車重3トンオーバー!超ド級のショーファードリブン「メルセデスマイバッハEQS680SUV」を堪能した
2025年4月30日

メルセデスベンツ日本からGLCとGLCクーペにエントリーモデルの「コア」が追加されたので試乗会にどうぞ、とのご案内をいただいた。会場ではメルセデス・マイバッハの最新モデルEQS680SUVの試乗も同様に可能とのこと。我々は富士山が書き割りのバックのように美しい春の日に御殿場に赴いた。
最近街中でマイバッハをよく見かけるようになった、ような気がする。とはいってもそれは東京の特に都心部においての話かもしれないが、とにかく特徴的な2色のツートンカラーに塗り分けられたマイバッハを見かけない日はないようにも思える。
その特徴的なツートンカラーは実は300万円(今回の試乗車では2,859,000円)近いオプション装備なのだが、とにかく普通のメルセデスでは足りない、もっと上の、エクスクルーシブルな自動車が欲しい方にはかなり刺さるチョイスにマイバッハがなり得ていることは理解できる。
下世話な観点で申し訳ないが、今回は値段のことを触れてからマイバッハ初のBEVであるメルセデス・マイバッハEQS680SUVに乗り込むことにしたい。
車重3トンをちょっとだけ超える3050㎏のEQS680SUVの車両本体価格は27,900,000円だ。今回の試乗車にはリヤシートがセパレートになりテーブルや温冷蔵庫が装備されるファーストクラスパッケージのオプション1,236,000円とブラックピアノラッカーフローイングラインインテリアトリムと呼ばれる黒字に銀のストライプが特徴的なインテリアが281,000円、柔らかく滑らかなナッパレザーの素材でホワイトとシルバーグレーで彩られる内装が2,247,000円、そして前述のハイテックシルバーとノーティックブルーに塗り分けられるツートンペイントが2,859,000円。〆て34,523,000円也が今回の試乗車である。
医療法人の理事長御用達
もうこういうクルマは運転などするよりもリヤシートでぬくぬく試乗した方が良いし、基本的にはショーファードリブンとして使用されるのだろうから、と運転をアウトビルトジャパンCEOのエハラさんに任せ、とっととリヤシートに乗り込んで電動ドアを閉めてしまうことにした。

音もなく閉まるドアに隔絶された空間は、白いレザーとブラックの鏡面仕上げのマテリアルとの対比がまばゆいばかりの空間である。僕のような一般小市民には白いレザーインテリアを汚さないようにすることが精いっぱいで、申し訳ないので室内で靴を脱ぐことにした。そんな妙に清潔で白いリヤシートに似合う人は……医療法人の理事長先生とかでしょうか。
せっかくのファーストクラスパッケージだから、と思い切りシートをリクライニングさせオットマンも使い、フットレストも上げるが助手席をダッシュボードに食い込むほどフロントモーストに移動させるのもスイッチイッパツ。あっという間になんとも申し訳ないほど図々しくだらしない姿勢でくつろぐことができる。平日の昼間にこんな格好で箱根などを走っているとお天道様に申し訳ない気持ちでいっぱいだが、さすがにBEVということもありとにかく無類に静かでありながら、ものすごい速さで移動できる広大な空間であることは間違えない。

だがやや落ち着いて各種装備などを精査(?)してみると、取り外しタブレットで操作するコントロールパネルの使い勝手が複雑で良くわかないことや、どうやって使って良いかわからない格納式のリヤテーブル、せっかくの広大なリヤラゲッジスペースを大きく占領してしまう(取り外しは可能)冷温蔵庫の空間、そこだけとってつけたかのような非接触式のスマートフォンホルダー、そして路面によってはフラットさを若干欠くような微振動を感じてしまう乗り心地などなどが気になった。
もちろんそれは乗り心地が悪いとかそういうレベルの話では全くないのだが、マイバッハという世界と3500万円という値段に対し、自然と期待してしまう極楽浄土のような空間かと聞かれると、正直S400dやアルファードのエグゼブティブラウンジあたりとあまり変わらないようにも思えてしまう。少なくとも座っただけの体験ではあったが、マイバッハ62やメルセデス・ベンツ600のリヤシートの質感はこんなもんじゃなかった。

Photo:メルセデス・ベンツ日本
買えない者の卑しいひがみなのかもしれないが、重箱の隅をいつまでもつつくようないちゃもんを止め、せっかくなのでドライバーズシートに座って運転してみることにする。マイバッハのマークが散りばめられたダッシュボードも実に華やかで装備満載ではあるが、普通に運転をするのであれば他のメルセデスベンツと大きく異なる部分はないため、ちょっとだけ安心して走り出す。484kw・658PS,955Nmのパワーは3トンを超える巨体を苦も無く動かすし、それがほぼ無音で滑らかなことに新ためて感心するし、この感覚は当たり前だが「普通の」メルセデス・ベンツEQSにそっくりである。

私見ではあるが、こういうショーファードリブンのクルマとか、ロールスロイスといったハイエンドの自動車こそ、他車にさきがけて積極的にBEVになっていくべきだと思うし、それこそが上に立つ者の使命なのではないだろうか。格好良く言えばノブレスオブリージュっていうことでしょうか(笑)。

航続距離の心配や充電等は運転手君に任せればいいわけだし、どうせ都市部の移動やパーティー会場の往復、料亭への移動などが主目的であれば12気筒も8気筒も無用の長物、よっぽどBEVの方が理にかなっていると思う。そういう観点から考えるならば、このメルセデス・マイバッハEQS680SUVは大きな存在意味を持っているし、ガソリンエンジンモデルよりも多く、ぜひ売れてほしい。嫌味でも皮肉でもなく、本心からそう思う。

Photo:メルセデス・ベンツ日本
尚、このメルセデス・マイバッハEQS680SUVは10年25万キロまでしっかり保証してくれるので、(おそらく)バッテリーの劣化なども心配ご無用。とはいってもこういう自動車を新車で購入される方が、10年25万キロも乗ることなどないことも明らかではあるが。
Text:大林晃平
Photo:アウトビルトジャパン