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【このクルマなんぼスペシャル】ヴィンテージフェラーリに30億円以上! モントレー カーウィークのクラシックカーオークションのハイライト

2022年10月15日

ハンマー!ヴィンテージフェラーリに2,200万ドル(約30億円)以上の価格が!ペブルビーチで開催されたモントレーカーウィークのクラシックカーオークションでは、驚くほど価値のある車のオーナーが入れ替わる。RMサザビーズに我々は参加してきた。

前回レポートした、モントレークラシックカーオークション。その結果が届いたので、その中からハイライトとして11台を選んで紹介する。

【このクルマなんぼスペシャル】世界最高峰のオークション モントレークラシックカーオークション 全部はとても紹介しきれません!

モントレーカーウィークにおいて、牡蠣やシャンパンと同じくらい重要なイベント、それがクラシックカーのオークションである。今年は724個の宝石が約3億5千5百万ドル(約497億円)という、驚くような総額で、様々なホテルの豪華なボールルームで競り落とされた。

オークショニアは観客を熱狂させ、悪いワインは高値で売られ、ささやき声や歓声や笑い声が響く。会場にいる、あるいは電話口にいる潜在的な購買層は、自分たちが何を求めているかを知っているのだ。あっという間に値段が上がり、まるでチップのように10万ドルがどんどん追加され、ついにハンマーが振り下ろされる。お祝いの時間?祝っている暇はない、刻々と次の候補モデルがステージに上がってくる。

