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ブラックシリーズなんか忘れさせる真の伝説モデル 582馬力V8を搭載した「メルセデスCLK DTM AMG」をテスト!

2025年8月1日

メルセデス・ベンツ CLK DTM AMG:ブラックシリーズは忘れろ! – このCLK DTMこそが真の伝説だ。メルセデスCLK DTM AMGはわずか100台のみ生産された。我々は、V8コンプレッサーと582馬力を搭載した伝説の特別モデルを運転する機会を得た!

「レーストラックからストリートへ」: このスローガンは、多くの自動車メーカーが長年使い古してきたものだ。このスローガンは、レースとほとんど関係のないモデルを販売するためにも使用されている。しかし、例外もある。その一つが「メルセデスCLK DTM AMG」だ。この限定特別モデルは、特別な「DTM」シーズンを記念して発売された。

2003年、メルセデス・ベンツは「DTM」を制覇し、「CLK DTM」で、10レース中9レースで勝利した。これによってセンセーションを巻き起こし、ベルント シュナイダーは4度目のタイトルを獲得した。それを記念して2004年、このレースカーのロードバージョンが、わずか100台限定の少量生産で発売されたのだ。16年経った今でも、「DTM」は人々を魅了し続けている!

● 2003年の「DTM」シーズンを記念した特別モデル
● 100台限定(クーペ20台、カブリオレ80台)
● 5.5リッターV8コンプレッサー(M 113 E 55 ML)
● 582馬力、800Nmのトルク
● 0-100km/hを4.1秒で加速、最高速度320km/h
● 新車時の価格: 236,060ユーロ(約3,9645万円)から
● 現在の価値: 約300,000ユーロ(約5,040万円)

メルセデスのエキスパートであるメカトロニック(MECHATRONIK)が手をかけた走行距離11,700kmの「CLK DTM AMG」を試乗するためにプレイデルスハイムへ向かった。

まずはメルセデス・ベンツ CLK DTM AMGのおさらいから。外観は一言で表すなら「圧倒的」だ。XXLサイズのオーバーフェンダーとリヤウィングが特徴的だが、「DTM」を知らない人は、格好だけのエアロパーツで改造された普通の「CLK」だと誤解するかもしれない。しかし、この「DTM」はアファルターバッハのAMGが生産したもだ。しかも開発は最近「HWA Evo」をリリースして話題を独占しているHWA(HWAチーム=AMGを設立したハンス・ヴェルナー・アウフレヒトが起ち上げたレーシングチーム)だ。モータースポーツの専門家たちが特別モデルの設計を任されたわけだ。明確な目標は、レースカーの要素をできるだけ多く採用することだった。

さらに過激なのはCLK GTRだけ

マルチピースホイールとXXLサイズのオーバーフェンダーは、CLK DTMの2つの特徴的なデザイン要素だ。

CLK DTMは「C209」シリーズの「CLK」をベースとしているものの共通点はほとんどない。CLK DTMは、HWAチームがレースカーからスポンサーのステッカーを剥がし、スリックタイヤをスポーツタイヤに交換したような外観だ。3年後に発表された「CLK 63 AMGブラックシリーズ」さえも控えめに見える。

さらに極端なのは、実際に数百万ユーロ(約数億円)もする「CLK GTR」しかない!インテリアも過激で、もちろん後部座席はなく、そこはカーボンで覆われている。そしてスチールではなくカーボン製の支柱が、4点式ハーネスベルトの固定点として機能している。ドアパネルは「カーボンパネル」と呼ぶべき飾りっ気のないカーボンファイバーの板に過ぎない。シートは「シェル」という形容詞がふさわしいフルバケットシート。そしてステアリングホイールは、小径の天地をちょっと潰した楕円形状で、リアルバックスキンレザーで覆われている。レーシングカーはアルカンターラではない。

5.5リッターV8スーパーチャージャーエンジン、582馬力

車内は空っぽで、カーボンで覆われている。バケットシートは最高のサイドサポートを提供する!

