ロードスター一騎打ち マツダ ロードスター対BMW Z4 果たして勝者は?
2020年7月23日
BMW Z4対マツダMX-5(ロードスター): テスト、エンジン、価格、ロードスター
ロードスター対決。マツダMX-5(以下、ロードスターと称す)はBMW Z4相手に簡単に勝利するのだろうか?
2リッター、200馬力以下で、オープンの楽しみは十分に備わっているか? 廉価なロードスタークラシックであるマツダ ロードスターは、より高価なベーシックモデルのBMW Z4を凌駕するだろうか? テストしてみた。
マツダはロードスターの価格を引き上げ、132馬力のモデルの基本価格は29,234ユーロ(約365万円)となり、以前は28,690ユーロ(約358万円)から利用可能であった184馬力バージョンは現在少なくとも33,134ユーロ(約414万円)の費用がかかるようになった。
マツダは、より広範な標準装備で価格上昇を正当化する。
しかし、我々の多くが、本当に可能な限り軽量で純粋であることを望んでいるロードスターにこれ以上のものを必要としているだろうか?
価格の上昇につれて、その求められるところも当然高くなり、マツダ ロードスター2.0は、BMW Z4との比較を余儀なくされることになった。
具体的には、ベーシックモデルの197馬力Z4は、マニュアルトランスミッション仕様で40,941ユーロ(約511万円)から利用可能だ。
しかし、我々がテストカー(広報車)の貸し出しを打診したところ、BMWは、彼らのテストカーフリートには、オートマチック仕様のZ4しかないとの返事があった。
なんだかいきなり拍子抜けな話である。
残念!
これではちゃんとした比較テストにならないではないか!!
日常のお供としては、Z4の方が優れている
ファブリック製トップを開ける作業は、マツダは2~3秒の手作業で完了するが、BMWではボタンを押しながら12秒で、完全自動で行われる。
カントリーサイドへの旅で、我々はすぐに、その幅が1.86メートルのZ4は、原則として、本来ロードスターの生息地であるカントリーロードには広すぎることに気づく。
幅が1.74メートルもないMX-5の方が、対向車線のある道路をはるかにスムーズに駆け抜けていく。
一方で、BMWは室内の狭いマツダよりも多くのスペースを提供し、ゆったりとしたトランクを備えている。
田舎道(カントリーロード)では、Z4はシャープすぎない正確なステアリングと、敏感に反応し、豊かな減衰力を持つシャシーが、ボディを常に落ち着かせていることが印象的だった。
マツダ ロードスターのそれとはかなり異なる。
直接比較してみると、重厚なボディの動きが印象的で、同じスピードで走っているBMWと比較しても、より激しいドライビング体験を与えてくれる。
ちなみにこのマツダ ロードスターには、ビルシュタイン製ダンパーを備えたオプションのスポーツパッケージが搭載されていた。
MX-5は、ドライビングを通じて楽しい気分にさせてくれる
そのため、マツダ ロードスターの中では常に実際よりも速く感じられた。
Z4が地味にペースを上げているのに対し、MX-5はコース上をフルパワーで走り続けることが必須になる。
ガタガタする上部構造がリアをオーバーステア気味にさせ、クローズドロードでは楽しいが、公道ではその挙動は必ずしも好ましいとは言えない。
ESPは常にリアエンドを確実にキャッチしているが、制御が介入すると理想的なラインを確保するのが難しくなる。
一方、クルージング時には、サスペンションのレスポンスの悪さが邪魔をして、段差で跳ね返える。
より細めのプログレッシブなスプリングがマツダ ロードスターには適しているのではないかと思える。さらにソフトなゴムコンパウンドのタイヤを装着すれば、ハンドリングはずっと安定するだろう。
BMWが道路の左右いっぱいになるほどの車幅を備えているという事実は、重量がマツダ ロードスターよりも400キロもの重量があることにも影響していると思われる。これにより、BMWのパワーウェイトレシオも大幅に低下している。
ターボと効率的な8速コンバーターでその過重さを補うことができるのだろうか。
ローンチコントロールのおかげで、フルブースト圧とソフトなミシュラン製スーパースポーツの完璧なグリップのおかげで、スタートから滑らかに飛び出すことができ、一方で自動トランスミッションシステムは、完璧なギアチェンジを提供する。
悪くない。
