【クラシック オブ ザ デイ】商業的に成功した世界初のハッチバック 多くの人々から愛された60年代のカルトカー「ルノー4(キャトル)」の誕生物語
2025年5月4日

ルノー4(キャトル):R4(Renault 4)はシトロエン 2CV(Citroën 2CV)よりも優れている。新型「ルノー4 E-Tech」は、クラシックな「ルノー4」への関心を再び呼び起こしている。1961年、ルノー4はシトロエン2CVよりも優れていたが、それでも苦戦を強いられていた。
「R4(ルノー4)」は実用車の鏡だ。家族のバンとして、通学用車両として、あるいは家具運搬車として。1961年に登場した際には革新的な車で、5ドアと折りたたみ式リアシートを備えたその実用性は衝撃的であった。これまでに800万台以上が生産されたが、現存するのはわずかである。「2CV」ほどかわいくなかったため、これまでほとんど注目されてこなかった。
しかし、「R4(ルノー4)」は、その広々とした車内、大きなテールゲート、そしてパワーアップしたエンジンのおかげで、発売当初から多くの面で「シトロエン2CV」を大きく凌駕していた。
控えめな革命児「ルノー キャトル」は、安価な学生たちの車として誤用されることが徐々に減り、今ではクラシックカーとして称賛されるようになった。
さらに、若者がリミックスされた曲を聴いて、それが実はとても古い曲だったことに気づくように、新型の電気自動車「ルノー4 E-TECH」によって、1961年に発売されたオリジナルに再び注目が集まっている。

Photo:Olaf Tamm / AUTO BILD
ルノー 4: 「クルマの始まり」
「R4のようなモデルは、あらゆるものの始まりである」これは、AUTO BILD KLASSIK誌が2010年に「ルノー4」、「フィアット500」、「2CV」の比較テストを行った際に掲載した言葉だ。モデルや製造年によって異なるが、「R4」の頑丈な4気筒エンジンは、600cc、850cc、1リッター、1.1リッターの排気量があり、出力は23~34馬力だった。600~720kgという軽量な車両重量のおかげで、十分な性能を発揮できた。

R4は、比較的十分なスペースと実用性、快適なサスペンションを備えている。パイプ椅子の座り心地は、長距離ではまあまあだ(笑)。この写真は初期モデルなのだが、後期モデルはもっと自動車っぽく、プラスチック万歳な内装となる。
Photo:Dieter Rebmann / AUTO BILD
コロンビアでは、「R4」は「忠実な友人(el amigo fiel)」と呼ばれていた。1970年から1974年までコロンビアの大統領を務めた、ミサエル パストラーナ ボレロ氏は、メデジン近郊のエンビガド市にある若いルノー工場ソファサ(Sociedad de Fabricación de Automotores S.A.)を支援した。「コロンビアのすべての家庭に一台の車」という目標を掲げ、実際、「R4」は多くのコロンビア人にとって初めての新車となった。ここでは、「R4」には「ルノー12」の1.3リッターエンジンが搭載されていて、この小型車は最高速度145km/hを出すことができた。1990年には、より優れたブレーキと効果的な換気システムを備えた「Líder」モデルが追加された。おそらく、史上最高性能の「R4」生産モデルだろう。
他の多くの国々でも、「R4」は低価格で大衆の支持を集めた。フランスやスペインではパトカーとしても活躍した。初期のモデルでは、ジャッキアップ装置のクランクを回してエンジンを始動することができ、1978年から販売された「ルノー4 GTL」のメンテナンスも、基本的な機械の知識さえあれば十分だった。
公用車として使用されていたのも当然のことだろう。スペインの国家警察である「Guardia Civil」は、フランスの国家憲兵と同様に「R4」を使用していた。2010年のコメディ映画「Nothing to declare」に登場した「R4」は印象的だった。

