1. ホーム
  2. テスト
  3. 初テスト アウディA1シティカーバー アウディ製コンパクトSUVの実用性を検証

初テスト アウディA1シティカーバー アウディ製コンパクトSUVの実用性を検証

2020年5月23日

アウディA1シティカーバー: コンパクトクロスオーバー、テスト、エンジン、価格

A1シティカーバーは何に適しているのか? ただのスポーツバックか、それともまったく別の独立したモデルか? 初テストで、新型アウディA1シティカーバーが、何ができるのかを明らかにする。

新型アウディA1シティカーバーは、才能あるモダンなSUVという触れ込みだ。しかし、実際に小さなアウディは何かをすることができるのか? 我々の最初のテストで、それを検証する。
それはすでに市場に出回っている他のコンパクトSUVとの直接的な比較にある。したがって、我々の比較分析は、走行性能、ブレーキ挙動、コスト、寸法などの客観的な結果に基づいている。
併せて、主観的な側面でも選別している。例えば、ブランドイメージはどうなのか、デザインは適正化、運転は楽しいか、などなどだ。

4メートルクラスに高貴さの競争は存在しない

アウディは以前からやや高価なブランドイメージを持っている。これは当然のことながら、最小モデルにも転化される。
したがって、A1シティカーバーには、アウディ製SUV命名法のQが与えられていないことを不可解に思うが、シティカーバーは、A1スポーツバックのスペシャルモデルというスタンスとして解釈されるべきなのだろう。そしてそれは利点ともなり得る。
アウディはマイナーリーグでは直接的な競争相手が存在しないからだ。
BMW、ミニやメルセデスは、4メートルSUV部門では競合していない。そして、シトロエンやフォードと比較するなら、アウディのほうが明らかにより多くのブランドとしてのカリスマ性を持っているともいえよう。
その上、シティカーバーはVWのTクロスに近いイメージを持っているため、ポロをベースに開発されているという事実をうまく隠蔽できている。

ダイナミック照明機能付きLEDインジケーター

デザイン的には、ある程度オリジナリティを備えていると思う。
シティカーバーは、グランドクリアランスを高いレベルに上げるだけで、印象を変え、A1スポーツバックとの関係を打ち消している。
またそれとは別に、パワフルでスポーティに見えるが、細部までアップグレードされていることも事実だ。プラスチック製のアンダーライドプロテクション、S-Lineレパートリーの輪郭のあるルーフスポイラー、ホイールアーチのプラスチック製アーチなど、これらはすべて後付けのアドオンパーツのように見える。
印象的なハニカムグリルは大衆モデルとは一線を画しているが、シンプルなキャストパーツは、近距離から見ると他のパーツのような高級感は残念ながらない。
インテリアはより高級感がある。室内にはアンビエントライトまで用意されていて、これは本当にアッパークラスのラウンジらしさを醸し出している。また、小型車クラスでは珍しい、ダイナミックな照明機能を備えたLEDインジケーターもクールだ。ただしアウディの常で、両方ともオプション料金がかかるが。

目くらまし? 遠くからは高級感のあるハニカムグリルは、間近で見ると残念ながらシンプルなキャストパーツにしか見えない。

運転性能は完全に説得力があるものとは言い難い

1リッターちょうどの3気筒エンジンを搭載したテストカーは116馬力を発揮する。ほぼ200km/hの最高速度を有し、10秒未満で0から100km/hにまで加速し、これはよりパワフルな(しかし、100キログラム以上重い)、130馬力シトロエンDS3クロスバックよりも速い。
しかし、アウディの6速ギアミッション(Sトロニック)は、もっとスムーズに機能すべきだし、ターボガソリンエンジンは本来もっとスムーズに発進できるはずである。そのため信号待ちで素早く発進しようとすると、クラッチが必要以上にスリップするので、ぎこちなく、不適切に感じる。アウディ製3気筒は本来もっとリラックスしているはずだ。
それ以外、つまり速度に乗って走り出せば軽快なフットワークのA1はご機嫌な気分にさせてくれるし、ブレーキも完璧で、スムーズなステアリングを握って運転を堪能できる。

