【中古車比較テスト】ミドルクラスSUV メルセデスGLC対アウディQ5対BMW X3対ボルボXC60
2020年8月31日
メルセデスGLCとそのライバルは中古車としてどうなのだろう?メルセデスGLCは、中古車としても非常に堅実な車とされている。それでは、アウディやBMW、ボルボなどのプレミアムライバルはどうなのだろうか? それぞれの弱点などを公開!
2015年に導入されたGLCで、メルセデスはその角張った、やや威圧感を備えた先代GLKに取って代わった。新しいモデルは、意図的に、より多くの喜び与えられるように見えるデザインが採り入れられた。販売台数の面から言えば、GLKは、時代を超越したアウディQ5の常に後塵を拝していた。もちろん、メルセデスはその状況に甘んじているわけにはいかなかった。そのため、GLKの後継モデルは、視覚的にも技術的にも、テクノロジーの提供者であるCクラスに近いものになることが求められたのだった。
ミッドレンジSUVの中ではハイレベルなクオリティ
それはまさに巧妙な動きだった。均整のとれたデザインは、ターゲットとなる顧客層に即座に好評を博した。快適なシャシーチューニングと卓越した長期品質を備えたミッドレンジSUVは、本物のメルセデスへと変貌を遂げ、実際には、特異な、やや硬いサスペンションを持つGLKよりも、すべての面で優れていた。また、Cクラスで実証済みの技術は、GLCがテスト走行で最高のパフォーマンスを発揮することを可能にした。2019年には、ブレーメン工場で製造されたSUVは、我々のテストで「最高の中古車」というタイトルさえ獲得した。GLCより平均で欠陥が少ないライバル車種は存在しなかった。結局のところ、競合するアウディQ5、BMW X3、ボルボXC60は、GLCが発売されたときにはすでに5年以上の歳月を費やしていたが、いずれのモデルも品質が高く、技術的にもしっかりしていると評価されていた。
以下に、フォトギャラリーとともに、GLCとその競合他車の評価を弱点とともにお届けする。そして、これらのモデルの中古車を購入する際に注意すべき点を紹介する。
メルセデスGLC:
メルセデスGLCは中古車としても非常にしっかりしている。CクラスのSUV兄弟車として、プロポーションの良いこのモデルは、2015年9月に角張ったGLKに代わって登場した。GLKに比べて、視覚的にも見栄えが良くなっただけでなく、足回りも良いものになっている。スチールスプリングを標準装備していても、GLCはミッドレンジSUVの中では最上級の快適性を誇るモデルだ。オプションのエアサスペンションを装着することで、より一貫して凸凹をスムーズに吸収してくれる。全長4.65メートルのGLCは、1列目と2列目の両方に十分なスペースを確保している。ラゲッジコンパートメントは505リットル。後部座席を倒せば、1600リットルを自由に収納できまる。
2019年のフェイスリフトの前は、GLC 250 4MATICの2.0リッター4気筒ガソリンエンジンは211馬力、GLC 300 4MATICは245馬力を備えていた。一方で、圧縮着火エンジンは、2.1リッター4気筒の「GLC 220 d」(170馬力)と「GLC 250 d」(204馬力)の2台で、トップディーゼルの「GLC 350 d 4MATIC」は3.0リッターV6で、出力は258馬力だった。全輪駆動と9段オートマチックは、すべてのバージョンで標準装備されていた。
インテリアの仕上がりの質に文句を言うことはほとんどない。ただし、シート頬のアルティコ模造皮革を使用したシート表皮は、摩擦の跡が目立つことが多い。さらに、センターコンソールに使用されているピアノラッカーはかなり傷つきやすい。ハンドリングは少し面倒な部分もあり、慣れる必要がある。CクラスでもGLCでもよくある問題は、近未来的なタッチパッドの反応が数年後に鈍くなったり、最悪の場合は完全に故障したりすることだ。典型的なSUVの問題は、一部のサスペンション部品とタイヤがすぐに摩耗することだ。後者は部分的に偏って摩耗する。車重は、エンジンに応じて、1.7から2.1トンの間となる。それらを除けば、GLCを責めることはほとんどできない。昨年の我々のテストでも、最高の中古車に選ばれた。しかし、その高い信頼性と安定性が中古車市場での高値につながっていることも事実だ。走行距離100,000キロ未満の初期モデルは、約25,000ユーロ(約315万円)から市場に出回っている。
アウディQ5:
