1. ホーム
  2. 旧車&ネオクラシック
  3. ポルシェ912を究極にレストア かかった費用は総額で約1400万円!

ポルシェ912を究極にレストア かかった費用は総額で約1400万円!

2020年4月27日

ポルシェ912の完全なる復元 そのかかった費用で新型911カレラ4が買える!

この912の完全なるレストアにかかった費用は115,000ユーロ(約1380万円)。この912のオーナーは愛車を完全に復元するために、信じられないほどの金額を投資した。最高のコンディションの912が2台、あるいは新型の911カレラ4が買える金額だ。

わずか90馬力の4気筒

911の廉価バージョン、4気筒912(1965-1969)は、空冷ポルシェファンの心を射止めるのに苦労した。その頃はより気筒数の多い排気量の大きい車が大人気でもあった時代だからだ。
初期の911フォームはフリルもない飾り気のないものだが、912は911-Fモデル(1963~1973)よりも前後の重量配分において優れていた。大幅に軽量化されたリアエンジンがハンドリングとドライビングを簡素化している。

スイス人コレクターであるフィリップ ヴェダー氏は、レストアのベースとなるこの912をアメリカの見本市で決して安く購入したわけではない。そしてその912をフルレストアし、完全に復活させたのである。それには信じがたいほどのコストがかかった。
レストアに要した費用はトータルで、115,000ユーロ(約1,380万円)! これは最高の状態(コンディション1)の912の市場相場の2倍に相当する。
その結果、おそらく世界でもこの1台だけだろうという、ミントコンディションの912が完成したのだった。

アメリカからやってきた912ははずれだったか?

フィリップ ヴェダー氏は2015年、クラシックカーショーで912(1969)を35,000ユーロ(420万円)で購入した。
この912は元々アメリカから来たもので、ヴェダー氏は日常の足として使う気はなかったという。
一見したところ、その912は状態が良さそうに見え、特にインテリアは並外れて良い状態だったという。走行距離は85,000km。
ヴェダー氏は迷わずその宝石と思われるものを購入した。
しかし、その少し後に、スイス国境に近いドイツのコンスタンツの税関から引き取って、自走で家へ持って帰ろうとしたとき、ポルシェはすでに走行することのできない幽霊になっていた。コネクティングロッドのベアリングが破損していたために、旅を続けることができなくなっていたのだ。

これが長い冒険の始まりだった。
ホイールハウジングでは、フロントとリアの錆が増殖していた。
何層もの塗料がボディを覆っていた。
だが少なくともシャシーナンバーとかは合っていたので、912は偽物ではなかった。
ポルシェをサビ取り風呂に浸けたあと、長い時間をかけて考えた結果、ヴェダー氏は2018年11月に912の完全修復を決意する。

2015年のヴィンテージカーショーで、35,000ユーロ(約420万円)で購入した912(1969)。一見したところ、912は良好な状態のようだった。まだアメリカ仕様のバンパーや真っ黒なホイールなど、オリジナルには程遠い装備が多い。

フルレストアに115.000ユーロ(約1,380万円)!

このプロジェクトには約2,000時間の作業時間が費やされた。
912は完全に分解され、4気筒ボクサーエンジンとシャシーはオーバーホールされ、最終的にオリジナルカラーのアイリッシュグリーンに塗装し直された。
ヴェダー氏は今や、「あらゆるアングル、あらゆるコーナー、あらゆるネジ」を知り尽くしている。
この完全な作業には合計115.000ユーロ(約1,380万円)の費用がかかった。
その金額で、新品の911カレラ4(992)を注文することもできる。
レストア費用は高価だったが、ヴェダー氏は、これからはこのクルマを日常的に使いたいし、旅にも出たいと語る。
そして、「二度とこのようなプロジェクトはやらない」としながらも、「学んだことは誰にも奪うことはできない」とし、912を見るたびに「純粋な喜びと誇り」を感じていると言う。
もともとこのような912は1969年には16,980マルク(約110万円)であった。
クラシックデータによれば、コンディション1の912の市場相場は現状で66,000ユーロ(約790万円)、コンディション2が55,000ユーロ(約660万円)、そしてコンディション3が38,500ユーロ(約460万円)となっている。

ヴェダー氏は、「このクルマに乗って初めて表に出たとたんに、空から隕石かなにかが落ちてくるような気がする」と、ジョークを笑顔で語る。
コンロッドベアリング破損が長いオデッセイの始まりだった。ホイールハウジング、フロントとリアの錆も増殖していた。
何層ものパテや再塗装を重ねられた塗料がボディを覆っていて、それは完全に抉られて溶接されていた。写真は完全にホワイトボディにされた状態。
少なくとも912はまがい物ではなく、ニューオーナーは報われた。シャシーナンバー等も本物であることが証明された。内装ももちろんすべて一度外され、徹底的にレストアされた
長い考慮の末、ヴェダー氏は完全なレストアをおこなうことを決意した。
すべての作業に要したのは約2,000時間という膨大なものだった。
シート、カーペットもやり直し。おそらく生地はビニールなので、布地よりも耐久性はありそうなのが救いだ。
912は完全に分解され、最終的にオリジナルカラーのアイリッシュグリーンに塗装し直された。
レストアにかかったお金は新車の911カレラ4(992)の購入金額に相当する。
「二度とこのようなことはしない」とヴェダー氏は語るが、毎日912を見ると笑顔が浮かぶと言う。塗装も本当に美しく新車のようだ。
幸せを祈る!

Text: Matthias Techau
Photo: Philippe Weder