【新車情報】世界初試乗 ハイパーカー パガーニ ウアイラ ロードスターBC フルレポート
2020年9月17日
320万ユーロ(日本円で4億円)を超えるパガーニ ウアイラ ロードスターBCをテスト! パガーニ ウアイラ ロードスターBCは、800馬力超、1100Nmのトルクを持つ自動車の芸術作品だ。我々は、世界初の媒体として、それを運転することを許可された!
ついにその日が来た!2019年8月のペブルビーチコンクールデレガンスでワールドプレミアされた、ハイパーカー、パガーニ ウアイラ ロードスターBC。その日から約1年と半月、世界初のジャーナリストとして、40台限定生産モデルのウライア ロードスターBCを運転することが許可された。
- パガーニ ウアイラの最終開発型
- 40台限定
- AMGからの6.0リッターV12ツインターボ(パガーニV12)
- 最高出力&最大トルク: 800馬力以上&1100 Nm
- 最高速度: 350km/h
- 乾燥重量: 1250kg
- 価格:正味320万ユーロ(約4億6百万円)
- すでに完売状態
まず、最初から始めよう。ウライアは、伝説的なパガーニ ゾンダに続いて、フェラーリの聖地マラネロの東にある小さな町、サン チェザーリオ スル パーナロ(San Cesario Sul Panaro)で、愛情を込めて車を手作りするイタリアの小規模生産シリーズモデルメーカーの2番目のモデルだ。100台のウアイラ クーペ、20台のウアイラBC、さらに100台のウアイラ ロードスターと、わずか5台のウアイラ イモラの後、新しいロードスターBCは2011年以来作られてきたウアイラの最後を飾るモデルとなる。そして、2022年末にはC10と呼ばれるウアイラの後継モデルが登場する予定だ!
4年以上に及ぶ開発
現在117人のメンバーがいるチームが開発作業に取り組んだ。ロードスターBCの開発は2015年に始まり、4年間を要した。これは、この車にどれだけの微調整が行われたかを示している。創業者のオラチオ パガーニ氏は、開発時間の約半分はデザインと技術に費やされ、残りの半分は詳細な作業に費やされたと説明している。彼のお気に入りのトピックは、空力特性と軽量化だ。その件になると彼の話に熱が入り始め、すべてのディテールに関して詳しい説明が施される。そして彼のすべての熱のこもった言葉によって、我々はこの車にどれだけの心と魂が費やされたか、そしてロードスターBCが、ただルーフのないウアイラBCというだけの車ではないことを理解する。
多くの情報供給の後、私はようやくパガーニ ウアイラ ロードスターBCのハンドルを握れることを許可され、本当に興奮した。この車両は、2019年8月に正式に発表された個体そのもので、その後さまざまなイベントで顧客に提示するために世界中を旅してきた車輛である。クーペとは異なり、ロードスターBCには従来型のドアが備わっている。もちろん、天気さえよければ、軽量のカーボンルーフは要らない。いくつかの簡単な手順で取り外すことができるようになっている。だが唯一問題がある。車のどこにも収納できないことだ。
ウアイラ ロードスターBCは紳士ドライバー用
最初はゾンダよりも少し空間的に窮屈に感じるが、すぐにシートには慣れる。身長1.83メートルの私には、風によって、ヘアスタイルがメチャクチャになる危険もないが、身長1.90メートルを超えると、コックピットはタイトになるかもしれない。そしてその瞬間がやって来た。私は6リッターのV12ツインターボを畏敬の念を持ってスタートさせた。重量がわずか1250キロのウアイラ ロードスターBCのパワーは800馬力を超え、後輪のみからのトルクは1100 Nmだ。私は320万ユーロ(4億円超)のハイパーカーでテストドライブを開始したが、実は、この個体自身、既に販売済みの客車なのだ。したがって、これまで以上にプレッシャーを感じるが、助手席に乗ったテストドライバーのマッテオが私を安心させてくれる。「パガーニの顧客の大半はレーシングドライバーではなく、普通のドライバーのため、ウアイラ ロードスターBCは安全な取り扱いをできるように主にセッティングされている」と説明してくれた。事実、この車は本当に運転しやすく仕上げられている。
最高速度: 350km/h
実際にスタートする前に、アナログタコメーターとスピードメーターの間のデジタルディスプレイを見てみよう。そこには、「最高速度320km/h」と書いてあるが、それは可能な最高速度(350 km/h)ではなく、最後のテスト走行からの最大値だ。走り出してほんの数キロ後、予期しないことが起こった。田舎道を走っていると、ユニークなパガーニ ゾンダ アブソルートに突然出会ったのだ!テストドライバーのマッテオが、ヘッドライトを点滅させ、クラクションを鳴らしながら、リラックスした方法でゾンダのドライバーに挨拶を送る。カメラマンは振り返ってゾンダ アブソルートの写真を撮りまくる。生涯忘れられない瞬間となった!