2008年にアウディは最終的にQ7に弟を追加した。2017年まで建てられたQ5の第一世代の使命は、成功を遂げていたBMW X3の領域で戦うことだった。技術的なコンポーネントのほとんどは、アウディA4クワトロから採用された。中古車市場では、より経済的なディーゼル車が明らかに市場を支配している。新規購入者のうち、ガソリンエンジンを選択した人はわずか20%に過ぎない。それは燃料消費の点から見れば不思議でもなんでもない。
2.0リッターターボチャージャー付き4気筒エンジンの211馬力バージョンは、リッターあたり8.3kmという燃費性能だ。排出ガス規制がますます厳しくなっていることを考えると、180~354馬力の4気筒と6気筒のガソリンエンジン(SQ5)は、少なくとも車をほとんど運転しない人にとっては、まだ良い選択かもしれないが、圧倒的に、最も普及しているのは2.0リッターTDIで、さまざまな出力バージョンが用意されていた。バージョンに応じて、エンジンは143と190馬力の間のパワーを提供した。ディーゼルモデルの2つの最も弱いバージョンはまた、前輪駆動で利用可能だったが、他のすべてのエンジンは四輪駆動が標準だった。洗練されたデザイン、吸引力、効率性を両立させるために、240、245、258馬力の3.0リッターディーゼルエンジンが用意されていた。
Q5では、エンジン、製造年、顧客の要求に応じて、アウディはマニュアル6速ギアボックス、7速DSG、または8速ティプトロニックのいずれかを装着した。幸いなことに、インゴルシュタットを拠点とする同社は、明確に構造化された直感的なコックピットに、非常に耐久性の高い素材を使用している。張り地やプラスチックは、通常、古くなってもまだきれいに見える。ミッドサイズSUVのトランクは540リットル、リアシートを倒した状態では1560リットルを収納できる。技術的には、初代Q5もまた、いくつかの問題を提起する。他のモデルでは特に安定していない7速DSGでさえ、確実にその仕事をしている。
1つだけ、我々のテスターたちから批判されることが多いのは、アクスルジョイントが、最大2.2トンの高重量に実際に対処することができないため、非常に速く摩耗することだ。年式が古いにもかかわらず、非常に頑丈なQ5は、まだまだお買い得ではない。2014年以降に製造された車で、走行距離が少ないディーゼル車は、約19,000ユーロ(約240万円)から購入できる。しかし、その上に高い維持費がかかる。例えば、昼間のランニングライトが故障した場合など、最大1000ユーロ(約12万7千円)の費用がかかる。
BMW X3:
ドイツのミッドサイズSUVの中でもパイオニア的存在だったX3。しかし、2013年に登場した初代は、岩のように硬いシャシーのため、多くの批判を受けた。一方、2014年から2017年に製造された後継車は、スポーティさを否定することなく、しなやかな足回りを実現している。
ラゲッジコンパートメントは550~1600リットルと平均以上の大きさだ。184、もしくはそれ以降の190馬力の2.0リッターターボディーゼルを搭載したxDrive 20dが一般的で、最も多く購入されている。圧縮着火エンジンは当初143馬力で、2014年からは140馬力と後輪駆動のsDrive 18dが登場した。ガソリンエンジンは184馬力(後輪駆動)または245馬力の2.0リッター4気筒エンジンと、258馬力または306馬力の3.0リッター直列6気筒エンジンがあった。ほとんどのパワーユニットは、有能な8速オートマチックトランスミッションに結合されていた。マニュアルギアボックスは、このクラスではむしろ不人気であり、したがって、比較的まれであり、やや安価である。シュトゥットガルトやインゴルシュタットのプレミアムライバルと同様に、2代目のX3も我々のテスターから高い評価を受けている。
ディーゼルエンジンは、煤粒子フィルターが目詰まりしてオイルが希釈されてしまう。ターボチャージャーの不良も珍しくない。全長4.65メートル、最大2トンの重さを誇るバイエルンも、上質な素材で裏打ちされ、さまざまな快適性のエクストラを提供していた。その結果、元X5の顧客にその価値を納得させることさえできたという。中古ではX3の価値は安定している。装備が充実している一方、ベーシックモデルは、かなり手頃な価格で、バーゲンハンターの喜びになることができる。低走行距離で2014年以降に造られたX3は、18,000ユーロ(約225万円)以下で市場に出回っている。
ボルボXC60:
