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ついに日本上陸したアウディQ4 e-tronをチェック!

2022年12月11日

アウディのコンパクトSUV型BEV(電気自動車)の「アウディQ4 e-tron」がついに発売。さっそく、報道試乗会で「Q4 40 e-tron Sライン」をドライブしてみた。

海外ブランドが続々と新型BEVを日本に導入するなか、とくに鼻息が荒いのがアウディだ。同社は2026年以降に投入する新型車はすべてBEVとし、中国などの一部市場を除いて、2033年までにはエンジン車の生産を終了すると宣言している。日本でも2024年までにBEVを15モデル以上導入し、2025年には年間1万台のBEV販売を目指している。

その実現のために、すでにアウディ ジャパンでは「アウディe-tron/e-tron Sportback」と「アウディe-tron GT/RS e-tron GT」を販売してきたが、コンパクトSUVクラスの「アウディQ4 e-tron/Q4 Sportback e-tron」によりさらなる販売増を狙っている。実際、「Q4 e-tron/Q4 Sportback e-tron」はすでに2,000台以上の受注があり、2023年販売分はほぼ完売の状態で、これから注文しても納車は2024年になるほどの人気である。

フォルクスワーゲン グループのMEBを採用

「Q4 e-tron」にはSUVスタイルの「Q4 e-tron」に加えて、SUVクーペスタイルの「Q4 Sportback e-tron」が用意されている。これらは、フォルクスワーゲン グループがBEV専用に開発したMEB(モジューラーエレクトリフィケーションプラットフォーム)を採用し、やはり最近日本に上陸した「フォルクスワーゲンID.4」とは基本設計を共有している。今回試乗した「Q4 40 e-tron Sライン」は、リアアクスルに電気モーターを搭載する後輪駆動を採用。前後アクスルの床下に大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載することで、広い室内空間を実現するなど、BEV専用のユニークな設計により、これまでのアウディとは大きく異なるクルマに仕立て上げられている。ちなみに、アウディが後輪駆動を採用するのは、ミッドシップスポーツの「アウディR8 RWD」に続いて、これが2例目になる。

「Q4 40 e-tron Sライン」には、82kWhの駆動用バッテリーと、最高出力150kW、最大トルク310Nmの電気モーターが搭載され、WLTCモードで576kmの航続距離を達成する。

フロントマスクの押しの強さはアウディで一番!?

ご存じのとおり、アウディのSUVは“Qファミリー”と呼ばれ、この「Q4 e-tron」はその名が示すように、ミッドサイズの「Q5」とコンパクトの「Q3」との中間のサイズになる。しかし、BEV専用プラットフォームを採用するとともに、フロントオーバーハングを切り詰め、その分、ホイールベースを長く取ることで、後席の広さは「Q5」を上回る。しかも、センタートンネルがないこともあって、足もとはとても広々とした印象である。

アウディのシンボルであるシングルフレームグリルは、Qファミリー専用の8角形のデザインを採用。BEVだけに風を通す隙間が不要な「Q4 e-tron」のシングルフレームグリルは全面シルバーの輝きを放ち、その存在感はアウディのなかでは一番の強さと思えるほどだ。

さらに今回の試乗車は、スポーティな内外装が自慢の“Sライン”というだけあって、力強いデザインの前後バンパーや20インチのアルミホイールなどにより、力強さが際だっている。

ちょうどいいデジタル化

「Q4 e-tron」のコックピットは、アウディらしい端正なデザイン。最新のアウディ同様、デジタルのメーターパネルと“MMI”と呼ばれるインフォテインメントシステムの画面など、見慣れた風景にひと安心する。その一方で、宙に浮くデザインが特徴のフローティングタイプのセンターコンソールや、上下フラットなステアリングホイールといった新しい取り組みが、最新のアウディであることを物語っている。うれしいのは操作頻度の高いエアコンの操作パネルが独立して存在し、しかも操作しやすい物理スイッチを残していること。このあたりの気配りもアウディらしいところである。

さて、最近のBEVはスタートボタンを操作する必要がないが、この「Q4 e-tron」もそれにならい、ブレーキを踏んでシフトスイッチでDレンジやRレンジを選べば走行準備は完了。あとはブレーキペダルから足を放せば、クルマはゆっくりとクリープを始める。

余裕ある加速性能

ここで少しアクセルペダルを踏んでやると、「Q4 e-tron」のモーターは即座に反応し、軽々とスピードを上げていく。BEVだけに加速中も静かでスムーズであり、しかも余裕あるトルクを発揮するモーターのおかげで、大排気量エンジンを扱うような心地よさだ。一方、アクセルペダルを深く踏み込むと、背中を押されるような鋭さはないものの、伸びのある素早い加速が楽しめる。これなら、一般道から高速道路まで、ストレスを覚えることはないだろう。しかも、後輪駆動を採用する「Q4 e-tron」は310Nmの最大トルクをしっかりと受け止めてくれるので、加速時の安定感は実に高い。

アクセルペダルを緩めたときの回生ブレーキは、0から3の4段階で強さを選ぶことが可能。その調整はステアリングのパドルで素早く変更できる。また、Bレンジを選べば最大レベルの3相当の回生ブレーキを常に利用できる。その利きは扱いやすいもので、Bレンジに設定すれば走行中のほとんどの減速を回生ブレーキでカバーできるほどだ。ただ、アクセルペダルを完全にオフにしても完全停止しないので、最終的にはブレーキを踏む必要があるが、最近のBEVではこの方式が主流になりつつある。

試乗した「Q4 40 e-tron Sライン」には、Sライン専用のスポーツサスペンションや、前235/50R20、後255/45R20タイヤが装着されているが、乗り心地はやや硬めながら十分に快適なレベルを示す。重量物のバッテリーを床下に搭載することで低重心化が図られたおかげで、SUV特有の前後、左右の揺れが気になることはなく、走行時の挙動も落ち着いている。さらに、後輪駆動や低重心設計により、コーナリング時のハンドリングは思いのほか軽快であり、実に運転が楽しいクルマに仕上がっている。

優れた環境性能だけでなく、走りの楽しさや広い室内にも注目したい「Q4 e-tron」。アウディでこれからBEVデビューするには打ってつけの一台である。

■テクニカルデータ:アウディQ4 40 e-tron Sライン
●モーター:交流同期電動機 リア横置き ●最高出力:150kW ●最大トルク:310Nm ●駆動用バッテリー容量:82kWh ●駆動方式:後輪駆動. 1速固定 ●全長×全幅×全高:4590×1865×1615mm ●車両重量:2100kg ●トランク容量:520リットル ● 平均電費:150Wh/km ●一充電走行距離:576km ●車両本体価格:689万円

Text&photo:生方 聡