初試乗テスト 新型ホンダ ジャズ(日本名フィット)ハイブリッドSUVクロスターの評価は?
2020年6月25日
ホンダ ジャズ クロスター: テスト、SUV、ハイブリッド、電動モーター、ガソリン
新型ホンダ ジャズ(日本名フィット)は現時点ではハイブリッドシステムとCVTを備えたSUVバージョンのみが欧州市場に投入される。そのため、この楽しいクロスオーバーバージョンは、オリジナルモデルよりもじゃっかん高めの価格設定となる。そのドライビングレポート。
ホンダは、オフロードルックが好きで、四輪駆動でなくてもよく、本格的なSUVを必要としない顧客をターゲットにしたジャズ(フィット)のハイブリッド式小型SUVを欧州市場に投入した。
新型ジャズのクロスターバージョンは、ハイブリッドドライブのみで利用可能だ。
4.09メートルの長さのジャズは、1.5リッター4気筒自然吸気エンジンと2基の電動モーターを搭載しており、109馬力(80キロワット)と253Nmのトルクを発揮する。そして、時速40~50kmまでは、ジャズ クロスターはほとんど電力のみで走行する。内燃機関が第2の電動モーターを駆動し、駆動モーターに電力を供給する発電機の役割を果たす。
更に加速して100km/h以上の速度で走行する人だけが、フロントアクスルへの直接の動力によって走行することになる。
エンジンはロックアップクラッチを介してフロント駆動輪に直接接続されており、意外とパワフルにぐいぐいと加速させる。9.9秒で、0から100km/hまで加速し、速度は最高173km/hまで出すことができる。これは十分な数値といえよう。
ハイブリッドドライブは優れた経済性で喜ばす
ホンダは、内燃機関、電動モーター、バッテリーの完璧な連携のおかげで、リッターあたり20.8kmの平均燃費を約束する。
つまり、遠距離旅行に出かけようと思えば、ガソリンエンジンと電動モーターで、最大800キロの航続距離を達成することができるということだ。そしてそれは経済的な小型ディーゼルと同等の性能だ。
ジャズは、特にスプリングとダンパーのチューニングが優れている。高速でのコーナリングでは、すべてのドライバーがグランドクリアランスの正確さと、ジャズ クロスターの比較的小さなホイールのおかげで、重心が高めに設定されていることを感じることができる。
そしてもっとも喜ばしいのは、ダイレクトでありながら非常にスムーズな電動パワーステアリングだ。
残念ながらCVTトランスミッションだけが、ドライブシステムが自発的により多くのパワーを供給するように要求されたときに、典型的な高いレベルのノイズを発生させるので、楽しいドライビングにちょっと水を差す。
ジャズは普段使いの実用的な仲間だ
フロント、リアシートどちらも大きく開くドアからのアクセスが可能で、広々としたスペースを確保している。実用的でシンプルなリアシートは、フィットの伝統で前方に折り畳めるだけでなく、シートを上に折り畳むこともできるよう工夫されている。これにより、大きな荷物や特に背の高い荷物も問題なくリアに積み込むことができる。
トランクには298~1199リットルの荷物を収納できるようになっている。
デジタル化された計器類は、7インチのスクリーンにやや負荷がかかっている。ダッシュボード中央の多機能スクリーンは、画面の対角線が最大9インチと大きくなっている。
ヨーロッパにおけるクロスターは最上級のエグゼクティブバージョンのみで、価格は26,250ユーロ(約322万円)という、やや高価なモデルだ。またプラグインハイブリッドのオプションがないため、ヨーロッパでは政府からの補助金は得られない。
この金額であれば、1つ上のクラスにも手が届くだろう。
購入価格には、ビッグサイズのエアダムスカートなどと、デザイン要素とルーフレールを備えたボディキットだけでなく、レーン逸脱警報システム、緊急ブレーキアシスト、アダプティブクルーズコントロール、10個のエアバッグとLEDヘッドライトを含む優れた安全装備がオプションではなく、すでに含まれている。
