【第44回JAIA輸入車試乗会】未知との遭遇 4シーターBEVのロータス エメヤ オレンジ色のエメヤに試乗&レポート!
2025年2月19日

ロータスという歴史ある名前を与えられた宇宙船のようなBEVに、あろうことか乗ることが許された。905馬力と985Nmのトルクを持つ、1,800万円のロータスの乗り心地やいかに。
ロータス エレトレに生まれて初めて接近遭遇したのは昨年のJAIA会場だった。参考出品という形で展示されていたクルマに抱いた衝撃と違和感はものすごいものがあった。その理由はもちろん「ロータス」だったからで、豪華絢爛な内装やものすごく大きく見えるデザインの4シーターBEVがエランやスーパーセブンやエスプリと同じ苗字を持つなんて・・・。驚きながら電動ドアを閉めながら、きっと一生この車を試乗させていただく機会なんてないだろうな、と独り言を言ったことを思い出す。

それからちょうど一年が経過し、今回のJAIA輸入車試乗会ではロータスの新型BEV、エメヤに出会えたばかりか、なんと試乗できることになった。見たことがないほどきらびやかな金ラメが散らばされたオレンジ色のエメヤは、何回見ても違和感全開の姿で会場では異彩をはなっている。極太の305 30 R22というタイヤを見た瞬間、「これに試乗するのか」と正直気が重くなった。

電動のドアを開けて室内に入ると、そこは見たことのない造形のオンパレードである。形容しがたいほど複雑な形状のスピーカー、何が映っているのか戸惑うほどの情報量のヘッドアップディスプレイ、欧陽菲菲のブレスレットを彷彿とさせるドリンクホルダー・・・。ドアミラーはもちろんカメラで映像はドアパネルに鮮明に映っているし、バックスキンのステアリングホイールはほぼ長方形といってもよい形状で、そこにあるスイッチ類も数は多いし煩雑で短時間ではとても覚えきれない。。

この今まで見たこともない造形に溢れた物体を動かすという感覚は、映画インデペンデンス・デイで異星人の宇宙船を突如操縦しなくてはいけないハメになった、ウィルスミス演じる主人公を思い出させる。なんだかわからない絵が描いてあるスイッチを押すと、いきなりグローブボックスが開き、助手席の人間の膝小僧を直撃した。


極大のヘッドアップディスプレイには周囲を走る自動車やモーターサイクル等の姿がロックオンされているかのごとく映し出され、プレデターのサーモグラフィ画像のようにも感じてしまう。だが走り始めてしまえばもちろんエメヤも自動車には違いないから、意外と迷わずに走らせることは出来る。ステアリングホイールも形状さえ除けば意外と普通のフィールだし強力きわまりないブレーキも街中でのフィールや違和感はほとんどない。残念ながら今回は思い切りアクセルを踏む機会はなかったが、パワーはどこから踏んでもたじろぐほど強力ではあるが決して使いにくいことはない。

乗り心地はまともだし、セパレートタイプの4座に座っての移動は、それなりに新鮮なものであろう。少なくとも見た目よりもはるかに運転しやすいし、形が好きであればセダンとして使えない気難しさはない。

それでも徐々に慣れた運転感覚といつまで慣れない室内造形のギャップ、そして今自分が乗っているのがロータスである、という違和感・・・。結局最後までこの車を選ぶ人はどういう人物なのか、頭の中で結論は出なかった。だが再度言うが、一台のBEVとして評価した時、エメヤは決して悪くないばかりかかなりの完成度を持っているとは思う。もちろん1,800万円という価格を考えれば良くできていて当たり前ではあるが、とにかく超高性能BEVの一台として破綻している部分はないと思う。

コーリン チャップマンはおろか、ロータス エスプリさえも知らないカスタマーが、異星人のUFOのようなBEVをロータスとして認識する時代。時代は本当に変わった、スーパーカーの定義が変わった、動力源が変わった。だが2.5トンもの華々しい自動車が走るための道路や駐車場や街並みは、20世紀とほとんど変わっていないように思われる。
ロータス エランを長年愛する友人は、この車をどう思うのであろうか?


Text: 大林晃平
Photo: 江渡裕美、河村東真、Auto Bild JAPAN