VWゴルフとBMW 1シリーズ一騎打ち ドイツを代表するコンパクトカー比較テスト
2020年6月3日
BMW 1シリーズ対VWゴルフ: 比較テスト、エンジン、価格
1シリーズとゴルフで走る喜び。TDIとしての最初の比較テストでは、VWゴルフをBMWの118dと比較した。バイエルンとヴォルフスブルク、果たしてどちらのエントリーモデルがより優れているのか?
800点中559点で1位: VWゴルフ2.0 TDI
ゴルフはインフォテインメント性という点でやや劣っているように見える。だが、他のほぼすべての点では、クラスリーダーであるゴルフが標準レベルを維持し続けている。
価格: 25,630ユーロ(約307万円)より。
800点中545点で2位: BMW 118D。
1シリーズは、偉大なハンドリング、高品質と素晴らしいエンジンで納得させる。しかし、僅差で2位となったのは、高価な上に、スペースが不足しているからだ。
価格: 32,600ユーロ(約391万円)より。
まずはこの2台のグレーのコンパクトディーゼルモデルの運転の喜びについて述べたい。
BMW 1シリーズとVWゴルフは両方ともニューモデルだ。新型ゴルフ8は、紙の上でこそ新しくなってはいるが、先代7シリーズからの技術の多くを継承している。一方の新型1シリーズは、新しく大きなプラットフォームの上に、前輪駆動と横置きエンジンを兼ね備えており、先代モデルと比較してほぼ革命的に異なるモデルに生まれ変わっている。
新しいゴルフの取り扱いには慣れるまで時間を要する
ゴルフのコックピット内にも革命が起きている。コントロールシステムのすべてがデジタルで、ボタンが非常に少なく、扱いに慣れるには時間を要する。ボイスコントロールシステムがこれらの操作をアシストすることになっているが(「こんにちはフォルクスワーゲン」)、システムは、第一にBMWのよりも遅く、第二にそれは1シリーズのアシスタントのように正確に乗員の口頭での指令を実行できていない。コマンドのレパートリーだけはゴルフにも豊富に揃ってはいるが、コネクテッドカーという点での評価はBMWに軍配が上がる。
一方BMWのナビゲーションシステムの方が、ルート案内が早く、ロータリープッシュボタンとタッチスクリーンで全体的な操作が明快で簡単だ。
一方、ゴルフは、スペースの面では、「広く快適」というコンセプトに忠実であり続けている。フロントは1シリーズよりも広々としている。2列目のスペースはBMWよりも一クラス上のものと言ってもいいほどにゆったりとしている。このことは、出入りのしやすさ、レッグルーム、ヘッドルーム、そしてそれは後席の座り心地にも当てはまる。
両モデルともに自動でギアチェンジ
さて、本題の走行性能に移ろう。
そして、ここでまずトランスミッションのことについてふれよう。
オートマチックトランスミッションは、1シリーズもゴルフも「お勧め」という言葉に値する。
118dは8段のアイシン製トルクコンバーター自動変速機だ。BMWで有名なZF製オートマチック(縦置きエンジン用)ほど正確でクイックではないものの、非常に近い性能を有している。一方、ゴルフは7段変速のDSGのままだ。ダイレクトシフトシステムも、我々に喜びをもたらせてくれた。特に太いトルクを備えたディーゼルとの組み合わせは、スタートダッシュ時に素晴らしい性能を発揮した。
しかし、このギアシフトの滑らかさと正確さは、スターター発電機付きガソリンエンジンの最初のテストですでに判明していたことでもある。
48ボルトの電動システムのないディーゼルが走行マナーを悪化させることはない。
ストップ&ゴーシステムからのスタート、地下駐車場の出口の勾配でのスタート、前進から後退への素早いギアチェンジ。現在のDSGはあなたが期待している通り、すなわちこれらすべてを適切に行う。
次にエンジンだ。ドライビングプレジャーには、エンジンが大きく関わっているのだ。
サスペンションの快適性では、1シリーズがやや先行している
我々は、幸運にも1シリーズとゴルフのSUV兄弟車にも使われているドライブユニットがどれだけパワフルなものかを知っている。それらはコンパクトカーで、より一層のパワーを発揮する。約350Nmのトルクが、すべての状況下で、多くの圧力で車体を遅延なしで強力にプッシュする。
