え?そんな値段で買えるの 海外オークション ドイツ製クラシックカー編
2020年6月29日
「このクルマいくら?」その1: ドイツ製クラシックカー
英国のCatawikiというオークションサイトから見つけた興味ある出展車についての情報を我々なりの感想を添えてお届けする。
ドイツ車のイメージ? わたしにとっては質実剛健の一言に尽きる。ドイツ車のクラシックカー? 正直ドイツ車からはクラシックカーというイメージは湧いてこない。ドイツ車は、今も昔も、職人によって精巧に作られた、出来の素晴らしい高級な工業製品というイメージが強いからだ。ちなみに、みなさんがドイツ車のクラシックカーと聞いて、どのクルマを想像するだろうか? メルセデスベンツSSKとかBMW328とかを思い浮かべても、クラシックカーという感じがしないと思うのだが、どうだろうか?
メルセデスベンツ380SLロードスター(1982):
想定落札価格: 19000~21000ポンド(約265~290万円) 走行距離: 171,985km
ベンツのロードスターと言えば、このイメージでした。20世紀は遠きにありて想うもの。この写真の個体はUSライトと5マイルバンパーで醜い限り、だが、オリジナルのR107 は、もはやシンプルでコンパクトでさえある。そういえばアメリカのTV人気ドラマ「探偵ハート&ハート」で、ロバート ワーグナー演じる大富豪ジョナサン ハートがベルエアで乗っていたのがこのSL。つまりは、そういうクルマなのです。
ポルシェ911SC 3.0クーペ(1982):
想定落札価格: 42000~46500ポンド(約585~650万円) 走行距離: 177,000km
思い切り過走行もできるクルマではあるが、日本だったらこんな価格では買えない? もはや40年経過する911SCだが、911らしい911というのはこういうクルマだろう。たしか「はちみつをかき回すようなシフトフィール」とか「冷えたバターに熱いナイフ」とか、インプレッションにそういう文学的表現の使われていた時代の911である。
BMW 2002L(1975):
想定落札価格: 19500~21500ポンド(約273~300万円) 走行距離: 101,000km
90年代の初めころまでは、結構走ってたのに、最近とんと見かけなくなったクルマの1台。02が300万円もするのか、まあそんなものなのかも。
これからすると今のBMWはいかに豪華で大きく、そしてラグジュアリーなことだろう。シンプルなドアミラーひとつとっても、この時代のドイツ車らしい。
ポルシェ928S(1981):
想定落札価格: 18500~20500ポンド(約260~290万円) 走行距離: 88,890km
バイザッハアクスルとか、メルセデス製の4ATなどなど、ハイテクでセンセーショナルだった、デビューした当時。フロントエンジンポルシェは不人気であることは確かだが、BMW 02よりこっちのほうが安いとは…。といってもうかつに手を出すと修理費は目の玉が飛び出る金額。それでも今見ても少しも古くないのは、さすがというしかない。
VW T1(1967):
想定落札価格: 31900~35500ポンド(約445~497万円) 走行距離: 58,000km
いつ見てもユニークでキュート。でも約500万円。お願いだから、こういう洒落たフォルクスワーゲン、もう一度、早く売り出してほしい。長年、売る売る詐欺(?)を続けているが、もうそろそろ本当に発売してもいいんじゃないだろうか?
メルセデスベンツ280SL(1976):
想定落札価格: 10000~15000ポンド(約140~210万円) 走行距離: 83,500km
当時標準だったボディカラー同色のホイールも素敵。210万円、なかなかリーズナブル。惜しいのは前後のバンパーと、ノンオリジナルのホイールアーチ、そしてこれも交換して変な角度になってしまっているラジオアンテナ。ここだけは元に戻したい。
VWケーファー(1963):
想定落札価格: 10500~12500ポンド(約147~175万円) 走行距離: 23,600km
車好き少年なら、必ずミニカーを1台は買ったであろう、ビートル。走行距離たったの23,600キロ! 程度もよさそう。その昔、良家のお嬢様の家にあったのは、VWビートルだった(たいていは、その家のお母さまが運転していたものだった)。
そういえば、小学校のクラスで男子全員の憧れだった「まややん」の家にも、水色のビートルが停まっていたっけ…。
BMW 325i(1986):
想定落札価格: 11000~12500ポンド(約150~175万円) 走行距離: 207,000km
あー六本木あたりを走ってたなあ。20万キロも走っているし、そろそろ出がらしになってしまっているかもしれない。ホロなどもおそらく限界なので、梅雨の季節と台風にはお気を付けください。それにしても、このBBSのホイール、懐かしいなぁ。
メルセデスベンツGD300(1982):
想定落札価格: 6950~7650ポンド(約97~107万円) 走行距離: 不明
どうしてもこの頃のゲレンデヴァーゲンのほうがシンプルで、今の満艦飾のゲレンデヴァーゲンよりもずっと格好いい。タイアもホイールも、こういうサイズこそ本物なのである。ちょっと欲しいなって思うのは私だけ?