軽量化で違いが生まる
1 km走行するごとに、車への自信が高まり、緊張感が減る。マッテオは正しいようだ。ウアイラ ロードスターBCは非常に安全に調整されている。「スポーツ」モードでは、全長4.61メートルのロードスターBCは、その正確なステアリングレスポンスと優れたグリップに感動する。速度が上がると、油圧ステアリングが輝き始め、320万ユーロ(4億円超)のパガーニを完璧にコントロールする。まだ温まっていないピレリ製セミスリックタイヤにもかかわらず。そしてそのステアリングレスポンスに加え、特に新開発のシャシーも印象的だ。パガーニは初めて、選択した走行モードに適応するアダプティブダンパーを使用している。さらに、エンジニアはブレーキ動作に多くの微調整を加えている。ボディの激しい沈み込みを防ぐために、ブレーキの際、電子制御ダンパーによってフロントがわずかに持ち上げられ、フロントアクスルから重量が取り除かれるようになっている。
メルセデスAMGからの完全に新しいエンジン
メルセデスAMG製パワーユニット「M 158 Evo」は最大トルクが、2000 rpmという低回転域から得られるため、800馬力超と1100 Nmの強烈なウライア ロードスターBCは、少しスローダウンする必要がある。エンジンは完全に新しい開発で、初めてパガーニのロゴを付けることが許可された。「パガーニV12」だ。ロードスターBCでは、6リッターの排気量を備えたV12ツインターボには、4基のインタークーラー、2基のスロットルボディ、およびより大型のターボが備わっている。オラシオ パガーニは、この新しいエンジンは、後継モデルのC10にも採用されると述べている。ウアイラ ロードスターBCは、イタリアの山道を通過するにはほとんど速すぎる。トルクは非常に太く、推力は2000から約5600rpmまで常に残忍なまま保てているため、レスポンスは文字通りクイックでダイレクトだ。したがって、アナログスピードメーターの415km/hという数字は、あながち大げさではないかもしれない。
1000馬力も実現可能
数時間前に、オラシオ パガーニが私に1000馬力の車も問題ではないが、ドライバビリティが損なわれることを懸念していると説明したことを思い出した。今、私は彼の意味を正確に理解した。ロードスターBCの動作を実際に体験した後、私は明確な良心をもって言うことができる。この車は間違いなく、これ以上のパワーは必要としない!と。純粋な後輪駆動にもかかわらず、重量がわずか1250キロのウアイラ ロードスターBCは、別の星からやってきた乗り物のように加速する。推進力はタフなギアチェンジによってのみ中断される。多くのライバルが完璧なデュアルクラッチトランスミッションに向かう傾向とは逆に、パガーニはサプライヤー、Xtracからのシーケンシャルトランスミッションに依存し続けている。理由?それはもちろん車重の軽量化だ!
デュアルクラッチトランスミッションに対する意識
オラシオ パガーニは、余分な1キロを節約することに夢中だ。ウアイラBCと比較して、クラッチは完全に再設計され、重量は10ではなく6キロに削減されている。同時に、シフトチェンジに要する時間は30%改善された。または別の言い方をするならば:ウアイラ ロードスターBCは、BMW M5/M6のSMG IIIに最もよく似た激しい動きでシフトする。もちろん、デュアルクラッチトランスミッションはさらに高速で、よりスムーズにシフトするが、その分重量も大きくなる。シーケンシャルトランスミッションがギアチェンジのたびに大量のネックヒットによって、全体的なスペクタクルに寄与するという事実も、歓迎すべき副作用だ。退屈はウアイラ ロードスターBCでは絶対に発生しない!
ウアイラ ロードスターBCラップ記録を更新
1日半と約500 kmのテストドライブの後、ウアイラ ロードスターBCは私を完全に興奮させた。私を最も驚かせたのは、800馬力超の後輪駆動ハイパーカーは、まったく退屈することなく、比較的簡単に運転できるという認識だ。そこでは、1キロごとが驚きの体験だ!そしてロードスターBCは、公道の場で、最終段階にいかに速いかを証明してみせた。ロードスターBCは、ベルギーのスパフランコルシャンサーキットで2分23秒08というラップタイムを記録した。これは、世界中で公認された路上走行車両のラップタイム新記録だ。ラップタイムの公認が完了するとともに、40台の顧客車のうち、最初の車が生産され、今年中に納品される。
結論:
パガーニは合計で35万キロを超える距離で、ロードスターBCをテストしたが、そのうち4万キロはレーストラックでおこなわれたという。ウアイラ ロードスターBCで500キロを1日半で過ごすことを許可され、待ちに待っていた試乗と、忘れられない体験をすることができたことは、生涯忘れ得ぬ喜びとなった。
今まで個人的に多くの自動車雑誌を読んできたつもりではあるが、パガーニ(ちゃんとした)のロードインプレッションとか、フルテストのような記事を読んだ記憶はほとんどない。広報車など用意されるはずもないクルマだし、こういうクルマは一台一台スペック(仕様)も違ったりする場合もあるので、普通のような記事を作ってもしょうがない、のかもしれないが、そんなことよりもまずはパガーニに乗るということそのものが希少な機会なのだからしょうがない、ともいえるだろう。そういう自動車は世の中に多く、パガーニだけではなく、ケーニグセグとか、そういう類のハイエンドスーパースポーツは世の中に結構多いが、どれも億円単位の価格だし、絶対数が少ないのだからやむを得ないこと、とも思える。こういうスーパースポーツの試乗記など、たいていの場合は、太っ腹のオーナーのご厚意によって成り立つものなのだ。
今回の記事でも、速さやその存在感などは分かったが、ハンドリングやブレーキングなどが、他のフェラーリとかランボルギーニといった、普通の?スーパースポーツと比べてどれだけすごいものなのかまでは記されていないことは残念である。それでもパガーニがちゃんと走るクルマであることはわかってよかった。耐久性とか信頼性はまったく未知数だし、エアコンが効くとか室内スペースのこともまったく不明だが、そんなものこういうクルマにとっては、まったく問題にならない部分であることはもちろんである。
Text: Jan Goetz
加筆:大林晃平
Photo: Jan Götze / AUTO BILD