ヘビー級SUV対決 BMW X7 M50d対アウディSQ7一騎打ち 勝者は?
2020年5月21日
BMW X7 M50d対アウディSQ7: SUV比較テスト、エンジン、価格
今年最大級の決闘。両車とも全長5メートル超、重量2.5トン超、400馬力だ。
アウディSQ7とBMW X7 M50dは、2台の本物のヘビーウェイトクラスのSUVだ。その実力を比較してみた。
800ポイント中536点で第1位: アウディSQ7
4基のターボを持ち、トップクラスの走行性能を持つビッグスポーツSUV。広々としていて、高貴なインテリアと素晴らしい仕上がり。価格は95,700ユーロ(約1148万円)から。
800点中528点で2位: BMW X7 M50d
卓越したエンジンとトランスミッションの組み合わせを持つ巨大SUV。快適性が高い。充実したスペースと豪華装備。価格は113,400ユーロ(約1360万円)から。
数字が端的にこの2台を物語る。
アウディSQ7は全長5.07メートル、全幅1.97メートル、重量2.5トン。
BMW X7は全長5.15メートル、全幅2.0メートル、重量2.6トンだ。
SQ7は435馬力で900Nm、X7は400馬力で760Nm。
もう一つの数字も出そう。86×36センチ。これはX7のダブルキドニーグリルのサイズで、BMWに装着されたものとしては史上最大のものだとBMWは言う。
威勢のいいフロントに直立し、X7には巨大な窓があり、リアドアは非常に大きい。
つまり絶対的にX7は巨大な車なのだ。
アウディの真の大きさを隠すデザイン
巨大なBMWと比べても決してアウディも小さい車ではないが、不思議なことに繊細で、より伸びやかな印象を受ける(実際に、車高はBMWよりも6cm低い)。
しかし、驚くべきことに、アウディには、BMWよりも乗員のための広いスペースが存在する。フロントとリアの両方にBMWよりも大きくて長いレッグスペースが備わっているのだ。また、リアのヘッドルームもBMWより2センチ以上スペースが在る。
テストカーには、3つのスライド式個別シートと背もたれの角度を調整できるリアシートベンチプラス(390ユーロ=約4万6千円)が追加されていたが、快適で実用的で、非常に、お勧めのオプションである。
SQ7のコクピットは、計器類(12.3インチ)、マルチメディア(10.1インチ)、エアコン(8.6インチ)の3つの大型スクリーンによって、非常にわかりやすく形成されている。鮮やかなビジュアルと分かりやすいメニューを備えている。
何よりも際立っているのは、2016年から製造されたSQ7が、細部に至るまで丁寧に作り込まれたオールドスクールのアウディであることだ。この頃のアウディは今の世代のアウディよりもデザイン、質感とも高かったように思われるため、光沢のあるペイントは完璧に輝き、縫い目は定規で描いたように、隙間の寸法や接合部はぴったりとフィットしている。極めてきれいな状態だ。
4基のターボを備えた直列6気筒がX7を照らす
BMW には標準で 7つのシートが装備されており、3 列目には2つの電動格納式個別シートが付いている。6人乗りのテスト車は850ユーロの追加料金がかかるが、これにはセパレートタイプとなり、2列目に非常に快適な電動格納式アームチェアが2つ装備されるオプションだ。よりラグジュアリーな雰囲気を望む方はぜひ装着するべきだろう。X7は絶対的な大きさを持つために、全体的に広々とした印象を受けるが、実際には、前述のように、アウディのほうが広いスペースを有している。
インテリアは、丁寧なラッカー仕上げの木材が輝き、柔らかなレザーの香りがし、カップホルダーは飲み物を冷やしたり温めたりすることができるなど、贅沢なものだ。
コックピットには、計器やマルチメディア用の2つの12.3インチディスプレー、そしてもちろん非の打ちどころのないiDriveシステムのコントローラーが備わっている。
しかしプジョーのように、スピードメーターと逆回転する回転カウンターの奇妙に湾曲したディスプレーの表示は読みにくく、はっきり言って、このような高級車にはふさわしくない。