自動温度調整システム、リアビューカメラ、サウンドシステム、クリップオンミラー、アルミホイール、9インチディスプレイ、パーキングエイドを前後ともに装備し、快適性もちゃんと確保されていて、価格に見合うとてもよくできたクルマに仕上がっている。
若干高価なことは確かだが、燃費もよく、ホンダらしい乗って楽しい一台であることは間違いないだろう。前のモデルで度々リコールとなったトランスミッションも、このモデルでは問題なく仕上げっているはず、である。
わが国では4種類のグレード、というか4つの性格の異なったシリーズ展開をするフィットではあるが、ヨーロッパではSUVモデルであるクロスターのみを、ジャズ ハイブリッドSUVクロスターとして導入したことは、売り方の展開として決して間違ってはいない、と思う。
今や世の中はSUVブーム全盛であり、スポーツカーや超高級自動車メーカーでさえもSUVのモデルを展開するような世の中だから、フィットがSUVを前面に出してきたことは決して間違えではない。
まあ今のフィットは昔のシビックのようなポジショニングの車で、ホンダのベーシックカーとして、立派で大きくなりすぎたシビックの跡を担うモデルではあるから、ホンダのベーシックカーとして一番安いモデルなどもヨーロッパに導入したらどうだろうか、という気もしないではないが、高い値付けのできない価格などを考えれば、あまり儲けが出ない、という判断が経営陣に下されたのではないだろうか。
そもそもフィット(欧州ではジャズ)には、シンプルな「ベーシック」、無印良品的な?「ホーム」、豪華モデルの「リュクス」、スポーティー(決して、かつてのRSのようなスポーツではないところがミソ)の「ネス」、そしてヨーロッパ市場に導入した「クロスター」という5つのグレードが存在し、これがややわかりにくいことも確かである。
個人的には、やがてこういう車種展開は整理されて、3つくらいになるのではないか、と予想しているが、現状では、「ベーシック」と「ホーム」の性格区分が分かりにくいことと、「ネス」という、本気なんだか軽いノリのダジャレ的モデルなのか、広告代理店にそそのかされたようなネーミングの意味が分かりにくい。そもそも「ネス」 というモデルはフィットとネス(フィットネス)をかけた軽いノリの言葉遊びであることは言うまでもないのだが、そもそもホンダは昔からそういう洒落っ気のある自動車メーカーではあったのだが、それでも本当に必要なのか、と心配になってしまうモデルである。
それからすれば「リュクス」という豪華(?)グレードは、見た目も、こういうグレードが欲しいユーザーにぴったり向いた、わかりやすいモデルではある。自分では選ばないが。
そんなこんなで、クロスターのハイブリッドモデルのみをヨーロッパに持ち込んだホンダの戦略は間違いないと思うが、若干気になるのは300万円を突破しているその価格であろう。フィットといえば、この間までコミコミ150万円くらいで売っていたんじゃなかったっけ?と思ってしまう人間には、ギョッとするような価格ではあるが、実は今やフィットは、普通のモデルでもハイブリッドを選べばオプションなしでも200万円を突破し、ヨーロッパに導入したクロスターは日本でも300万円に届こうという価格なのである。そう考えればヨーロッパでの価格も納得はいくし、今回のフィットは完成度も高くセンスもよく、いちゃもんをつける部分の少ない優等生であることは間違いない。
さまざまな自動車に求められる要因や、デバイスを考えればいた仕方のない価格、と考えることもできよう。
だが、それでも……、いつの間にかホンダのベーシックカーが200万円~300万円になってしまったと知ってしまうと、複雑な気持ちになってしまうのは確かである。まあそれはホンダに限らず、豪華で複雑になってしまった、世の中すべてのクルマにいえることではあるのだが…。
Text: Stefan Grundhoff
加筆:大林晃平
Photo: Honda