ありだよBYD!クロスオーバータイプの電気自動車「BYD SEALION 7」の走りに注目せよ
2025年5月4日

BYD Auto Japanが、4月15日(火)から販売を開始したクロスオーバータイプの電気自動車「BYD SEALION 7(ビーワイディーシーライオン セブン)」に試乗した。
「BYD SEALION 7」は、日本導入第4弾のミドルサイズSUVで、後輪駆動の「BYD SEALION 7」と四輪駆動の「BYD SEALION 7 AWD」の 2グレードが販売された。その価格は、BYD SEALION 7が495万円、BYD SEALION 7 AWDが572万円となっている。さらに発売記念として、2025年6月30日(月)までに「BYD SEALION 7」を購入、登録すると、ドライブレコーダーやETC車載器などの人気アイテムを無償でプレゼントされるというキャンペーンをおこなっている。
「BYD SEALION 7」は、昨年6月に販売された「BYD SEAL」をベースにしている。我々は、その時点で走行性能に関しては期待できるものだと予想はしていたが、果たして期待を大きく上回る出来の良さに感服した次第である。
欧州車仕立て
「BYD SEALION 7」のデザインは、BYDのデザイン部門の統括責任者であるウォルフガング エッガー
が担当。「BYD SEAL」、「BYD DOLPHIN」同様、BYDの海洋シリーズに共通するデザイン言語(海洋生物の自由さと美しさ)を採用している。フロントフェイスは、「BYD SEAL」に共通するシャープなLEDヘッドライトと大きな「BYD」のロゴで存在感をアピール。
サイドビューはBYDの上級SUVらしく伸びやかな美しいラインで構成されていて、どこか欧州プレミアムSUVに通じるものがある。ドアハンドルは格納式でフラッシュサーフェイス化に役立っている。

Photo:馬淵忠則
「BYD SEALION 7」の走りはズバリ、欧州ミドルクラスSUVに匹敵する。前後に電動モーターを搭載する全輪駆動版「BYD SEALION 7 AWD」は0-100km/h加速4.5秒という俊足ぶりを示すが、何より先行の「SEAL」に共通するサスペンションがもたらす欧州プレミアムブランド同様のハンドリングの良さが際立っていた。

Photo:馬淵忠則
その電動モーターは、前に160kW、310Nmのかご型三相誘電モーターを、後ろには230kW、380Nmの永久磁石同期モーターを搭載する。この後輪駆動用のモーターは「SEAL」と共通だが、最大トルクは「SEAL」の360Nmに対して380Nmに強化されている。車重は「SEAL」の140kg増しで、後輪駆動が2,230kg、全輪駆動が2,340kgなので、車格からするとBEVにしてはそれほど重くないと言える。
e-Platform 3.0とCTB
「BYD SEALION 7」は、BYDがEV専用に開発した「e-Platform 3.0」をベースに、「BYD SEAL」から
本格採用した「CTB(Cell to Body)」技術を採用している。「CTB」は、「ブレードバッテリー」を車体の一部(構造物)として組み込むことで、欧州の大型高級車と変わらない40,000Nm超という堅牢なボディ剛性(ねじり剛性)を獲得し、衝突時でも極めて高い安全性を確保している。

Photo:BYD
このきわめて高いボディ剛性と、前にダブルウィッシュボーン、後ろにマルチリンク、そこに可変式ショックアブソーバーを組み合わせるコンベンショナルな構成で、絶妙なチューニングとホイールベース、トレッドのバランスが抜群で、BEVならではの低重心、車重をうまく活かした、実に落ち着いた余裕の走りを実現している。

Photo:BYD
「BYD SEALION 7 AWD」には、BYD独自開発のインテリジェンス・トルク・アダプテーション・コントロール(iTAC:アイタック)を搭載。このシステムは走行状況に応じて前後のモーターを0.022秒という微小の回転角度でスリップレートを検知、制御することで、よりスムーズかつ安定した走りを実現する。ただ、このシステムの特徴なのか、スロットルレスポンスにふわっとした感覚を伴うタイムラグがあったことを記しておく。
高い快適性能
「BYD SEALION 7」のウインドウガラスにはスバル、VW、BMW、ボルボなどがこぞって採用しているフーヤオ(Fuyao)製が採用されている。フロントガラスとフロントサイドガラスには合わせガラスが採用されていて、これが車内の圧倒的な静かさをもたらしている。その静かさは、スマホの急速充電器の冷却ファンの音がやたらと耳障りに目立つほどだ。

シートの出来の良さも特筆すべき点で、乗り心地の良さに大きく貢献している。落ち着いたインテリアデザインも上級モデルならではとなっている。

Photo:馬淵忠則
「BYD SEALION 7」から、タッチスクリーン上のUI(ユーザーインターフェイス)が大きく変わった。大きな15.6インチの回転式マルチタッチスクリーンをメインとするインターフェイスには、7nm(ナノメートル)の車載用高性能チップ(8155チップ)を新たに搭載。これにより、多くの機能がさらに見やすく、使いやすくなっている。

また、スマートフォンまたはスマートウォッチのウォレットにNFCカードを追加することができるようになったことにより、スマートフォンやスマートウォッチ経由での鍵の施錠、開錠、さらには、イグニッションONにできるなど、便利機能が充実している。

