写真とともに振り返るゲレンデヴァーゲンの40年 メルセデスGクラス(前編)
2020年6月10日
昨年、偉大なるGクラスが40周年を迎えた。メルセデスGクラス誕生40周年を記念して、シュトゥットガルトで開催された特別展示会では、オフロード車のアイコンであるゲレンデヴァーゲンの最も美しいモデルが展示された。その模様を写真とともにたどる。
メルセデスGクラス誕生40周年を記念して、ダイムラーは最も活気に満ちたオフロードモデルに敬意を表し、「G-Schichten」(”G Layers”)と題した特別展を2020年4月まで、1年にわたってシュトゥットガルトのメルセデスベンツ博物館で開催した。
メルセデスGクラス(W460)は、240GDというベーシックなモデルからスタートした。
四輪駆動セグメントの比類なきアイコンは、教皇ヨハネ パウロ二世のためのパパモビルとして、あるいはパリ ダカール ラリーの勝者として、個性を発揮した。また、12気筒で1000Nmのトルクを持つパワフルなG65 AMGファイナルエディションが示すように、ワイルドな走りも可能だった。
また、AUTO BILDからは、2019年「ゴールデンクラシック賞」の表彰という誕生日プレゼントもあった。
スパルタンから万能オフローダーへ
Gクラス(ゲレンデヴァーゲンの頭文字をとってそう命名した)は、かつて軍や林業従事者のためのワークホースとして開発されたものだった。誕生当時はまだかなりスパルタンな装備で、エンジンの種類も比較的控えめで、ディーゼルとガソリンのバージョンは72~150馬力というラインアップだった。
日本にもウエスタンモータースからディーゼルエンジンの300 GD(ロング)のみが正規輸入され、ヤナセで発売された。その後はガソリンエンジンの230 GEも正規導入されたが、必要最低限の230のみで、280 GEは輸入されることがなかった。ゲレンデヴァーゲンは当時そういう質実剛健な車だったのである。
1979年当時のGクラスのベース価格は32,600ドイツマルク(200万円弱)だったが、年月を経るごとに、この車はより豪華で多用途なものになっていった。
ドイツ連邦軍がGクラスを使用していただけでなく、2013年にはオーストラリア軍などに納入している軍用車両の技術を応用して作った、車軸を3本備えた6輪駆動車メルセデスG63 AMG 6×6(544馬力、760Nm)が開発され、多くの国主や首長たちのお気に入りのおもちゃとなった。
ローマ法王以外にも、フランツ ヨーゼフ シュトラウス(特別なアクセサリーをふんだんに使った300GDに乗っていた)をはじめ、多くのセレブリティがこのマルチオフローダーに熱狂していた。
プロスキーヤーで超セレブのヨン オルソンは、Gクラスのルーフをぶった切って、エクストリームな「ロードハンス(Lord Hans)=彼の付けたニックネーム」に改造していた。
そしてもちろん、ダイムラーのハウスチューナーであるAMGもGの開発に貢献した。特に5.5リッターV8ツインターボを搭載したG 63は、新世代(2018年以降)では585馬力の4リッターV8ツインターボに置き換わっている。ついにはG 65で12気筒さえも積まれたのだから、40年前に開発に携わったエンジニアたちはびっくりだろう。
それではフォトギャラリーとともにGクラスの世界をご堪能ください。
貴重なGクラスの軍用車両などの画像
今から40年前、発表されたばかりのゲレンデヴァーゲンを見るなり、ランドローバーのエンジニアたちは「メルセデスベンツがライバルのモデルを出してくるというので戦々恐々としていたけれど、そのスタイルを見て安心したよ」といったのだそうだ。たしかにこういう高級な四輪駆動車というカテゴリーに、新たにメルセデスベンツが乗り込んでくることをランドローバーは恐れていたのだが、そのあまりにも武骨で高級感のかけらもないスタイルと内装を見て、彼らは胸をなでおろしながらこうも思ったはずだ。「私たちのクルマの方がはるかに高級であり、メルセデスベンツの出した車は単なる装甲車かトラックだ」と。
確かにその当時の出たばかりの230 GEとか、300 GDと呼ばれていたゲレンデヴァーゲンは、外装も内装も飾り気の一つもなく、優雅な雰囲気を持っていたレンジローバーとは比較にならないほど味気なく見えた。日本にも300 GDをヤナセが正式輸入し、私もそのころゲレンデヴァーゲンを運転させてもらったことがあるが(実はその頃、私はゲレンデヴァーゲン大好きだったのである)、重い、走らない、堅い、そしてそっけない、ひたすらトラックのような車だった。
その後、徐々に木目パネルがついたりしたが(230 GEプレディカートと呼ばれた)、一番の変貌を遂げたのはフルタイム4WDになった時だろう。ボディカラーも「普通の」メルセデスベンツと同じように、アルマンダインレッドがあったり、内装もまるでW124のメーターパネルをそのまま移植したりしたような姿になって、なんとも魅力的に見えた。そしてその頃の価格は1,000万円以下であった。
Text: Christian Jeß
加筆:大林晃平
Photo: Daimler AG