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え? そんな値段で買えるの 海外オークション イタリア製クラシックカー編

2020年7月4日

「このクルマいくら?」その1: イタリア製クラシックカー

英国のCatawikiというオークションサイトから見つけた興味ある出展車についての情報を我々なりの感想を添えてお届けする。

イタリア車のクラシックカーと聞いて、どういうイメージが湧くだろうか? 即座に湧いてくるのは、カッコいい、美しい、華麗、エレガント、そしてスポーティではないだろうか。
そして、その次に当然のように浮かんでくるのは、クルマの状態への心配と維持の大変さだ。ひどく劣化していないだろうか、錆びだらけではないだろうか、レストアはどのくらい必要だろうか、メンテとケアにはいくらお金がかかるだろうか、などなど…だ。どれも最善を神に祈るしかない(笑)。

フェラーリ365GT 2+2(1968):

227000~250000ポンド(約3178~3500万円) 走行距離: 83km
走行距離たったの83キロ!!!??? ありえねえ。ミニカーのように飾ってあったのかな? というかコンディションとか大丈夫かと逆に心配になる。
同じ365の付いたデイトナや365GT BBとかに比べるとやや地味な感じはするが、ピニンファリーナらしいデザインだ。それでもさすがはフェラーリ、一桁違う価格だ。
本当は一番豪華なフェラーリの一台。コモ湖に別荘を持っていて、1年に1回だけグルっとその辺を軽く周遊する、そんな使い方をする方にピッタリです。

アルファロメオRZ(1995):

100000~113500ポンド(約1400~1580万円) 走行距離: 49,041km
ほう、1千5百万円。今やこのくらいの値段で取引されているのだろうか。1千5百万円のRZ、考えちゃいますね。
希少だとは思うけれども、SZにオープントップは似合わないと当時から個人的には思っていた。今でもRZはスポーツカーでも、プロムナードカー?でもなく、微妙な立ち位置のクルマである、と思う。やはり選ぶならSZではないだろうか?

アルファロメオ2600トゥリング(1964):

114000~126000ポンド(約1596~1764万円) 走行距離: 100,000km
名門カロッツェリア、トゥリングのデザインしたアルファロメオ。それだけで貴重で希少だ。それに10万キロも走っているから、クルマとしても当たりだ(はずれではない)。
だがこれ以上無理に距離を延ばすようなことは、しないほうがいいかもしれない。

アルファロメオSZ(1992):

77000~85000ポンド(約1078~1190万円) 走行距離: 58,032km
アルファが155で前輪駆動に移行した後で、後輪駆動モデルだった75をベースにザガートが作ったSZ、アルフィスタたちに熱狂的に迎え入れられた。インパクトの強いデザインはザガートの真骨頂で、傑作だ。そうか、いまでも1千万円以上するのか。感慨深いものがある。だがこんなアルファロメオはもう永遠に出ない、そう考えれば妥当な価格でもある。

アルファロメオ ジュリエッタ スプリント スペチアーレ1.3(1962):

126500~142500ポンド(約1770~1995万円) 走行距離: 976km
また出た。走行距離たったの976キロ! これまた貴重で希少な1台だ。ジュリエッタの中では一番スポーティというかレーシーなモデルと言ってよいのではないだろうか。
もし購入したのであれば、ガレージにしまい込まず、ぜひ走らせてあげてほしい、と切に思う。走るために生まれてきたのだから。

アルファロメオモントリオール(1971):
92000~102000ポンド(約1288~1428万円) 走行距離: 23,783km
アルファロメオにモントリオール? なんで? 答えは単純です。モントリオール万博に出展されたからです。
デザインは巨匠マルチェロ ガンディー二のゴッドハンドによるものだ。でもアルフィスタからの熱烈な歓迎があったかどうかといえばビミョーだ。ボディカラーもレッドより、このグリーンやイエローが多かったイメージがある。そして今やモントリオールの程度の良いものには、めったに出会えないだろう。

手ごろな値段のものを紹介しようと思ったが、ここまではすべて高い。程度の良いイタ車のクラシックカーはおのずと高くなってしまいがちなのだろうか。

アルファロメオ ジュリアGTV2000(1971):

32000~35600ポンド(約448~498万円) 走行距離: 88,998km
これまた今でも人気の高いベルトーネデザインのアルファロメオだ。多くのアルフェスタが好きなアルファロメオとはこういうクルマを言うのだろうと思う。あたりまではあるが、この車に2020年に乗っている人は、熱烈なエンスージャストだし、生粋のアルフィスタである。

