「メルセデスAMG GT 63 S 4MATIC+ 」がニュルでラグジュアリークラスセダンとしての最速記録達成
2020年11月15日
メルセデスAMGは現時点でニュルブルクリンク上最速の高級クラス車だ。メルセデスが新たなニュルブルクリンクレコードを樹立した。「メルセデスAMG GT 63 S 4MATIC+」は、ノルトシュライフェ(ニュルブルクリンクサーキット北コース=通称「緑の地獄」)で最速のラグジュアリークラスモデルとなった。そのすべての情報をお届け。
メルセデスAMGのニュルブルクリンクレコード: メルセデスAMG GT 63 S 4MATIC+は、ニュルブルクリンクサーキット北コースのノルトシュライフェ(通称「緑の地獄」)で、最速のラグジュアリークラス車となった。2019年から開発エンジニアチームの一員となったデミアン シャッファートは、ニュルブルクリンクの公式サーキットとされる全長20.823kmのコースで、7分27秒8というラップタイムで639馬力のAMG GTをドライブした。これにより、彼はニュルにおける高級サルーンクラスのファステストラップ記録をアファルターバッハ(AMGの本拠地)に持ち帰った。
メルセデスによれば、マシンにはラップタイム更新のための改造は一切施されていなかったという。ただ安全上の理由から、ドライバーには4点式ベルト付きのバケットシートが用意されていた。一方、レコードラップ中に装着されていたミシュラン製パイロット スポーツ カップ2のタイヤは、GT 63 S 4マチックのオプション装備として、すべての顧客が注文することができるものである。同じく備わっていた、高速走行時の安定性を高め、クルマのCd値を下げることを目的とした「エアロパッケージ」もオプションで用意されているものだ。
メルセデスは、とりわけ速いラップの達成は、高速サルーンのエラストキネマティクス(ホイールサスペンションの動きの自由度を制御する)システムを刷新したことに起因していると述べている。メルセデスAMG GT 63 S 4MATIC+には、完全可変全輪駆動、アクティブリアアクスルステアリング、リアアクスルの電子制御ディファレンシャル、AMGダイナミクス敏捷性プログラムが標準装備されている。
メーカーによれば、AMGダイナミクス敏捷性プログラムは、「マスター」設定で完全可変全輪駆動システムのすべての可能性を活用し、超高速で制御可能なリミテッドスリップデフの機能とそれらをインテリジェントに組み合わせているとのこと。「レース」プログラムでは、サスペンションがダンパーを特別に強化し、ステアリングがより直接的に反応できるよう電子的にコントロールする。
したがって、デミアン シャッファートは、ニュルブルクリンクでの挑戦には決して最適とはいえない条件下で、これらの性能を最大限活用し、可能な限りの速さを発揮しなければならなかった。ノルトシュライフェという難解なコース自体がもたらすドライビングの課題に加えて、エンジニアは、外気温が約7度と低く、アスファルトの表面温度は約10度と冷たく、そして多くの湿ったスポットが存在していた気候条件とも戦わなければならなかった。しかし、彼は見事にそれらを成し遂げ、ニュルにおけるアッパークラスセダンの最速周回記録を見事に達成したのだった。
なお、ニュルブルクリンクでの公式ラップタイムは、車両の技術的な状態と使用された計測技術の両方が、独立した公証人によって審査されたうえで認定されるようになっている。アッパークラスなどの車両クラスは、ドイツ連邦自動車交通局(KBA)の公式カテゴリーに準じて分類されている。
AMGの中でも、GT 63が速いクルマというのは当たり前のことで、それが遅かったりちゃんと曲がらなかったりしたら、それはそれで大問題なのだが、今回着目すべきポイントは、安全性のための4点式シートベルトを除いてはすべて標準、あるいはオプションで装着できる、つまり誰もが(お金をちゃんと払えば)購入できるスペックであったということだ。
こういうニュルブルクリンクサーキットでタイムを計測する場合、ニュルブルクリンクサーキット専用みたいなチューニングが施されることもあり、そういうクルマではもちろん一般公道を走るにはまるで向いていないし、他のサーキットに向いていない場合さえあるような、「特定の場所でタイムを計測するためだけの自動車」のようになってしまっていることも多い。
まあそれはそれで話題作りとか、ちょっとした注目をあびることにはなるが、市販車として考えた時にはドーピングコントロールのような「ずる」な行為だろう。今回のAMG GT 63 Sがどれほど速いのかは推測する以外ないが、とにかくスムーズかつ迫力のある豪快な走りでニュルブルクリンクサーキットを駆け抜けたのだろう。こんな大きさの4ドアセダンがこの速さで迫ってきたらさぞ迫力満点だろうが、きっと数周も全力疾走すればタイヤとブレーキパッドなどにはものすごい負担を強いる結果となるだろう。大きく重いクルマを速く走らせるということは、なんとも過酷なこともまた事実だ。
Text: Lars Hänsch-Petersen
加筆:大林晃平
Photo: Daimler AG