このまったくクールではない逆回転のタコメーターは、最近のBMWの標準装備となりつつあるが、BMWという名前、つまりバイエルンのエンジン屋のタコメーターとしてはまったく不釣り合いで、なんでこんなものを素晴らしいエンジンの車に装備したのか、まるで理解できない(アルピナでさえも、この逆回転タコメーターを装着したと知った時は絶望的な気持ちになったものだ)。
逆回転のタコメーターはもちろん機械式のメーターではなく、デジタルのディスプレー上で表示されるため、元の(つまり普通の時計まわりの)ディスプレーに戻すことは他愛もないことだろう。もしBMWがどうしても今後も逆回転のメーターを標準装備にしたいと考えたとしても、せめて自分でどちらかを選べるように、選択の余地だけは残しておいてほしい。それほど難しいことではないはずだから。
SQ7の性能に比べて、X7は古びた印象を受ける
テスト車のX7は、4輪ステアリングとロールスタビライゼーションを備えたエグゼクティブドライブプロパッケージ(3850ユーロ)が搭載されていた。加えて、アダプティブダンパーと4輪駆動のエアサスペンションも搭載されており、リアアクスルにはスポーツデフが装着されていた。
このように装備の充実した巨大なBMWは、まずなにより、非常に快適にドライブし、田舎道でさえもスムーズに、そして穏やかに駆け抜けていく。そして、それに加えて、サイズと重量を考えれば、驚くほどの使い勝手の良さを有している。正確なステアリングと美しいフィードバックで、楽々と操作できる。もちろん2.6トンという車重は運転している間中、頭のどこかには残っているが、それらは決してあなたを悩ますものではない。
しかし、SQ7のエンジンは、X7よりさらに強力に速く車を動かす。
アウディ製V8は、BMWの直6とは異なるカテゴリーとキャラクターを備えたパワーユニットだ。4.0リッターV8エンジンには、ツインターボと追加の電気駆動コンプレッサーが付属している。猛牛のようにパワフルなエンジンに、さらに豊かなサウンドさえ加わって我々を魅了する。
そしてパフォーマンスに関しては、アウディはBMWを圧倒し、0-100km/hを4.6秒(BMWよりも0.8秒も速い)、200km/hを19.0秒という驚異的な速さで達成している。
【フォトギャラリーと結論】
結論:
さて、ではこの巨大な2台のSUV、本当はどちらが優れているのかを決めなくてはいけない。とはいっても、これだけの上級セグメントで、これだけの価格の車で、圧倒的に劣るとか、ダメなもの、ということはあり得ない、というかそんな不具合はあってはいけないことだ。
だからこういった車を選ぶ時には、好きなブランドで選んでも良いし、好きな方を直感的に選んでも決して間違いではないだろう。だが、個人的に一人のクルマ好きとしてこの2台を見た場合、より魅力的に思えるのはアウディである。
その理由はアウディの方がよりドライビングを楽しめるハンドリングとパワーを持っていることと、ボディが若干(本当に若干だが)小さくて引き締まっていることだが、それ以外の理由も実はある。
あまりに大きすぎるBMWのキドニーグリルはいったいどこの国の、どんな人の要望でこれほどまでの巨大さで周囲の人を圧倒し、前を走る車を威嚇しなくてはいけないのか。そしてどんなお遊びデザイナーの気まぐれで作られたのかは知らないが、人間の感性に逆らって逆回転するタコメーターに、エンジン開発者は嫌悪感と最後まで反対する意思を持たなかったのだろうか?
どちらも、少なくとも10年前のBMWではありえなかった処理であり、BMWを愛するユーザーにはどちらもそぐわないものであることが残念でならない。2002とかE30とか、そんな時代にまで遡ることはないが、BMWの本来持っている魅力を少しでも知っている者にとっては、人を威嚇するキドニーグリルも、逆回転するタコメーターも落胆以外の何物でもない。
ブランディングに関するスタンスに於いて、アウディにはブレが見られなかったこと、それが勝因と言える。
Text: Dirk Branke, Mirko Menke
加筆:大林晃平
Photo: Christoph Börries / AUTO BILD