フェラーリGTBターボ(1989):

72000~80000ポンド(約1008~1120万円) 走行距離: 41,000km
1120万円か、安! とつい思ってしまう私は感覚がマヒしているのか、いつの間にか「フェラーリとは高いもの」という観念に毒されてしまったのか。F1で得たノウハウをベースに、フェラーリの2リッターV8ターボエンジンを改良し、低い回転数で高い最高トルクを発揮するパワフルなモデルに変身した。
80年代最後のV8モデルだ。このターボエンジンに関しては否定する人も多いが、フェラーリ史上でも、もっともバランスがとれ、美しいモデルであることに異議はない。ビタローニとかクロモドーラという単語にドキドキする人におすすめ。

アルファロメオスパイダーヴェローチェ(1978):

22000~24500ポンド(約308~343万円) 走行距離: 75,000km
世界中の多くの人に愛されたアルファスパイダーのヴェローチェ。日本でも多くの有名人やスターたちが愛用していたオシャレなアルファ製オープントップスポーツカーだ。アルファスパイダーだけは今でも時々街中で見かける。そのたびに頬が緩む。
海岸通りをさらっと流すのに、これほど似合うクルマはない。ちゃんと整備して、素敵な女性を乗せて、気楽に使いましょう。

ランチア フルヴィア クーペ1.3S(1976):

14000~15500ポンド(約196~217万円) 走行距離: 26,301km
アルファロメオ ジュリアかランチア フルヴィアかと言われれば、ためらいなく、わたしはフルヴィアを選ぶ。今でも憧れの1台だ。特にこのクーペ、なんとも美しくエレガントだ。
2003年のフランクフルトショーで見た新型ランチア フルヴィアのプロトタイプはわたしの胸をときめかせ、生産化されたら、絶対に買おうと思っていたが、残念ながら、プロトタイプのままに終わった。もう一度だけ、ランチアはこういうエレガントな自動車を世の中に出してくれないものだろうか。

アルファロメオ アルフェッタGTV2.0(1980):

15400~16950ポンド(約215~237万円) 走行距離: 71,000km
小さなアルファを意味するアルフェッタは、1750の後継モデルで、このクルマは2000GTVの後期型だ。ドディオンアクスルを採用したシャシーと50:50の理想的な前後重量配分、シャープなハンドリング、良好な乗り心地で人気を博した。
その一方で、作りが雑で、故障やトラブル、そして錆の多いクルマとしても名をはせた。
特に錆は避けられない大問題で、床までグズグズになり「床レスGT」になってしまうこともあった。
どうでもいいことだが、このクルマも007のボンドカー(?)として映画に登場しています。何作品目で、どのシーンでしょうか?
★答えは文末にあります。

ランチア ベータ モンテカルロ(1976):

18700~21000ポンド(約260~294万円) 走行距離: 60,000km
ベータ モンテカルロ、すっごい人気ありましたよね、70年代の終わりから80年代の初めにかけて。性能的にはそんなにすごいクルマじゃないけど、その風貌から、スーパーカーのように思われてました。ランチアのブランドイメージもストラトスとかのおかげで、そのころまではよかったし。デザインも今見るとシンプルでバランスが良いし、どことなくエレガントを感じる部分も多い。ランチアはいつの時代も大人のクルマ、なのだと思う。

アルファロメオ2000GTヴェローチェ(1975):

38000~42000ポンド(約532~588万円) 走行距離: 1,000km
はい、走行距離たったの1,000キロです。レースにのみ使われていたのか、見た目、コンディションもすごく良さそうな個体だ。1750も好きだったが、2000GTも好きだ。
2020年の現在となってはキャブレター調整も一苦労だろうが、生粋のアルフィスタでこの車を嫌いな人はいないだろう。復活ミッレミリアに出るための、フリーパスポートとして、いかがでしょうか?

