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日本で一番売れてるメルセデス「メルセデス・ベンツGLC」安心感と快適性がここにある

2025年4月27日

メルセデスベンツ日本からGLCとGLCクーペにエントリーモデルの「コア」が追加されたので試乗会にどうぞ、とのご案内をいただいた。会場ではメルセデス・マイバッハの最新モデルEQS680SUVの試乗も同様に可能とのこと。我々は富士山が書き割りのバックのように美しい春の日に御殿場に赴いた。

日本でもっとも売れているメルセデス・ベンツ 

試乗に先立って行われたメルセデスベンツ日本のプレゼンテーションによれば、GLCは日本で、2024年に最も売れた車種なのだという。そればかりか日本の輸入車の中でも2番目の販売台数を記録しているそうで、どうりで街中でよく見かけるものだと思うと同時に、もはやメルセデスベンツの主流はCクラスでもEクラスでもなく、SUVなのかという違和感と驚きを抱くのは、僕が還暦の古い人間だからである。

さらに街で見かけるのがGLCなのか、GLEなのか、GLAなのかあるいはGLBなのか瞬間的に判断できる自信はまったくないが、とにかくメルセデスベンツのSUVラインナップがものすごく充実していることは間違えない。

さらに今回試乗するGLCには「普通の」と「クーペ」と2種類あり、メカニカルな部分は同じながら、Bピラー以降のボディ形状が違い、もちろんクーペは格好を優先しているためにルーフが下がりドアも小さい。個人的には実用本位の(はず)の普通のモデルが好きではあるが、こういうデザイン優先のクーペSUVが市場で人気なのも事実である。

美しい線で構成される「GLCクーペ」のボディデザイン。

メルセデスベンツGLC 220d 4MATIC クーペCore(コア)

そんな一番売れているGLCだが昨今の物価高でどんどん値段もあがってしまったため、少しでもお求めやすくというメルセデスベンツ日本の優しい配慮で追加されたのが今回の「コア」となる。

お買い得商品とは言っても、「W201アンファング」みたいな質実剛健装備ではまったくなく、ADASもハイメルセデスも4MATICもそのままだし、オーバーヘッドコンソールやエアコン吹き出し口まで光り輝くアンビエントライトもそのままである。

適度にタイトな運転席回り。シートのかけ心地はとても良い。

しいてコアと通常モデルの違いを列挙すればボディカラーが白と黒と銀の3色になってしまうことと、オプション装備がAMGラインパッケージとパノラミックスライディングルーフの2つに絞られてしまうだけで、あとはまったく同じ豪華充実装備と2リッター4気筒のターボディーゼルエンジンを持っている。

今回は、そのスタイリッシュなクーペに乗ることにした。クーペは幅が普通のGLCよりも30㎜ほど広い1920㎜となることを除けば、前に座って前だけを見て走っていればその差を感じることはないだろう。

走り出して一番印象的だったのは、197PSと220Nmを発生する2リッター4気筒ターボディーゼルエンジンに23PSと205Nmの電動モーターを足したハイブリッドシステムがものすごく静かでエンジンの振動もほとんどないことである。

ISGが実にいい仕事をしてくれるため、しなやかにストロークするサスペンションと相まって万人受けする乗り心地を提供する。

個人的にこの同エンジンを搭載しているEクラスを所有しているのだが、それと比較しても明らかに静かで滑らかでちょっと驚いた。電動化でここまで洗練されるのか、遮音の技術などが進化しているからなのか、おそらくその両方だと思うが、とにかくディーゼルエンジンのネガはまったくないと言って良い。

フロントに255/45/20、リアに285/40/20という極太サイズのコンチネンタルタイヤを履いているのだが、通常の路面ではドタドタした感じも突き上げもなく、9速ATが前述の好印象のディーゼルエンジンが生み出すパワーを巧みに伝達しながら滑らかに走る。

身長170cmのドライバーに合わせたシートポジションで後席の足元のスペースは狭くないが、頭上のスペースはミニマム。

また今回の試乗車にはAMGラインパッケージが装備されていたが、これを選択すると20インチアルミホイールが装備されることと、内装のARTICOレザー(本革の質感でメンテナンスが楽な素材)の色を黒だけでなく白からも選ぶことができるようになる。

若干荒れた路面では極太タイヤから重さを感じることと、クーペボディでは後方視界が限られることと後席の閉塞感が強いことが気にはなったが、それならば普通のボディ形状を選べばよいだけのことで、GLCクーペに大きな不満を抱くことは少なくとも通常使用においてはないと言って良い。

トランクは天地方向が狭い。床を上げると深い物入が現れる。

実は現行のW206 Cクラスに乗った時にはこれほどの「メルセデスらしい」感覚を抱くことができず、正直言ってひとつまえのW205 の後期モデルの方がよかったのではないか、と思うほどの完成度だったのだが、それとは明らかに違うメルセデス・ベンツのライド感がこのGLCにはある。

メルセデスが持っていなくてはいけないはずの、安心感と快適さのバランスはかなり高水準で達成できていると思うし、だからこそ日本で最も売れているメルセデスがGLCになることにも納得がいく。

SUVが一番売れているメルセデスなのかと思うといささか残念な感じはするが、少なくともクーペではない方の普通のGLCならばリヤスペースも後方視界も必要十分だし、極めて実用的だから、これなら売れるのも納得、納得である。

現代のメルセデスには凸凹したテールランプはもはや存在しない。

だがお買い得モデルの「Core(コア)」といえども今回のクーペの車両価格は866万円。そこに759,000円のAMGラインパッケージと233,000円のパノラミックスライディングルーフ、さらに無彩色3色の中から黒を選ぶと85,000円が加算され、そこに保証プラス(132,000円)とメンテナンスプラス(220,000円)を加えると10,089,000円と1000万円を突破する価格となった。1000万円の車種がいちばん売れるのか……と軽くため息をつきながらGLCから降りて、次はオプション装備を足すと3500万円を超えるメルセデスマイバッハEQS680SUVにそそくさと乗り換えることにする。

Text:大林晃平
Photo:アウトビルトジャパン