低コスト、防錆対策も不十分
「R4」のサスペンションは素晴らしいものだが、それ以外には、現代的な快適性はほとんどない。特に初期モデルにはほとんどパネルがなく、座席は質素なパイプフレームのみだった。製造コストが安く、取り外しも簡単だったのだ。ボディパネルは浅い絞り加工で済み、窓ガラスは全面が平らで、クランク式ではなくスライド式の窓が採用されていた。これも製造を簡素化していた。

画像:Olaf Tamm / AUTO BILD
R4のシャシーに異なるボディを載せるのは比較的容易だった。こうして、「ルノー4 F4バン(ロングバージョン: F6)」、大胆にオープンなビーチ用車「Plein Air」、プラスチックボディの「ルノー Rodéo」が誕生した。
購入前に確認すべきこと
残念ながら、単純な製造工程では、有効な防錆加工が施されていなかった。1972年春以降、これらのモデルには少なくとも若干の錆び止め加工が施された。専門家であるインゴ ハイトール氏は、1960年代の「R4」は、最初の車検を受ける前に、道路にまかれた塩分と接触して溶接が必要になったと語っている。

Photo:Olaf Tamm / AUTO BILD
ハイトール氏によると、特に重要なのは主に車体下部とフレームである。多層鋼板製のフロントビームは内側から腐食する。また、後輪の前の軸受けブロックも錆びることが多い。シル、マッドガードのネジ端、A、B、Cピラー、フロントマッドガードの三角プレート、フロントアクスル取り付け部のプレートも点検すべきである。
幸い、ボディパネルの在庫は豊富にある。TÜV(ドイツ技術検査協会)認証の亜鉛メッキ製シャシーフレームさえある。しかもフレームは溶接ではなくボルトで固定されている。