ランチア テーマ リムジン(1988):

16500~19500ポンド(約230~273万円) 走行距離: 98,000km
知る人ぞ知る、テーマのリムジン。わずか26台作られたうちの1台だ。
テーマ(の初期モデル)は、世界で一番美しい4ドアセダンだと、そう今でも思う。だが……、このリムジンはいけません。デザインの黄金比がグズグズに崩れてしまっていて、これじゃあジョルジョット ジウジアーロ泣いちゃいます。
なんだか昔に存在した、コロナ スーパールーミーみたいといっては失礼千万だろうか。

ランチア フラヴィア1.8コンバーチブル ヴィニャーレ(1966):

32500~36000ポンド(約455~504万円) 走行距離: 76,000km
今時、ランチア フラヴィアと言っても、どのくらいの人が知っているのだろう。一部のマニアの人しかもう覚えていないのではなかろうか。フラヴィアとフルヴィアはとても人気のあったランチアモデルだった。オーナーたちは皆、メンテとケアに大変苦労されていたが…(笑)。もう50年以上も昔のヴィンテージカーだが、美しさを失わないデザインというのは、こういうクルマのことを言うのだろう。

フィアット500トッポリーノ(1952):

6500~8000ポンド(約91~112万円) 走行距離: 64,957km
トッポジージョではありません。トッポリーノです。日本ではとんと目にしたことのないクルマの1台だ。
価格は安い、気もするが、もともとの値段とイタリアで売れた台数を考えれば、こんなものなのかも(整備も大変そうだし)。
それにしても、こんな感じの小さなお洒落なシティーカーがあったならば…。電気自動車でいいからだれか作ってくれないかな?

アルファロメオ アルファスッド スプリント ヴェローチェ1.5(1981):

18200~20200ポンド(約254~万円) 走行距離: 61,000km
アルファスッド スプリント ヴェローチェ、巨匠ジウジアーロのデザインしたクールなクーペだ。人気があったなあ。憧れたなあ。親友が持っていえ羨ましかったなあ。欲しかったなあ(私は当時シビックに乗っていた)。

フィアット500F(1969):

7650~8450ポンド(約107~118万円) 走行距離: 47,983km
アニメ「ルパン三世」で一躍人気者になった500F。色までルパンのものそのもののイエローだ(笑)。
Fの特徴である、ドライバー席の真ん前にある、ワンメーターは「キュート」という表現以外思いつかない。カワイイばかりじゃない。4人が乗れるパッケージングには素直に驚く。巨匠ダンテ ジアコーサのデザインした彼の代表作だ。いつの時代も チンクエチェントは人気者だし、これからも永遠に愛されるだろう。

フィアット600Dトランスヌフォーマビレ(1972):

10500~11600ポンド(約147~162万円) 走行距離: 10,000km
チンクエチェントではありません。セイチェントです。日本ではそうでもなかったが、本国のイタリアをはじめ、欧州諸国で多くの人々に愛されたモデルだった。走行距離1万キロというのは信じがたい。
ちなみに、ユニーク(奇妙)なスタイリングで人気の高いムルティプラ(初代)もセイチェントです。お洒落な色と大人びたディテールが、チンクエチェントとはちょっと違った雰囲気を醸し出している。

フィアット124スポルトクーペ1.6シリーズIII(1974):

10500~11600ポンド(約147~162万円) 走行距離: 81,000km
とてもカッコよくオシャレなフィアットのクーペ。この個体は後期型だ。124も多くのクルマ好きに愛されたモデルだった。むかしこういうフィアットもあったのですよ、皆さん。それが今や、クライスラーとプジョーとシトロエンと一緒になってしまうとは……。誰がそんな時代を予想したことか。

フィアット500L(1970):

7000~8500ポンド(約98~119万円) 走行距離: 22,139km
ホイールがなんともオシャレで、ボディカラーもとってもいい。これでかわいい女の子(小芝風花とか)が運転してたらサイコーっす。なんとバンパーまでついてます(笑)。キャンバストップも張り替え済なので、雨が降っても大丈夫。

フィアット600D(1962):

7950~8750ポンド(約111~122万円) 走行距離: 71,000km
なんともユニークで思わず笑顔にさせられちゃうお顔。こういうクルマ見なくなりましたねえ。唯一近いと言えるのは、現行型フィアット500か? って、今の500のおじいちゃん、みたいなものだから当たり前ですが。エンブレム周囲のデザインも、ものすごく手が込んでいて凝っている。

★アルファロメオ アルフェッタの章の答え
「007 オクトパシー」(1983年)。電話ボックスで通話中の女性のクルマを(無断で)拝借して米軍基地に向かって激走する。

TEXT:  田仏 呑 & 大林晃平