最も美しいオールディーズとそのクレイジーな価格は、以下のフォトギャラリーとともに、ご紹介。

モントレーカーウィークでのオークション

フィアット8Vスーパーソニック(1953年)
落札価格: 2,040,000米ドル(約2億8,540万円)。フィアットはV8搭載の8Vを114台だけ製造し、そのうち15台は今回オークションに出されるものと同じく、トリノの名門カロッツェリア、ギア社によってボディが与えられた(デザインされた)。
大林晃平: ギアっていう名前知っている人は、きっと50代以上のCGなどの専門誌愛読者かもしれない・・・。が、とにかく名門のカロッツェリアだった。この「スーパーソニック」は15台だけ、ギアによって仕上げられた逸品、ということで価格も高い。200万ドル(約2億8,000万円)という価格も致し方ないかと思うほど、エメラルドグリーンのボディはじめ、すべての程度もよさそう。蛇足ながら、「フィアット8V」にはいろいろなカロッツェリアのモデルがあり、ザガートのてがけたものは、いかにもザガートな格好をしている。
ブガッティ タイプ22トルピード(1914年)
落札価格: 33万5000米ドル(約4,690万円)。ショーベのボディワークを持つキュートな「タイプ22」は、数少ない保存状態の良い初期ブガッティだ。
大林晃平: ブガッティと言えばブルーのレーシーなモデルを想像してしまうが、本来はこういうエレガントでやや華奢に見えるようなモデルも多数ある。また22と言えば、つい「ブレシア」と反応してしまうが、今回のモデルは「トルピード」。その幌などこんな構造(失礼)で飛んで行ってしまわないかと心配になってしまうが、実際に乗った人に言わせると、「相当揺れるけれど、意外と大丈夫」という柔構造である。価格は「青いブガッティ」たちに比べると意外と割安だ(でも5,000万円)。
ポルシェ タイプ597「ヤークトワーゲン」プロトタイプ(1955年)
落札価格: 665,000米ドル(約9,310万円)。ポルシェのトラクターは有名だが、このスポーツカーメーカーは、初代カイエンの誕生から50年も前に、すでにオフロード車の実験をしていたのだ。
大林晃平: 以前にも紹介した「ヤークトワーゲン」、もちろん正真正銘のホンモノポルシェであり、希少性もあるため約1億円。ポルシェ博物館を目指すそこのあなた!これは、揃えなくっちゃいけません。ちなみに「ヤークト」とはドイツ語で「狩りをする」ことを表し、あのタイガー戦車は「ヤークト ティガー」とドイツ語では言うそうだ。「あずさ2号」をうたったあのデュオもヤークト、でしょうか(余談ながら・・・)。
タルボ ラーゴT150-C SSティアドロップ クーペ(1938年)
落札価格: 7,265,000米ドル(約10億1,170万円)。ティアドロップクーペのアールデコ調ボディは、パリのフィゴーニ&ファラスキ社製。1942年からベルリンの壁崩壊まで、旧東ドイツで行方不明となっていた。
大林晃平: タルボは、そもそもはイギリスの大衆車ブランドだが、イギリス資本でフランスに本拠を置く(ああ、複雑だ)会社に買収されたり、フランスにもイギリスにも工場があったり(これまた複雑)、クライスラーに買収されてフィンランドで生産されたり(フィンランドで車作っていたんですね)、そのあとはシトロエンに売却されたり、と実に複雑。この「ラーゴ」はフィーゴ&ファラスギが作った逸品のためフランス車と言ってよいと思う。「ブガッティ アトランティック」にも似たボディは美しいし内装のタンと相まって紫のボディは妖艶。だがこれに10億円出せるという人物は、日本にはおそらくいないだろう。
ポルシェ911 “サリースペシャル”(2022年)
落札価格: 3,600,000米ドル(約5億400万円)。ポルシェは、「911GTS」をベースに映画「カーズ」の劇中車「サリー」をワンオフで再現した。ホイールセットだけでも約50万円の価値があるという。収益金は、ウクライナからの難民などのために使われる。
大林晃平: もちろん今回売られたのは「左の」モデル。でも僕がコレクターだったら、右の車も同時に落札してガレージに並べておきたい、と言うか、そうするべきモデル。ホイール50万円というのはポルシェとしては普通のオプション費用なので、あまり驚かない。それにしても欧米のこういうチャリティの発想は素晴らしい。なんで日本ではないんだろう、クルマのチャリティオークション・・・。
ランチア ストラトスHF(1976年)
落札価格: 566,000米ドル(約7、924万円)。この「ランチア ストラトスHF」は、1976年に豪華客船「クイーン・エリザベス2号」でアメリカに海を渡って到着し、デイトナ24時間レースやセブリング12時間レースなどに参加した。
大林晃平: 「ランチア ストラトス」は今やコレクターにとってあこがれの一台。個人的にはこういうレース仕様ではなく、普通の(できれば地味な)ボディカラーで、街乗りとかに使ってみたい。価格はもうじき1億円の大台だが、意外と安く感じてしまうのは、やはり感覚がマヒしているのかも。ちなみに日本では現在中古車市場には1台もなし(037ラリーは一台、応談で出ています)。
メルセデス・ベンツ220Aカブリオレ(1952年)
落札価格: 117,600米ドル(約1,646万円)。日本人アーティスト、ヒロ ヤマガタは、すでに20台以上の「メルセデス220Aカブリオレ」をリファインしている。この個体は、「地上の楽園」シリーズの一部だ。
大林晃平: かつて(バブル絶頂のころに)人気沸騰していたアメリカ在住の画家、山形博導がペイントした「220Aカブリオレ」。20台以上もおなじようなモデルがあり、いずれもこういう派手派手なボディカラーを身にまとっていた。ヒロ ヤマガタのリトグラフ、そのころの価格の10分の1以下の価格になってしまっているが、自動車のほうはそこまで下落していない。まあこの派手派手な作品が嫌なら、ペンキを剥がして塗りなおせば、普通の「220A」に戻るはずですのでご安心を。ホイールまでちゃんと塗ってあるのが丁寧というか、なんといいますか。
BMW 328ロードスター(1938年)
落札価格: 698,000米ドル(約9,772万円)。BMWは「328」を464台しか製造しておらず、この個体は1938年にBMW初の正規ディーラーであるオートマグ社に納品された。
大林晃平: まだ高貴だったころのビーエム。日本でも複数のコレクターが所有していた(これそっくりのレプリカモデルもスイスのスバッロが製造していて、それもまた有名)。そんな「328」も今や1億円目前価格。「328」と言えばとにかく白い車、というイメージが強いので、このブラックと赤のコンビネーションはなんとなく違和感がある。なお、本物はとても小さいので、実物を目の当たりにすると驚くだろう。
ヘルムズベーカリー デリバリートラック(1936年)
落札価格: 246,400米ドル(約3,450万円)。珍車。カルバーシティ(カリフォルニア州)のヘルムズベーカリーは、1930年代には早くも移動販売を行っていた。
大林晃平: とてもとても1930年代のデリバリートラックとは思えないチャーミングさ。このままディズニーランドに無条件でとつげそう(カーズなどのアニメにも出演できそう)。ウッドの使われた内装、なんとも優しいカラーリング・・・。いい時代のアメリカの、素敵な雰囲気を満載。ほしいけど3,500万円はどうやっても無理。100分の1くらいの価格ならちょっとほしい。ちゃんとナンバーつきなのにご注意。
ブッチャリTAV2シャーシ(1930年製)
落札価格: 84,000米ドル(約1,176万円)。ブッチャリ兄弟は、1930年のパリモーターショーで、前輪駆動のシャーシを発表してセンセーションを巻き起こしたが、それ以後、今日に至るまで無名のままだった。
大林晃平: ブッチャリ・・・。初めて聞く方も多いかと思うが、10年くらいの間、二人のブッチヤリ兄弟で作っていた自動車メーカーで、「タイプ1」、「タイプ2」、「タイプ3」、「タイプ4」・・・と発展し、今回のこれは初期の「タイプ2」にあたる(ブッチャリはモータースポーツにも参加したと言われるが、記録などは残っていない)。もうじき100年になる車ではあるし、歴史的にも価値があるが、このシャーシだけ購入しても私にはどうしていいいのか、さっぱりわかりません。このまま椅子だけおけば動くんじゃないかな、とは思いますが・・・。
オークション最高額: フェラーリ410スポーツ スパイダー(1955年)
落札価格: 22,005,000米ドル(約30億807万円)。クラシックカーオークションのトリ(取り)と言えは、もちろん定番フェラーリだ。フェラーリは、4.9リッターV12とデュアルイグニッションを搭載したこの「410スポーツ」のプロトタイプのみを製造し、ファン マヌエル ファンジオが、スクーデリアフェラーリから1956年のブエノスアイレス1000キロメートルに出場している。
大林晃平: 10年ほど前までは「3億円超えた?!」ひょえー、と驚いていたはずなのに、今や完全に感覚麻痺。30億円って聞いても「そんなもんかもしれないなぁ」と思ってしまうが、30億円といえば、3億円事件を10回連続で成功させてもまだ諸費用などは払えない、そんな金額ではないか! このまま天井知らずに価格は高騰していくのだろうか?バブルのころ、日本でも製紙会社の会長が購入して話題になった「ひまわりの絵」をつい連想してしまう私である。

ちなみに、手振りで何百万ドルも入札してしまうのは映画の中だけで、入札する場合は事前に登録が必要となる。結局のところ、オークションハウスもあなたが誰と取引しているのかを知りたがっているのだ。なぜなら、落札者には、落札額を入金するのに、翌営業日の午後5時までしか時間がなく、その時間までにお金を用意できなければ、車を手放さなければならないからだ。

Text: autobild.de
Photo: RM Sotheby’s