シャキッとチューニングされたアウディは運転していて楽しいが、3気筒エンジンはもっとより良く発進できるはずだ。

車高が高めにセッティングされているからといって、コーナリング時に特に減速する必要はない。しかし、装着されているタイヤ(テストカーは18インチのホイールを履いていた)が不適切なのか、正確なハンドリング性能にもかかわらず、快適性のバランスを崩しており、小さな段差が小地震のように室内に入り込んできた。明らかにタイヤがオーバーサイズであると言えよう。

【フォトギャラリーと結論】

インテリアはより高級感がある。
フロントシートは丁寧に張りめぐらされており、ドライバーが座る位置は従来のA1よりも明らかに高くなっている(路面からの高さは約5cm)。それに応じて、ホイールの大型化、シャシーの改良、シートの高さを最小限に抑えたことで、見晴らしが良くなっている。
A1には、マルチメディアパッケージが標準装備されている。ナビゲーションシステムは、リアルタイムで渋滞を認識し、アクティブレーンガイダンスや歩行者認識などのセーフティアシスタントが、スムーズにトラフィックを通過するのに役立つ。タッチパッドを介してのMMIシステムの操作、例えば、地図の3D表示(ナビゲーションシステムプラス内)は、追加で1495ユーロ(約18万円)のコストがかかるほか、オプションも多く用意されるが遠慮なく追加していくと結構な価格になるので注意。

リアシートの背もたれは自在に折りたためることができ、最大1,090リットルのラゲッジスペースを確保できる。リアのスペースは適度で、小さなドアからの出入りは比較的楽にできる。
アウディというブランドのため、116馬力モデルで少なくとも23,300ユーロ(約279万円)する。我々のテストカーは、オプションなど含んでの価格は合計で約28,000ユーロ(約336万円)だったが、さらにいろいろと追加(たとえば、LEDライト、トップナビゲーションシステム、ダイナミクスパッケージ)すると、34,000ユーロ(約408万円)を超える可能性がある。

結論:
VWポロから派生したA1シティカーバーは、SUVの姿を借りてはいても、それはまっとうなコンパクトカーだ。十分なスペースを備えていて、車高も高いので視界も良く、その名の通り街で使っても、SUVとしてちょっと遠方まで行っても十分以上に快適である。
残念ながら街中ではトランスミッションの動作がイマイチなため、発進などでぎくしゃくすることもあるが一度走り出せば快適だ(ということは、日本の都心のストップアンドゴーが多用されるシチュエーションでは、いまひとつスムーズな運転は難しいということでもある)。
アウディは今や、Q2、Q3、Q5、Q7、Q8とSUVはフルラインナップ状態だ。その中で、あえてQ1と名乗らなかったことはなぜだろうとずっと考えていたのだが、おそらくアウディとしてはこの車は、A1とは別のセグメントのSUVではない、プレミアムな小型高級車を目指したのではないか。
ベースとなったVWポロも、もはや高級なコンパクトであり(なにせ、ベーシックなハッチバックとしてUP!もあるのだから、ポロは、そこそこ、高級でなければならないという宿命を持ってしまっているのである)、そこにさらにTクロスというSUVモデルまで存在する。であるならば、同門ともいえるアウディが兄弟の売れ行きを妨げず、他のマーケットを狙うとしたならば、今回のシティカーバーのような立ち位置の車を作ることは正解なのかもしれない。
だが……だったら「普通の」A1じゃあいけなかったのだろうか。そのジャンルはA1に委ねて、任せておくという作戦は取れなかったのであろうか? A1ではなく、SUV風の車が欲しければQ2という選択だって成り立つだろうし、A2というクルマがないのだから、あえてA1シティカーバーを世に出さなくともラインナップは足りていたのではないのか?
と、いちゃもんのようなことをつい言ってしまうのには理由がある。それは価格である。A1シティカーバーの価格は、Q2とずばりバッティングするし、オプションを付けていけば、あっという間にQ2の価格を超えてしまうだろう。
1のくせに2よりも高価になってしまうこと…。小さな高級車を目指しているとはいえ、全体的な装備やつくりを見ていくと、A1シティカーバーの価格は素直にうなずけない、のである。

AUTO BILDテストスコア:2

Text: Tim Dahlgaard, Jan Horn
加筆:大林晃平
Photo: Tom Salt