運転支援システムについては、「BYD DOLPHIN」「BYD ATTO 3」「BYD SEAL」に共通する定評の装備に加えて「BYD SEALION 7」では新たな機能として「ドライバーモニタリングシステム」が標準装備されている。このシステムは、運転席側のAピラーに搭載した小型カメラを用いて常時ドライバーをモニタリングし、異常を検知すると警報を発するもので、例えば、ドライバーが目を閉じたり、あくびをしたりすると、システムは自動的に「疲労」と認識。また、運転中によそ見をしたり、前方から目線が逸れると「注意力の低下」と判断して、それぞれ警告を発する。ただ、こういった先進技術のアピールは、余計なお世話的に感じることがあった。

最高レベルの安全性を誇るLFPバッテリー
BYDのバッテリーは、LFP(正極材に、リン「P」、鉄「Fe」、リチウム「Li」)を使用するリチウムイオンバッテリーだが、このLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリーは、三元(NMC)系(正極材に、ニッケル「N」、マンガン「M」、コバルト「C」を使用)リチウムイオンバッテリーに比べて、重い、容量が少ないといったデメリットがある一方で、極めて高い安全性と耐久性を有しているとされている。
BYDは、この特性を活かして、LFPバッテリーを板(ブレード)状に成型し、それを限られた空間に隙間なく、効率よく敷き詰めた「ブレードバッテリー」を採用しているが、この技術的進化はとどまることがない。2025年3月17日には世界に先駆けて、これまでの内燃機関の給油時間と変わらない充電時間(1秒で2Km走行分の電力を充電できる)で電気を蓄えられる「スーパーeプラットフォーム」の市販化に成功している。

「BYD SEALION 7」の充電時の車両側の最大受入容量は105kwだが、高い電力を積極的かつ効率良く受け入れるには、バッテリー本体の温度を適切に管理することが非常に重要だ。そこで、「BYD SEALION 7」では、新たに「充電予熱機能」を採用。BEVが弱い冬場など、とくに低い温度環境下でも安定した充電を可能にした。例えば、充電前にバッテリーを適温に温めておくことで、冬の寒い朝など、バッテリーの温度が低い状況でも効率よく充電できるようになる。

モデル・グレード | BYD SEALION 7 | BYD SEALION 7 AWD |
駆動方式 | 後輪駆動 | 全輪駆動 |
全長/全幅/全高 /ホイールベース (mm) | 4,830×1,925×1,620×2,930 | 4,830×1,925×1,620×2,930 |
⾞両重量(kg) | 2,230 | 2,340 |
乗⾞定員(名) | 5 | 5 |
荷室容量(L) | F:58/R:500 | F:58/R:500 |
最小回転半径(m) | 5.9 | 5.9 |
一充電走行距離(km) | 590 | 540 |
0~100km/hの加速時間(秒) | 6.7 | 4.5 |
フロントモーター | かご形三相誘導モーター 160kW(217PS) 310Nm | |
リアモーター | 永久磁石同期モーター 230kW (312PS) 380Nm | 永久磁石同期モーター 230kW (312PS) 380Nm |
バッテリー | BYD ブレードバッテリー (リン酸鉄リチウムイオンバッテリー) | BYD ブレードバッテリー (リン酸鉄リチウムイオンバッテリー) |
総電力量(kWh) | 82.56 | 82.56 |
フロントサスペンション | ダブルウィッシュボーン | ダブルウィッシュボーン |
リアサスペンション | マルチリンク | マルチリンク |
ブレーキ | (F)ドリルドベンチレーテッドディスク (R)ベンチレーテッドディスク | (F)ドリルドベンチレーテッドディスク (R)ベンチレーテッドディスク |
タイヤサイズ | (F)235/50 R19 (R)255/45 R19 | 245/45 R20 |
ネガティブ要素が見つからない
後輪駆動の「BYD SEALION 7」と全輪駆動の「BYD SEALION 7 AWD」を比較すると、トータルバランスは圧倒的に後輪駆動の「BYD SEALION 7」の方が上だ。最新技術が搭載された車でありながら実にナチュラルな挙動を示すその走りは、往年のFRドイツ車を思わせた。ダイナミックな走りがお好みなら「BYD SEALION 7 AWD」をお勧めする。

「BYD SEALION 7」の試乗で、改めてBYDの自動車づくりに対する真摯な想いを感じることができた。そして自動車としてのまとめ役が優秀なのだろう。パワートレイン、ボディ、サスペンションそれぞれが見事に、高い次元でパッケージングされている。既存の自動車メーカーには大いに危機感を感じてほしい。
なにより、その価格には驚きを隠せない。後輪駆動の「BYD SEALION 7」が495万円、全輪駆動の「BYD SEALION 7 AWD」が572万円で、全ての装備込みのワンプライスという驚異的と言っても大げさではない値付けがされている。
これは、事前予約開始後1ヶ月間で累計受注台数が100台超、先日取材に行ったイベントでも受注があったこと、さらにバンコクモーターショーの期間中にイベントを通してトップとなる3,853台の契約を獲得していることからも「BYD SEALION 7」のコストパフォーマンスの高さが早くも伝わっていることを意味する。電気自動車の、BYDの“自動車”としての高い完成度は早いうちに体験した方がいい。
Text&Photo:アウトビルトジャパン