0から100km/hまでのスプリントタイムは6.2秒で、このテストカーはBMWのスペック表にある数値をコンマ4秒も下回っている。
そのギアチェンジで、それは本当の喜びとなる。
エンジンの特性には違いがある
100km/hを超えると、低トルクでありながらはるかに軽いマツダ ロードスターは、BMWをわずかに凌駕することに成功する。
ギアの数が異なるため、牽引力の値はほとんど比較できないものの、それぞれに個性を発揮して、そこに空力と軽さが相まってうまく車を引っ張ってくれる。
一方BMWの小型ターボチャージャーは素早く反応し、勇敢に体重を支え、ナローブレストでありながらスロットルで自発的に作動するパワーユニットは、アッパーギアでも、軽量なマツダ ロードスターを凌いで元気に前に押し出していく。だがやはり絶対的な重さだけは消すことができない。
ブレーキの章ではBMWが明らかに勝利を収めている。
100km/h時からの33mの完全制動距離で、Z4はマツダに約2mの差をつけている。またタッチも剛性感あふれるものだ。
しかし、それはいずれも大きな問題ではない。
全体的なドライビングインプレッションやフィーリング、価格を含めた条件面で、マツダは最終的に勝者となる。
【フォトギャラリーと結論】
結論:
勝者の理由は2つある、と思う。
ひとつは軽さであり、もう一つは絶対的な速さを求めなかったこと、なのではないだろうか。
軽い、ということは大変大切な要素であるし、それがロードスターのような車であれば言うまでもなく、それそのものが大きな売りであり魅力であるといえる。
Z4はマツダ ロードスターよりもはるかにパワフルではあるが、これだけの車輛重量の差が存在しているのであれば、そんなものなど帳消しになってしまうし、それ以上にハンドリングでもブレーキングの面でもネガティブな要素に転じてしまうことは言うまでもない。
そして一番大切なことは、マツダ ロードスターは日常的な速度域での気持ちよさを狙って開発されていることで、その面だけでも、Z4の目指しているベクトルとは大きく異なっている。オープン2シーターにとって何が一番必要なのか? それは気持ちよく、風を感じながら大空と一体になりながら走る快感なのではないかと思う。
絶対的な速度ではなく、どれだけ日常の生活の中で気持ちよさを味わることができるか、そこにこそロードスターの魅力と解答が存在しているはずだ。
もちろんマツダ ロードスターは完璧ではない。乗るたびに気になるのは(右ハンドルモデル、つまり日本で発売されているモデルでは)、運転席の足元に排気管をクリアするためと思われる、大変大きなでっぱりがあり、これにより乗車中における左足の自由度は大幅に制限されている。
とってつけたようなドリンクホルダーの無粋な処理も、身のまわりのちょっとしたお財布とかスマートフォンを置いておく場所にも困る内装の設定も、もう少しなんとかならなかったものか、とも思う。
だが、そういった点に関しても開発者に、「軽く小さく作りたかったから仕方ないんですよ」、などと言われてしまえば、仕方ないか、と引き下がらざるをえない気持ちにもなる。それほど小さく軽いことは正義なのだから。
一方のZ4は、ライトウエイト2シーターオープン、というよりも、プロムナードカーというか、マツダ ロードスターよりもずっとラグジュアリーで快適だ。そしてビバリーヒルズあたりの買い物用高級サンダル、みたいな使い方をされても、それなりに当てはまるほど内装も各種電子デバイスなども高級で充実している。やはりマツダ ロードスターの狙っている世界と、Z4の描いている世界はかなり違う。だからこそ、メーカーの広報部が、力を入れて宣伝してもらうために用意するモデルがATのみの準備であり、内装もタンの皮内装に豪華オーディオのついたバージョンだったりするわけである。
やはりZ4は、エンジンのゆとりを感じつつ、逆回転のタコメーターの存在など無視して、オートマチックで安楽に走っている時が一番快適なのだろう。一方のマツダ ロードスターは、毎日の生活のちょっとした移動にも、MTをコクコクと操りながら、身の丈に合った速度で四季を感じながら積極的にアンダーパワーを補いながら運転する、そんな使い方の中にこそ快さが存在しているように思えるのである。
つまり、2台は違う方向を狙って開発されたクルマなのだ。
Text: Florian Neher
加筆:大林晃平
Photo: Tobias Kempe / AUTO BILD