もちろん、高品質のミッドサイズSUVの開発にこだわっているのはドイツ人だけではない。2008年から2017年まで提供された第一世代のボルボXC60であっても、そのブランド名通りに根強い人気を維持しながら生き続けており、問題を起こすこともほとんどない。2014年には、デザインがわずかに近代化され、細部の品質が再び向上した控えめなフェイスリフトさえあった。
当初から、4.53メートルの長さのスウェーデン車の利点は、快適なシート、模範的な遮音性、端正な仕上がりなどだった。しかし、トランクは495リットルから1455リットルと比較的小さい。シャシーは、その仕事を適切に行い、また、より活発なペースを可能にしている。しかし、快適性という点では、他の車のほうが先行している。
先代のXC60のエンジンポートフォリオには普通のモデルとして2.0リッターターボチャージドガソリンエンジンが含まれており、そのデータシートは203と306馬力の間でリストアップされている。誰もが望んでいた、3.2リッター直列6気筒は、238またはそれ以降の243馬力が用意された。2012年までは285馬力の3.0リッター6気筒もあった。2015年からはエントリーレベルのディーゼルが2リッター、4気筒、150~190馬力となった。それ以前は、圧縮着火エンジンは、ブランドの典型的な過給5気筒エンジンがほとんどだった。これらは排気量2.0または2.4リッターで、136~220馬力のパワースペクトルをカバーしていた。その後廃止されたエンジンは、そのパワーと滑らかな走りが印象的だった。パワーの伝達は、マニュアルの6速トランスミッションか、同様に6段のオートマチックトランスミッションのどちらかで行われる。2015年からは8速オートマチックもあった。
より強力なエンジンには、四輪駆動が標準装備されていた。技術的には、初代XC60は非常に安定していると考えられている。10万キロ以上のAUTO BILD耐久テストを不備なくクリアし、最後には最高点を獲得した。ほぼ全ての項目で最高の部類に入る。ただ、リアブレーキの摩耗が平均よりも早い。サビも問題だが、表面的な問題でしかない。初期の5気筒ディーゼルはシリンダーヘッドガスケットに問題があることがある。状態の良いXC60は、約18000ユーロ(約225万円)から購入可能だ。
狙い目はXC60
あれ、この間こんな中古車の比較テスト、やっていませんでしたっけ?と思いながら、よくよく考えてみたら、ひとつ下のセグメントの中古SUVの比較テストであった。今やどんなセグメントでも、比較テストが成立するほどSUVは覚えきれないほどのバリエーションを持つ時代になっているのだ。このテストはドイツにおける価格や人気などの評価などをまとめてあるので、その面では補足が必要だろう。まずボルボは、現在大人気のXC60ではなく、正直言って人気が出る前のモデルということもあり、わが国ではかなり激安な価格で売られていることも多い。それでも大柄な実用車としては魅力的だし、割安でディーゼルのモデルが売られてもいるので、なかなか良いのではないかと思う。大型犬と気軽に暮らすような感じで、個人的には(ボルボが安ければ)旧モデルであったとしても積極的にXCを選びたい。
ドイツ3メーカーのSUVも、日本の市場ではそれほど高価な価格ではない、というのが正直なところで、どれか欲しいモデルがあって、その価格や程度などが適当だったら、どれを買っても後悔はしないと思う。BMWにはBMWらしい部分があり、アウディもメルセデスもそれぞれの魅力を出そうと頑張っているし、どれに乗っても間違いではないはずだ。安全装備だけは日進月歩なので、新しいモデルのほうが絶対的に優れているとはいえるが、走りの面ではどれも甲乙つけがたいのではないか。
個人的には選ぶならばディーゼルエンジン一択だが(アウディにディーゼルエンジンが追加されたのはここ数年なので、このころのQ5では選べないのが残念)、ガソリンかディーゼルか、それも買う人の価値観で選んでいいと思う。SUVを買ってキャンプに行ったり、実用でガンガン使ったりするには、中古車のほうが気を使わずに乗れるのではないか? そう考えると、これからたくさん市場に出てくるはずのちょっと古いSUV、なかなかいいチョイスなのではないかと思う。あまり神経質にならず、キャンプ道具のひとつとして好きな色や形の一台を買う、くらいの気持ちで選ぶのが気楽でよいと思う。
Text: Elias Holdenried
加筆:大林晃平
Photo: Thomas Ruddies / AUTO BILD