【このクルマなんぼ?】え? このスバル インプレッサ 新車のランボルギーニより高いの?
2020年7月25日
スバル インプレッサ22B STI(1998): 価格、購入
このスバル インプレッサは新車のランボルギーニより高い! すでに20年以上経過するが、280馬力のこの個体は本当に希少な1台だ。この中古のインプレッサ22B STIが今売りに出されている。しかし、その価格は正気とは思えないものだ!
特にJDM(Japanese domestic market=日本国内市場)モデルのファンはこのオファーを見逃すべきではない。
あるいはそうでない人も、現在、英国の自動車ディーラー、「Appreciating Classics」で販売されているこの車は、非常に特別な車なので、少なくとも興味をそそられるのではないだろうか。
ユニークなブルーのペイントワーク(WRブルー)、象徴的な黄金のホイール、大きなリアウィング、そしてフロントエプロンのSTIマークは、これが伝説のスバル インプレッサ22B STIの1台であることに疑いの余地ことを証明している。
1998年にスバルの世界ラリー選手権3連覇を記念して生産されたスポーティなスペシャルモデルで、生産台数は424台。
日本向けが400台、イギリスが16台、オーストラリアが5台、伝説のプロトタイプが3台というまさに希少なモデルだ!
実質的にほぼ新車のような状態だ
このインプレッサ22B STIは、シリーズナンバー309であり、現存している個体中、おそらく最も保存状態の良い個体といえるだろう。
その歴史はクラシックカーファンにとっては夢のようなものだ。
5速マニュアルトランスミッション、右側にステアリングホイールを装備した日本仕様のオリジナルモデルだからである。
イギリスの愛好家が購入したこのスバルは、20年以上もの間、外部からの影響をほとんど受けずに大切に保管されていたものだった。
納車以来、このワイドボディクーペはわずか436キロしか走っていない。
つまり、このクルマは実質的に22年前の新車のままであり、リアルタイムのタイムカプセルなのだ。
それはボディワークにもインテリアにも表れている。
このスバル インプレッサ22B STIは、文字通り完璧な状態を保っている。
これもまた、この特別な車に与えられた包括的なケアとメンテナンスのおかげだ。「Appreciating Classics」によって、販売前の完全な点検サービスも施されている。
タイミングベルト、プーリー、ウォーターポンプ、すべての消耗品とフィルターが交換されている。さらに特別なクラシックカーを専門とする同社は、オリジナルの部品のみを使用したことを保証している。
価格の面では、スバルはスーパースポーツカーの仲間入りを果たしている
2.2リッターのターボチャージャーを搭載した4気筒ボクサーエンジンが、フルタイム四輪駆動の助けを借りて、1.3トン近いインプレッサを残忍に前進させる。
280馬力、363Nm(@3200rpm)を発揮して、息を呑むような加速を実現し、0から100km/hにわずか4.2秒後で到達する。最高速度は238km/h。
パフォーマンスの面では、このエクスクルーシブなスバルは、もはや現代の高性能モデルにこそ太刀打ちできないものの、価格の面では、スーパースポーツカーに対して堂々たる勝負を挑む。
現在市場に出回っている新車の価格は、マクラーレン720S(247,350 ユーロ=約3,091万円~)、ポルシェ GT2 RS(285,220ユーロ=約3565万円~)、ランボルギーニ ウラカン ペルフォルマンテ(232,098 ユーロ=約2901万円~)となっているが、この、ほぼ中古のスバル インプレッサ22B STIは、それらすべてを打ち負かす。
売り手は、インプレッサに295,000英国ポンド(約4130万円)の価格を望んでいる!!!
まあ、22Bが普通の車ではないことは認めるが、それにしても驚きだ。
日本では、WRCで3連覇を達成した「インプレッサWRCマシン」のイメージを忠実に再現したロードモデルのとして、インプレッサ22B STIは、1998年に400台限定で発売された。販売価格は500万円。当時、カタログモデルのWRXタイプR STIバージョンIVでも299.9万円だったことを考えれば、破格な価格設定だということがわかる。
ところが、希少性と高スペックが話題になり、発売後わずか2日間で完売。
20年が経過した現在でも伝説のモデルとして、マニアの間での人気は高く、中古車市場で見かける機会も少ない。
走行距離の少ない無修復歴車はプレミアム価格で取引される状況だが、前述の個体の値段が4000万円以上と聞いて、腰を抜かしそうになった。それだけの値打ちがあるのかと正直驚いている。
その上で、どっちがインプレッサでどっちがレボーグなのか、あるいはどれがG4で、S4で、B4で、WRXなのか、その判別がさっぱりわからないほど似通った現在のスバルのラインナップを見ながら、今のスバルにとって一番足りないものは何かを考えてみた。
もちろん真っ先に頭に浮かぶのは、WRCという言葉ではある。だが、WRCに復帰しろとか、もっとラリーファンを大切にしろと私のような門外漢がいうのは簡単だが、それがどれほどの投資を必要とし、難しいことなのかも想像の範疇を超えることなのだろう。
だから簡単にWRCへ復帰、復帰!とは言えないかもしれないが、それでも今回のインプレッサの事例を見ると、やはりイメージというのは大切で、これからも決してないがしろにすべきではない重要な、それこそレガシーであることがわかる。
今回の一件は特別すぎる例であり、いくらなんでもそりゃあ高すぎるでしょう、という価格ではあるが、それでもスバルとWRCという、一朝一夕では構築することのできない、これぞブランドバリューというかブランドイメージというものがいかに重要なのかはわかろう。
三菱ランサー エヴォリューションもそうだが、インプレッサの持っている性能と、その歴史によって構築されたイメージは、アメリカでもヨーロッパでもアジア諸国でも大変強く輝かしい。三菱自動車がヘロヘロの状態になり、スバルもこれから歩む方向が難しくなっている現在であるからこそ、もう一度ラリーで戦う姿を要望するのは無理な注文なのだろうか。
それでも、あの時ほどのイメージをもう一度最初から構築することなど不可能に近いのだから、輝きが失われてしまわないうちになんとかするべきだと強く思う。
Text: Julian Rabe
加筆:大林晃平