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【動画付き】“超高速” VWゴルフ2 30年前の車がBMW M3 CSより速い!

2020年10月31日

VWゴルフ2 CL 2.0 16V “ピンダーヴァーゲン”

今年30歳のゴルフ2がニュルブルクリンクでBMW M3 CSより速いスピードを発揮! イギリスの有名なVWチューナーが、VWゴルフ2をニュルブルクリンクモンスターに変身させた。440馬力の強力なVWが、ノルトシュライフェ(ニュル北コース)を信じられないほどの速さで周回する。

7分34秒。

ノルトシュライフェの愛好家にとって、それは意味のある数字だ。このラップタイムの領域では、アウディ、BMW、メルセデスなどのメーカーが、RS Q8、M3 CS、AMG GT 63 Sなどの馬力のある現代的なマシンで競い合っている。そして、30年前のVWゴルフ2 CLを駆るイギリスのナイジェル ピンダー(Nigel Pinder)もこの領域で競っている。イギリス人ドライバーによれば、この7分34秒は、ニュルブルクリンクでのいわゆる 「ピンダーヴァーゲン(ゴルフ2の愛称)」で達成した過去最高のタイムだという。記録挑戦中のコース上には、他のクルマを走っていたので、コースが完全にクリアされていれば、もっと速いタイムを達成できた可能性は高い。

もちろん、「ピンダーズゴルフ(Pinder’s Golf)」は生産状態からは程遠い。サンルーフのないシンプルなVWゴルフ2の 3ドアCLモデルが「ニュルブルクリンクモンスター」のベースとなっている。エンジンは1990年式のVWゴルフ3 2.0 16Vから転用したもので、英国ツーリングカー選手権で使用された、ギャレット製ターボチャージャーで、チャージ圧は0.6バール、エンジンは290馬力を発生する。

エンジンとシャシーの大掛かりな作業

ピンダーは、ギアを変速しながら少しずつブースト圧を室内から上げていき、最終的には360馬力を出していく。これだけではニュルブルクリンク上での追い越しには足りないという人のために、ステアリングホイールにはさらにブーストを上げるためのボタンが用意されている。ナイジェルがボタンを押すと、ブースト圧は1.6バールに上昇し、440馬力を発揮する。このパワーをアスファルトで発揮させるためには、ノーマルのシャシーにKW(チューニングスペシャリスト)製シャシーのスペースを確保しなければならなかった。クラブスポーツのコイルオーバーサスペンションは、レーストラックでの使用を想定して設計されており、ゴルフを低くするだけでなく、何よりもグリップと走行安定性を向上させる。

彼はすべての改造を自分で行い、VWのシャシーにも大幅に手が加えられた。 ©Nigel Pinder

しかし、それだけでは不十分だった。そこで彼は、走行性能が自分の好みに合うようになるまでウィッシュボーンやその他のサスペンションパーツの調整を最適化した。ブレーキはイギリスのツーリングカーレースでも活躍したAPレーシングプロ5000を採用した。トランスミッションはVWゴルフ4の6速シフトボックスを採用している。

洗練されたエアロダイナミクスを持つピンダーズゴルフ

今回の車を作ったナイジェル ピンダーとはいったいどのような人物なのだろう?このイギリス人は、ゴルフを実質的にガレージで自分の手によって作り、常に改良を続けている。これはエアロダイナミクスにも当てはまる。その走行シーンは、ニュルブルクリンクブロガーのミーシャ シャローディン氏による「Porsche Eater」の動画で見ることができる。

スプリンター、スポイラー、ディフューザーも見逃せない。ナイジェルのゴルフは飛行機をも連想させる。 ©Nigel Pinder

レーシングカーのようにフロアを閉じ、リアにはディフューザーを追加して適度なダウンフォースを確保。最後に、ルーフ上のリアスポイラーは、車の後ろの空気の乱れを解消し、ゴルフをより速くするために存在している。その結果は、ノルトシュライフェでの、8分未満のラップタイムを何度も達成した、史上最高のラリードライバー、ヴァルター ロールにさえ感銘を与えるだろう。

またまたゴルフ(今回はⅡだが)を思い切りチューンした話の登場である。前回の「羊をかぶった狼」的なチューニングの話と変わって、今回は思い切りアピアランスも過激に盛り付けし、狙う相手はニュルブルクリンクサーキット、という武闘派の話である。ゴルフⅡだってこんな扮装を施され、ニュルブルクリンクサーキットを目の回る速さで駆け回らされる日など予想していなかっただろうけれど、とにかくタイムに関してはもう十分速く、これ以上目指したら危険、というレベルに達している。

これだけのチューニングを施すことができたゴルフⅡの基本性能をほめるべきか、ニュルブルクリンクサーキット詣でを繰り返し、タイム向上を追い求めるイギリス人の無茶さ加減にあきれるべきか、その判断はちょっと難しいところだが、公道で無謀に走行するのではなく、ちゃんとサーキットで行っているのだから、こういう趣味や遊びも許されてしかるべきだとは思う。個人の趣向の範疇だし、市井の人に迷惑をかけないのであればいいのではないだろうか。でも、なんで21世紀にもなって、わざわざゴルフⅡを選んだのかは、ぜひ聞いてみたいものだ。

Text: Lars Hänsch-Petersen
加筆:大林晃平
Photo: Nigel Pinder