メルセデスベンツ450SL(1974):
想定落札価格: 15500~18000ポンド(約217~250万円) 走行距離: 187,314km
本当にこの頃のベンツは高級車という名にふさわしい。前述の2台よりもオリジナル度は高いが、走行距離はもうじき20万キロなので、ある程度の覚悟は必要。この写真の、オリジナルアルミホイールはものすごい手間のかかったもので、おそらく今のメルセデスベンツのアルミホイールの3倍以上の価値があるはず。
VWゴルフカブリオレ(1985):
想定落札価格: 8200~9200ポンド(約115~130万円) 走行距離: 91,500km
今や希少なゴルフ1のカブリオレ。好きな人にはたまらないアイテムだろう。一時期南仏で一番人気のあるクルマであったが、言ってみれば、買い物に行くためのお洒落で気楽なサンダルのような車なのだろう。こんなシャレた感じの自動車、今はなくなっちゃったなぁ。最終バージョンの、グリーンとかワインレッドのカブリオレは、今でも目の玉が飛び出るような価格で売買されている。
ポルシェ924(1980):
想定落札価格: 13500~15000ポンド(約189~210万円) 走行距離: 130,202km
純粋主義者の人々からすれば、FRポルシェは異端かもしれないが、優れた性能を備えたクルマだった。924も944も底値だった時代を超え、廃車になるのを免れた個体は、そこそこの値段がついて売買されている。実用的だし、カイエンやパナメーラに乗るよりも100倍カッコいいかもー。
ポルシェ308(1958):
想定落札価格: 8800~9800ポンド(約120~135万円) 走行距離: 1,000km
ポルシェが作ったっていうだけで、トラクターまでなんとなくカッコよく見えるのは私だけだろうか? 日本でもヰセキが取りあつかっていた時代があったが、真のポルシェコレクターなら、ぜひ購入して356とか911とか、904の隣に並べるべき。
本当にこの値段ならどこかの自動車博物館さんが買うべきでは? 余計なお世話ながら…。
BMW520 E12(1973):
想定落札価格: 4500~5000ポンド(約63~70万円) 走行距離: 126,337km
あービーエムらしい。このかたち、この色。この頃はグリルも上品。黄色いライトも当時のヨーロッパらしいし、このシンプルな美しさこそBMWでしょう。
今のBMWの3分の1くらいの大きさのキドニーグリル。この大きさこそが適正サイズです。
VWトランスポーターT2ピックアップ(1973):
想定落札価格: 14000~15500ポンド(約195~215万円) 走行距離: 75,000km
T1、T2は今見てもホントにカッコいい。これぞアイコン。でも人気が高い分、価格もそれなり。都内のお洒落なお店とかの車にも最適だが、エンジンがかからなくとも慌てず対処できる度量と技術が必要。でも本当にカラーリングも素敵だ。
ポルシェ944(1984):
想定落札価格: 7600~8400ポンド(約105~115万円) 走行距離: 131,500km
フロントエンジンポルシェの最後は4気筒バージョンの944。これもザ80年代。写真の車は距離こそ多いものの、程度は良さそうだ(黒いドアプロテクターは残念)。
妙にほっとしてしまうシンプルなアルミホイールも高得点。
メルセデスベンツ450SLC(1976):
想定落札価格: 7700~8500ポンド(約107~120万円) 走行距離: 317,930km
これぞメルセデスベンツ。この威風堂々たるたたずまい。そしてこの値段。45年経っていても、素材は良いし、整備すればまだまだ問題なく走るはず。この頃のメルセデスベンツとはそういうクルマなのだから。
450SLCはSLよりもさらに高貴で優美である。こういうのを気兼ねなく、さらっと毎日颯爽と乗りまわしてみたいなと素直に思う。
TEXT: 田仏 呑 & 大林晃平
Photo: Catawiki