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【動画付き】ポルシェ タイカンのテクノロジー

2020年10月27日

ポルシェ タイカン: e-ドライブの熱管理 911ターボSとの加速テスト動画付き

これがポルシェ タイカンを加速王にするシステムである。その背景にあるのは、複雑で洗練された熱管理だ。ポルシェ タイカンのテクノロジーの仕組みに迫る!

2.8秒、言葉にすると2ポイント8!
これが、761馬力のタイカン ターボSが、スタンディングポジションからから時速100キロに達するまでの速さだ。
しかも、ここでは、スーパースポーツカーではなく、4つの本格的なシートを備えたセダンの話をしているのだ。
バッテリーが十分に充電されていれば、タイカンは何度でも加速インフェルノを再現してみせてくれる。
一見些細なことのように聞こえるが、パフォーマンス電気自動車としては必須となる要素だ。
バッテリーとエンジンをオーバーヒートの脅威から守るために、出力を単純に下げるモデルもあるが、タイカンはそうではない。
再現性のあるパフォーマンスを実現するために、タイカンは、トリッキーで非常に複雑な熱管理システムを使用して、バッテリーと駆動システムが常に最適な温度内で機能することを保証する。
これは効率性にも役立ち、充電時間の短縮を可能にする。
ポルシェのエンジニアは、先ごろ開催された、「第29回アーヘン学会」で、タイカンの熱管理システムの技術に関する発表をおこなった。

冷却回路と空調システムの相互作用

冷却回路は、クーラー、電子ファン、複数のポンプで構成されている。
これらのポンプは、ほぼリアルタイムでクーラントの流量を調整することができ、ポルシェによれば、航続距離を最大3.5パーセント向上させることができるという。
サーモスタットとして機能するバルブは、必要に応じてクーラントの温度を制御する。
冷却回路は、摂氏40度、65度、90度の3つの異なる温度ウィンドウで作動する。
これらは互いに接続することができ、したがって、接続されたコンポーネントの温度を調整することができるようになっている。
冷却システムの回路は、熱交換器を介して、空調装置の回路に接続されている。
それは、下部の温度ウィンドウでの駆動冷却をサポートし、その見返りに、上部の温度ウィンドウでの冷却回路が冷媒の凝縮を加速するようにできている。

冷却回路と空調回路は、それぞれフロントエプロンの後ろに独立したラジエターを備え、それによりバッテリーを冷却する。

駆動設定が熱管理に影響

冷却回路のラインは、93.4kWhのバッテリーを含む、関連するすべての駆動システムに作用している。
これはタイカン熱管理システムの最初の中心的な要素で、冷却する機能だけではなく、熱蓄積器としても機能するという。
つまり、ドライブからの廃熱を無駄にする必要はなく、蓄熱して後で他のコンポーネントに供給することができることを意味する。
このシステムは、収集した走行データと走行モードに基づいて、作動するという。
例えば、コンフォートポジションの渋滞では、エンジンからの廃熱がキャブレターに供給され、冷却ポンプが最小で動作するし、暖房を切っているときには、廃熱はバッテリーに蓄えられる

バッテリーは、電気モーターや充電モジュールと同様に冷却回路に接続されている。

Sport+に設定して走行しているとき、例えば激しいパワー要求の前などには、代わりにバッテリーを予熱して最適な出力を確保するようにできている。
クーラントポンプはより多くの電力を供給するが、電動モーターからの熱は可能な限りバッテリーに送られる。熱が放散されるのは一定の温度を超えてからで、空調システムが追加でシステムを冷却する。
このように予測温度管理と一定の熱交換により、常に安定した性能を発揮できるようになっている。

充電時も集中冷却

これは、システムが熱を放散するだけでなく、コンポーネント間でインテリジェントに分散するため、冷却ではなく熱管理と呼ばれる。
このようにしてエネルギーを蓄え、効率と性能を高めることができるようになっている。
温度バランスは、コンポーネントのパフォーマンス、効率、および寿命に関しても適切で最良なバランスを見つける必要がある。
さらにこのシステムは充電時にも良い方向に作用するという。
800ボルト技術のおかげで、バッテリーは22.5分で80%まで充電することができるようになっているからだ。
ここでもインテリジェントな熱管理が、技術部品を適切な温度範囲内に保つ役割を果たしている。

もちろん、開発はまだまだこれからだが、ポルシェによれば、例えばクーラントポンプなどにはさらにまだ改善の余地があるという。
数年内におこなわれるであろうと予想されるタイカンの最初のフェイスリフト時に、これらのシステムがどのように進化しているのかを考えると、非常に興味深いものがある。

タイカンは、800ボルトを搭載した初の市販車だ。これは充電中に多くの熱を発生させる。

バッテリーの冷却、これはEVの世界では大問題らしい。
聞くところによれば、ニッサン リーフは、この部分が以前から課題になっていると聞くし、テスラも通常走行ではかなりの速度だが、それなりのペースでガンガン走っていると、バッテリーが熱くなってセーフティモードになるらしい(特にサーキットなどでは、あっという間になるらしい)。
ポルシェにとってはなんとしても、そのEVのネガティブな部分を取り去って、最良のポルシェ タイカンは最善のポルシェ タイカンでいたい、というのが今回の話だが、走行中だけではなく、充電中も冷却することにより、効果が上がるということがわかって今回勉強になった。
様々な機構部分や、数値的なものははっきり言って理解できない(私の力不足の頭が原因で、難しくって理解できない、という意味である)ところもあるが、こういう冷却する技術までちゃんと説明し、公開するところが、いかにもポルシェなのではないだろうか。

それにしてもハイブリッドシステムもそうだが、EVもそのシステムはなんとも複雑で、理解することが難しい。今回のレポートも途中で断念せずに、最後までちゃんと読んでくださった方々に頭が下がる思いだ。
これからも技術の進化に伴ってますます難しい説明をしなくてはいけない、そんな21世紀である。

Text: Moritz Doka
加筆:大林晃平
Photo: Porsche AG