ゴルフは、総体的に優れた動力性能を備えているが、とりたてて強調するほどのものではない。しかし、思ったよりもパワフルなところもある。
ガソリン消費量は非常に優秀で、テスト期間中の平均燃費はリッターあたり約19.2kmと、工場出荷時のスペック表に記載されている数字をわずかに下回っている程度だった。
しかし、BMWのエンジンは、滑らかな回転でその性能をより最大限に引き出すことができる。また、より抑制された静粛性を持ち、オートマチックトルクコンバーターの切り替えも細かく行われるため、パワーユニットの章では、BMWがVWに僅差で勝利を収めた。
乗り心地などをチェックしていこう。
我々のテストカーにはいずれもアジャスタブルダンパーが装備されていた。両車のサスペンションの快適性は、このクラスでは最高のものだ。
1シリーズは、緩やかなロールが感じられるものの、日常の道路の小さな段差ではゴルフよりもリラックスしている。
一方、ゴルフは、悪路や路面の悪い状況の中でも落ち着きを長く保てる。しかし、これらはこの2台の優秀なモデルにとっては当たり前のことで、取り立てて強調するようなことではないかもしれない。
ATのコストもVWの勝利に貢献
高く賞賛されるVWのDSGに比べて、1シリーズのATは劣らず優れてはいても、2100ユーロ(約25万円)の追加費用がかかる。
バイエルン製コンパクトカーは、コストの面で合計10ポイントを失う。
我々が先に述べたように、両方とも運転するのが楽しいモデルだ。しかし、最終的には、バランスとコストパフォーマンスなどでゴルフが勝っている。
【フォトギャラリーと結論】
結論:
ゴルフの勝利は、三つの点で明確だ。
その理由の一つは、価格的アドバンテージである。
二つ目の理由は、パワートレーンとドライビングダイナミクスの面でも1シリーズと同等の性能を保持していると言うことだ。
そして最後の理由が、1シリーズよりも優れたスペースを備えているということで、この点ではクラスリーダーであり続けている。
しかし、VWの新しいオペレーティングシステムは、我々を納得させるレベルには達していない。この点ではBMWの勝ち、である。
1シリーズがFFになったことで、いよいよVWゴルフとガチンコな対決を行わなくてはいけなくなった。今まではスペースが劣っていても、やや乗り心地がハードなことがあっても、これはBMWのFRハッチバックなのだと言ってしまえばそれで解決していたはずだったし、実際にFRであることで、他の車にはなかった魅力を兼ね備えた稀有な存在だったのである。
そんな1シリーズが今回からFFとなることで、このセグメントの王者のゴルフと同じ土俵と闘わなくてはいけない。そしてFFになったことで、今まで許された表裏一体のチャームポイントとウイークポイントはもはや許されない事態となった。
一方のゴルフはいつの時代も、このセグメントの王者であり、メートル原器のような存在のクルマである。VWというメーカーの中でもその存在と完成度は圧倒的で、特にひとつ前のゴルフ7に至っては素晴らしい完成度を持っていた。
それがゴルフ8になったことでどうなったか、あのたとえようもないほどの完成形のゴルフ7を超えられたか、がポイントなろう。現在のところゴルフ8に対しては「内容的にも進化したことは認めるし、依然としてこのクラスのトップクラスではあるが、ゴルフ7のあの感動するまでの完成度には至っていない」という評価が圧倒的に多い。そして大抵の場合、「まだすべてのラインナップは完成していないし、熟成が進むとゴルフ7並みの完成度になろう」という形でレポートが終わることが多い。
今回はコストパフォーマンスやスペースの面でゴルフの勝ちとなったが、正直言って、1シリーズもゴルフも、文句なしで圧倒的に優れているのはこちらだ!と太鼓判を押すほどの評決にはなっていない。まだまだここ数年で熟成し、ラインナップも充実することだろう。そうなった時に完成された車を買うというのが、両者ともに賢い購入方法と言えるかもしれない。
Text: Mirko Menke, Stefan Novitski
加筆:大林晃平
Photo: Toni Bader / AUTO BILD