Photo:Holger Schaper / AUTO BILD
一方、エンジンは非常に耐久性が高いとされている。ただし、1972年以前に製造された車のドライブシャフトは摩耗が早い場合がある。加速時や急カーブ時にパキパキという音が聞こえる場合は、ベアリングやジョイントの遊びが原因である可能性がある。1967年までに製造された初期の「R4」シリーズの3速ギアボックスは、シンクロナイザーリングの欠陥がよく見られる。たまにしか使用しない場合は、6ボルトの電気系統に少しメンテナンスが必要だ。
消耗部品は、さまざまな部品販売店やネットで、手頃な価格で入手できる。高価なのは、テールゲートのライセンスプレートフレームや、オリジナルのシートカバー、内装のゴムバンドなどのクロムメッキトリム部品だ。
結論:
小型車は素晴らしい!少なくとも、大型車のレシピをそのまま小型化したものではなく、一貫してよく考えられたものなら。これは「ルノー キャトル(R4)」に特に当てはまる。
ボディを見てみよう:小さなスペースに極めて広い室内、大きなテールゲートを含む5ドアと折りたたみ式リアシートのおかげで実用的、全方位の視界が非常に良い。
横置きエンジンを搭載すれば、「R4」はもう少し全長を短くできたかもしれない。しかし、1961年に「R4」が登場した当時、横置きエンジンを搭載したミニは市場に登場してからわずか2年しか経っておらず、縦置きエンジンが最先端の技術だった。
巧みに設計された「R4」は、人の心を惹きつける。この車に乗ってクレイジーなドライブを体験し、人々の心を躍らせ、それは何百万人もの人々だった。
Text: Frank B. Meyer / AUTO BILD
追記 by AUTO BILD JAPAN
このルノーキャトルが普通にまだ新車で変えた時代、というと1980年代後半から1990年代初頭のことであるが、僕の周りの自動車好きの間では「シトロエン2CVとキャトルとどちらを選ぶか論争(?)が勃発していた。オーセンティックで自動車らしい形のキャトルと、見た目からして妙ちくりんで、変わりモノに見える2CVとは対照的で、そのどちらかを選ぶかで、その人の自動車への趣味趣向がわかるようにも思えた。
実際にはシトロエン2CVも徹底的に実用車であって、妙な形もすべて理由があってのことなのだが、とにかく自動車らしい形のキャトルに対して、2CVはすべてが普通に見えなかった。そういう僕は変態で変わり者なので(笑)、圧倒的に当時は2CV派で、実際に最後のロットの1台を発注し、2CVを持っていたことがあるが、残念ながらキャトルを所有したことは今までない。
2気筒で、空冷で、変な格好の2CVに対し、キャトルは4気筒で、水冷で、真面目な(?)格好で、クーラーもつけることが出来たから2CVよりも圧倒的に文明開化仕様ではあった。それは当たり前で、キャトルはシトロエン2CVの成功を見て、それに負けないような実用車をというコンセプトで13年も後に作られ、発売されたからで、2CVよりも機構的に進んでいて当たり前なわけではある。
といっても、一見真面目で普通に見えるキャトルもよくよく見るといたるところが変わっている。サイドウィンドウがスライド式に、引き戸のように開くのなど序の口で、ダッシュボード中央から生えたシフトノブの先はエンジンの上を通ってはるか先っちょにあるトランスミッションまで長いロッドでつながっているし、有名な珍特徴としてはホイールベースが左右で長さが異なる、というものである。これは別にわざわざ人をびっくりさせようとして左右の長さを変えたわけではもちろんなく、サスペンションの構造上、やむを得ず左右ばらばらの長さになってしまったのだが、実はルノーサンクの初期のモデルも左右のホイールベースの長さがちょっと違うというのはちょっとしたトリビアである。
実はそんなキャトルは日本でちょっとしたブームになった時期があって、それは1997年のことだった。テレビドラマの『ビーチボーイズ』で、反町隆史と竹野内豊が劇中で乗ったクルマがキャトルであったからで、この当時人気絶頂の二人がダブル主演したドラマで使われたことが原因で妙な値上がりとなり、引退後にも関わらずキャトルはモテ期を迎えてしまった。まあオートマチックトランスミッションがなかったため、多くの婦女子はため息をつきながら購入を断念したことは想像つくが、とにかくこの20世紀があとちょっとで終わるという数年間、キャトルは妙にブームだったのであった。
だが僕はこの『ビーチボーイズ』で、ベタにフォルクスワーゲンビートルにサーフボードを背負わせたり、フォルクスワーゲンタイプⅡなんかをそれっぽく登場させたりせずに、あえて、ここでキャトルをチョイスした人のセンスはなかなか鋭く、いいセンスなのではないかと僭越ながら思う。なぜならば、フォルクスワーゲンビートルやタイプⅡではあまりにベタでこてこての配役(?)になってしまうが、そこをちょっとだけひねって、あえてあまり知名度も高くなく、やや都会的な空気感を持ちながらも、牧歌的で実用的なキャトルをさらっと登場させることで、この二人のこだわりやライフスタイルを効果的に演出していると感じるからである。
さてそんなキャトルだが、1992年、トゥインゴに席を譲るような形で生産中止になるのだが、累計で813万台も生産された。これは386万台といわれるシトロエン2CVの倍以上の数で、実はフォルクスワーゲンビートル(1位)、T型フォード(2位)の次、つまり世界第3位の数であることは意外と知られていない。世界で3位がフランス車のルノーのキャトルであること、これはちょっとした小ネタとして自動車談議で使えるのではないだろうか。
それにしてもキャトルもサンクもやっぱり名前の響きが心地よい。本当は単に「4」と「5」という数字にすぎないのに、それをフランス語で発声することであっという間にイイ感じのネーミングになる。チンクエチェントもダブルオーセブンもそうだが、こういう響きは実に心地よい。だが残念ながらドイツ語で数字を読んでもらえるドイツ車がぱっと思い浮かばないのはなぜであろうか??(キューイチイチとかナインイレブンとは言いますけど、あんまりノインエルフって言いませんよねぇ(笑)
Text:大林晃平