レストモッドで蘇る レトロカー ボルボP1800シアン 全情報
2020年11月18日
クールでエレガント レトロルックのボルボ クーペ
ボルボP1800シアンは60年代へのオマージュだ。ボルボのレーシング部門であるシアンが、伝説の「P1800」をベースに、426馬力のターボパワーと驚きのプライスタグの付いたレトロなクーペを製作している。今回、そのインテリアの写真が初公開された!
ボルボP1800シアンは、スウェーデンブランドのファンの目に喜びの涙をもたらすだけでなく、ちゃんととした「レストモッド」※のプロジェクトでもある。ボルボの親会社であるジーリー(Geely=吉利汽車)のレーシング部門であるシアンレーシング(Cyan Racing)が、現在のボルボの環境・安全への取り組みに対する完全なアンチテーゼとして、このクルマを車輪に乗せたのだった。このクーペはワンオフのままではなく、50万ユーロ(約6,250万円)前後(!)という単価で少量生産される予定だ。これまではエクステリアの写真しかなかった。
今回、シアンレーシングは、インテリアの写真を公開したが、エクステリアに負けず劣らずの豪華さだ。
※レストモッド(Restomod)とは、「Restore」と「Modify」あるいは「Modernize」を組み合わせた造語で、「レストアと共に、改造&現代風にアレンジした車両」のことだ。
レーシングテイストを取り入れたレトロなコックピット(アップデート情報!)
エクステリアデザインと同様に、コックピットのデザインの多くは、オリジナルモデルのP1800のものを参考にしている。一見しただけで、クラシックな外観に微妙な変更が加えられていることがわかる。まず、独創的なモモ(Momo)製プロトティーポのステアリングホイールと2つのバケットシートが装着されている。ダッシュボードはレザーとラフな布で覆われている。さらに安全性を高めるために、チタン製のロールケージを採用し、そのチューブはレザーで覆われている。計器類は60年代のもののように見えるが、P1800シアンのために特別に作られたものだ。穴あきペダルなどのディテールが、コックピットのレトロなレーシングスタイルを完成させている。
カーボンとスチールで強化されたシャシー
P1800シアンのキーとなるデータは、サラブレッドレーシングカーのようなサウンドだ。
990キログラムという車重は、426馬力と455Nmのトルクという性能を十分以上に発揮できる。2リッター4気筒ターボエンジンは、ボルボのツーリングカー、「C30」や「S60 TC1」にも搭載されているパワーユニットだ。ギアシフトは、ホリンジャー製のマニュアル5速トランスミッションで行われ、1速ギアはリア左下に位置する(ギアノブを左に動かし後ろに引く=昔のフェラーリのMT同様)。リアアクスルでは、リミテッドスリップデフがホイール間のパワーを分配する。オールディーズのシャシーがねじれないように、スチールとカーボンで補強されている。
ブレーキブースター?
そんなものはありえない!?シャシー側には前後ダブルウィッシュボーン式のフルアジャスタブルコイルオーバーサスペンションが装着されている。その他、ブレーキはAPレーシング製の4ピストンキャリパーをフロントに、18インチホイールにはセンターロック付きのものを採用している。ちなみに、当初は電気駆動も検討されていたという。シアンレーシング(Cyan Racing)の創設者クリスチャン ダール氏によれば、60年代を純粋に想起させるために内燃機関を採用することが決定されたという。ESPやABSなどの運転補助装置が全くないことも、これに当てはまる。さらに驚くべきことにブレーキブースターさえも見当たらない。
50万ユーロ(約6,250万円)の高価格
魅惑的なボディワークがレーシングインテリアの上に広がっている。見た目はP1800に酷似しているが、すべてカーボン製で、サイズも変更されている。ホイールアーチが大きくなったことで、大きなホイールと広いトラックのスペースが確保された。トランクリッドから中央に突出したフューエルフィラーキャップや中央のスポーツエキゾーストパイプなどのディテールが、このレトロボルボクーペのエクステリアを完成させている。
P1800シアンは、かつてのポールスターのレーシングカーを彷彿とさせる、「レベルブルー(Rebel Blue)」で塗装されている。P1800シアンはワンオフのままではなく、2021年からレトロモデル愛好家向けに限定小生産シリーズとして販売される予定だ。ただし、製造コストがかかるため、残念ながら50万ユーロ(約6,250万円)未満で利用できる可能性は低いので、それなりと資金と覚悟が必要だ。それは、最高品質のコンポーネントを搭載したこのような高級なスモールシリーズの車にとっては、他の高級ブランドのスモールシリーズモデルほど高額ではないものの、高くつくことは間違いない。
ボルボP1800はボルボの歴史の中でも優れてスタイリッシュな一台であり、今でもそのスタイルのチャーミングさに惹かれる人は多い。そういえば生前、ロジャー ムーアも乗っていたし、サイズも含めて魅力的なボルボだ。以前にもこの車のことはレポートしてきたが、今回は内装を含めてその細部などを紹介することとなった。
これだけの作りの良さと手の込んだ細部を見れば、これが決して安いクルマであるはずもないし、こういう種類の自動車が安価である必要もなく、P1800が大好きな人、あるいは昔から憧れていた人などが納得して購入すれば十分なのだから、それなりの価格で少量生産するという計画そのものには大賛成である。
だがいくらなんでも6,000万円を超えてしまってはどうにもならない(少なくとも私には、どうにもならない話だ)。ここまでの作りも内容も求めないから、せめて頑張ればなんとかなるくらいの範囲で作ってくれたらいいのに、とも思ったが、ボルボのブランドイメージ維持と話題作りの意味では仕方ない価格なのかもしれない。
Text: Moritz Doka
加筆:大林晃平
Photo: AUTO BILD assembly / Cyan Racing