モジュラー エレクトリックドライブ マトリクス)」で、すでに市場に導入済みのフル電動SUV「ID. 4」に続くID.ファミリーの第2弾となる。

ID. Buzzのリヤクオーターピラーに設けられたエアアウトレット。1967~79年にかけて製造されたベイウインドーモデルも、同じ場所にエンジン冷却風取り入れ口が設けてあった。

今回販売されるID. Buzzは2種類。1つはノーマルホイールベース(NWB)の「Pro」。2-2-2シートレイアウトの6人乗りで、2列目センターがウォークスルーになる。もう1つはロングホイールベース(LWB)の「Pro Long Wheelbase)」。2-3-2のレイアウトで、ホイールベースを250mm伸長した7人乗り。

ウォークスルーを採用するID. Buzz Pro(NWB)の2列目シート。

6人乗りの「Pro」にはステアリングヒーターなどの快適装備が標準で備わる。一方の「Pro Long Wheelbase」にはLEDマトリックスヘッドライト「IQ.LIGHT」やリラクゼーション機能(運転席/助手席)、外装色とマッチするインテリア、20インチアルミホイールが標準装備となる。さらに「Pro」には快適装備を中心にしたアップグレードパッケージが、「Pro Long Wheelbase」にはパノラマガラスルーフとプレミアムサウンドシステムHarman Kardonを組み合わせたラグジュアリーパッケージのオプション設定がある。

シンプルかつクリーンなデザインでまとめられた運転席回り。

ラゲッジスペースは「Pro」が2123リットル、「Pro Long Wheelbase」が2469リットル。3列目シートが脱着できるので、様々なアレンジが可能だ。さらにパワースライドドアとパワーテールゲートにはイージー・オープン&イージー・クローズ機能が備わり、両手が塞がっていても開閉できる。

無駄な装飾を一切排したシンプルなリヤビュー。大きなテールゲートはイージー・オープン&イージー・クローズ機能を備えるので、両手が塞がっていても開閉できる。

「Pro Long Wheelbase」は91kWhの、「Pro」は84kWhのバッテリーを搭載し、140kW~150kWのDC急速充電に対応する。一充電当たりの航続距離は前者が554km、後者は524km(WLTCモード)。両モデルともに、リヤアクスルに搭載されるモーターは210kW (286PS)と560Nmの最高出力と最大トルクを生み出し、後輪を駆動する。ちなみにドイツ本国では2024年にフルタイム4WDで最高出力340PSの仕様も追加になっているが、今回の日本市場導入に際しては286PS仕様が選ばれた。

ID. Buzzはバッテリーをフロアに統合して良好な重量配分と低重心化を実現。空力性能も追求してCd値(空気抵抗係数)0.285(欧州仕様)を達成した。

車両本体価格は「Pro」が888万9000円、「Pro Long Wheelbase」が997万9000円。6月20日より全国の正規販売店にて予約注文が始まり、出荷開始は本年7月下旬以降を予定している。

冒頭のイモー・ブッシュマン氏の説明に戻ると、ライバル勢が「華美」「強い存在感」「テック感」「ステータス」を追求しているのに対し、フォルクスワーゲンは「シンプル」「親近感」「サステナブル」「自分らしさ」をキーワードとする「普遍性」をID. Buzzに求めたという。確かに実車の印象は個性的ではあるが高圧的ではなく、室内の設えもほどよく上質でシンプルだ。ID. Buzzは直接競合するライバルのないミニバンとして、新たな需要を喚起しそうである。フォルクスワーゲンが満を持して日本市場に放つ新型EV、今後の動向に注目したい。

Text&Photo:相原俊樹