シートベルトを締め、V8コンプレッサーを始動。いよいよ走行開始だ!582馬力の「DTM」のアイドリング音は存在感があるが、決して耳障りなものではない。センターコンソールにある小さな金属製のシフトレバーを「ドライブ」に切り替えて、出発だ。

数メートル走ったところで、5速オートマチックがそろそろ2速にシフトしてもいいかなと思った。ここで少し補足しよう。私にとって「CLK DTM」は夢の車だ。外観、エンジン、希少性など、この特別モデルを魅力的にする要素はたくさんある。しかし、トランスミッションだけが全体的なパフォーマンスを損なうのではないかと心配だった。つまり、CLK DTMのようなレーシングカーに5速オートマチックは相応しくないと思ったからだ。2000年代のメルセデス製オートマチックトランスミッションを知っている人なら、それが通常スポーツ性能に優れているとは言い難いことを知っているだろう。

5速オートマチックのスポーツ性能はどの程度か?

カーボンパネルにはCLK DTM専用のメーターが備わる。360km/hメーターは伊達ではない。その内側にあるタコメーターはメモリに添って小さなバーで表示する。

5速オートマチックトランスミッションは「CLK DTM」の運転の楽しさを削ぎ落してしまうのだろうか?答えは明らかに「No」だ!発進後すぐにシフトアップしないのは、常にマニュアルモードでスタートするためで、ドライバーが自分でパドルシフトレバーでシフトアップする必要があるからだ。そうしない場合は、センターコンソールにある3つのトグルスイッチのうちの1つを切り替えて、オートマチックモードに切り替える必要がある。「CLK DTM」は、シフトチェンジは自分でやれ!もたもたするんじゃない!速く走れ!と訴えてくる。

私は、ギアチェンジのたびに金属製のパドルシフトレバーが心地よい音を立てるので、この操作をとても楽しんだ。最初の数kmは市街地を走る。ここでは「CLK DTM」はまったく快適ではない。フルバケットシートに固定され、ベルント シュナイダーのような気分だが、40~50km/hでの走行だとCLK DTMは段差を嫌がるように吸収して、走行する舞台が公道ではないことを思い知らされる。

0-200km/hを12.2秒

ついに町の出口の標識が見えてきた。2速、フルスロットル!V8コンプレッサーを搭載した「CLK DTM」は、あまりにも激しく加速するので、私は運転免許証を失わないようにすぐにアクセルを離した。582馬力と800Nmのパワーのおかげで、「CLK DTM」は発表から16年経った今でも、驚異的に速いと感じられる。これなら、「911 GT3」などに隠れる必要はない。決して遅くないギアボックスに加え、私が特に驚いたのは、そのステアリングの反応の良さだ。「CLK DTM」は、まるで1,200kgの軽量スポーツカーに乗っているかのような、非常にダイレクトなステアリングレスポンスを発揮する。じつは、全長4.65mの「CLK」の乾燥重量は、1,690kgもあるのだ。

「CLK DTM」は、この後にリリースされた「CLK 63 AMGブラックシリーズ」をすべての面で圧倒している。その性能は0-100km/h加速を4.1秒、0-200km/h加速を12.2秒でこなし、最高速度は320km/h、新車価格は236,060ユーロ(約3,9645万円)だ。

コンプレッサーのサウンドは快楽だ

テストドライブ後、メルセデスCLK DTM AMGを試乗した編集者のヤン ゲッツェは驚きの声を上げた: 「感動しました!」

加速は、比類ないコンプレッサーのサウンドが彩る。現代のターボ時代では、コンプレッサーの音がどれだけ素晴らしいか忘れがちだ。ここで言っているのは排気音ではなく、エンジンルームから聞こえる吸気音のことだ。一日の終わりに高速道路へ。加速レーンから左車線へ移り、全開で加速。窓を開けたままの「DTM」は、特別なサウンドの饗宴を提供してくれる。6,000回転を超えるV8エンジンがダブルマフラーから轟音を響かせ、フロントではコンプレッサーが可能な限りの空気を吸い込む。この音がガードレールを伝って車内に響き渡る瞬間は、何物にも代えがたい体験だ。

「何物にも代えがたい」というのは正確ではない。100台限定生産の「CLK DTMクーペ」は、時折、中古車市場で販売されることがある。私の試乗車もそうだった。走行距離わずか11,700kmのこの特別仕様車に対し、メカトロニックは299,000ユーロ(約5,040万円)を要求している。新車の「ポルシェ911 GT3」よりも高価だが、この「CLK DTM」と比べると、それらはいわゆる量産車でしかない。

Text: Jan Götze
Photo: AUTO BILD Jan Götze