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【新着情報】初テスト ホンダeのライバル? フィアット500e

2020年9月9日

フィアット500e 初試乗 その評価は?

新しいフィアット500eで、イタリア人は電気自動車の新しい旅に出る。新型フィアット『チンクエチェント』が欧州で500eの電動モデルがデビューした。我々は早速この小型電気自動車に試乗してみた。

電動フィアット500というアイデアは全く新しいものではない。
7年も前の2013年に、クライスラーの経営下におくフィアットは、ベストセラーの電動バージョンを改造した米国向けのフィアット500eを発表していた。
そして今、新しいフィアット500eにより、FCAはヨーロッパの電気自動車セグメントへの参入を果たした。
新しいフィアット500は、艶っぽい目(ヘッドライト)を除けば、寸法はわずかに大きくなっているものの、ビジュアル的には旧型と全く同じだ。
先代モデルの500と比較して、新しいプラットフォーム上のイタリアの小型車は、全長が5.6 センチ伸び、幅が6.1 センチ広くなっている。
先代モデルから引き継いだ部品は4%程度にとどまるとフィアットは述べている。

電気モーターは500eを強力にプッシュする

500eの電動モーターは118馬力と220Nmをフロントアクスルに送る。
500eは立ち上がりから、3.1秒で 50km/hにまで到達し、9.0秒で100km/hに到達する。
容量42kWhの、サムスンが供給するリチウムイオン電池は、車の床上のアクスルの間に配置され、総重量は約290kg増加して、1.3トンとなっている。
バッテリーの航続距離は少なくとも320キロメートルで、都市交通下では、さらに長くなるとのこと。
表示された消費量は14.7kWh/100kmだったので、少なくとも我々のテストでは、航続距離285kmでバッテリーの充電を使い切っていたことになる。
このモードのほかに、フィアット500eをほとんどブレーキなし(ワンペダル感覚)で走らせることができる走行プログラム「ノーマル」と「シェルパ」モードが備わっている。

シティスプリンター。500eは0から50km/hまでを3.1秒、100km/hまでを9秒で到達する。

500eは時々硬さを示す

しかし、最大航続距離を可能にするシェルパモードでは、最大77馬力、最高速度は80km/hとキャパシティは狭い。
そのため、すぐに飽きてしまいう。
11 kWの交流電流でバッテリーを充電すると4時間15分かかり、通常の家庭用3 kWでは、15時間という長い時間がかかる。
さらに85 kWで35分しかかからない直流による急速充電も利用できる。
快適性と安定性のバランスを重視しているが、新型500は先代よりもかなりタイトにチューニングされていて、場合によっては、サスペンションがややうるさく、段差が乗員に伝わってしまうこともある。
それを補うために、安定性が大幅に向上し、より多くのドライビングプレジャーが得られるようになっている。

先代モデルよりもタイト。新型500は快適性を重視しているが、必ずしも思惑通りに行っているとは限らない。

内装もグレードアップ

街中では、全長3.62メートルのフィアット500eは、9メートルの旋回半径のおかげだけでなく、大変使いやすい。
新型フィアット500eでは、特にインテリアが大幅に改良され、リサイクル素材やエコレザーが採用されている。
ダッシュボードはフラットで、ボタンの数も少ない。
7インチのインストルメントディスプレイに加えて、10.25インチのインフォテイメントスクリーンがあり、携帯電話を2台同時にペアリングすることも可能となっている。
さらに、今回試乗した34,900ユーロ(約443万円)の「500e」には、オートマチックハイビーム、ディスタンスクルーズコントロール、ワイヤレス充電、リアビューカメラ、歩行者・自転車検知機能付きの緊急ブレーキなどのディテールが装備されている。
室内空間は、わずかに増加した寸法のため、フロントの肩の高さで幅が特に顕著だが、リアのレッグルームにはほとんど変化はない。ここでは相変わらずの狭さのままだ。

ダッシュボードは整然としていて、操作は簡単。唯一、新型フィアットにはスペースが欠けている。

今までの500に足りないところをブラッシュアップ&アップデートし、格好良さとかわいさを保ったままフルモデルチェンジを受けたら、EVモデルだけになってしまっていて、
価格も500万円近くなってしまっていた…。
外観は500のかわいらしさを受け継いだまま、より洗練されたものとなっているし、明らかに質感の上がったダッシュボードまわりや、FIATのロゴを使用したシートなど、各部の仕上がりは大変魅力的だ。それなのに、今度の500は前のモデルのざっと2倍の価格。我が国ではもちろんのこと、イタリア本国でこの価格とEVだけというラインナップじゃあ暴動でも起きるんじゃないだろうか、と思えるほどの衝撃である。
 
もちろんフィアットの人たちだってそんなこと重々承知だろうし、なんらかの策は用意してあるのだろう、と考えたい。一番簡単な打開策を考えれば、この新型500のボデイに従来と同じツインエアのエンジンを積んだり、それをハイブリッド化させたりしたようなパワーユニットの追加だが、はたしてそういう手段をとるのだろうか?
もしそれ以外の解決策が、考えもしないことだったとしたら大変興味深いが、現在のままでは販売台数は限られるだろうし、かつてほどの成功を収めるかどうかは疑問である。
本当にクルマそのものの魅力が極めて高いだけに、価格とパワーユニットの限られることだけがちょっと残念である。

Text: Joaquim Oliveira
加筆:大林晃平
Photo: FCA Automobiles