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【新車情報】シトロエンがオリ(Oli)で示した、身近な電気自動車「少ないもので十分である」ということとは?

2022年10月16日

エコ ハマー?それをシトロエンはフランスに持ち込んだ。なぜなら、アメリカのGMが今、電動SUVの王者として恐竜を再生させて私たちを驚かせているのだ。シトロエンは今、その小さな弟分で私たちを微笑ませてくれる。いかにもシトロエン的発想で面白い。最小限でオーケー!家族向けの安価なEV。新型シトロエン オリとは?

「オリ」とは、カンヌのビーチを耕したり、シャンゼリゼ通りを草むらの縁に乗り入れたりしたいような、小さなキャラクターの名前だ。そして、「ハマー」と同じくフラットベッドを持つモデル。少なくとも、テールゲートを倒し、リアシートを片付け、リアウィンドウを格納すれば・・・、の話だが・・・。

メーカー間の競争から脱却するシトロエン オリ

「シトロエン オリ」は、一見、楽しそうに見えるけれども、その背景にはシリアスなものがあるのだ。シトロエンは、モビリティ革命の中で、価格の高騰により、多くの人にとって運転がより手の届かないものになりつつあるという苦い事実を認めている。このショーカーは、馬力競争から抜けることで流れを変えることができるかもしれないことを示すための提案だ。

ルーフもボンネットも段ボール製だが、ハニカムで補強し、保護塗料でコーティングすることで、より安定性を高めている。

今のままでは、ファミリーカーは、もはや現行の「C3エアクロス」のような22,000ユーロ(約308万円)ではなく、電気自動車の「C4」のような36,000ユーロ(約504万円)のような価格になるだろう。そして、そんなありきたりなe-carが、将来、大量生産で少しだけ安くなったとしても、その代償として、補助金が枯渇しそうで、結局、また高いお金を払わなければならないのである。

あるいは、そうでないかもしれない。そうならない可能性もある?フランスのメーカーは「オリ」で、メーカー間の永遠の軍拡競争に終止符を打とうとしているのだ。かつての肉屋のように、「もうちょっと欲しいな」と思うのが好きだった自動車メーカーに対して、オリは「基本に戻る」ことを前提にしているのだ。そのモットーとは?「less must be enough(足るを知る=過ぎたるは及ばざるがごとし)」。家族で乗れる日常的なクルマは、2万5千ユーロ(約350万円)を超えないようにしなければならない。

ピックアップフラットベッド: テールゲートを下げ、リアシートを畳み、リアウィンドウを格納すれば完成する。

航続距離を伸ばすには、消費電力と重量を減らす必要がある

だが、40kWh以上の電池容量は、この価格では不可能だ。しかし、シトロエンの開発者たちは400km程度の航続距離を想定しているため、100kmあたり10kWhまで消費を抑えなければならない。これはメルセデスの「EQXX」とほぼ同じだが、100万ユーロ(約1億4千万円)のメルセデス・ベンツのワンオフモデルが量産されたとしても、その価格はおそらく6ケタ(1,400万円超)になるだろう。

ステアリングの後ろにあるスロットにスマートフォンを差し込むと、初めてコックピットが動き出すのだ。

その解決策として、シトロエンは1000kg以下の車重を目標にした厳しいダイエットを行った。つまり、「オリ」は小さな「シトロエン アミ」の2倍強の重さだが、時速45km、最高速度75kmで、2人乗りのスペースがあるのだ。そして、50kWhのバッテリーを搭載した現行の「ë-C4」より500kgも軽いのだ。

3Dプリンターで作られたシート、段ボールで作られたボディパーツ

しかし、メルセデスがやたらと高価な素材でスリム化を図るのに対し、シトロエンの開発陣はイマジネーションを膨らませ、スマートで安価な素材で経済性を追求する。例えば、3Dプリンターで作られたシートは、ポリウレタンでできた空気のような骨格で、しかも30以上あった部品が7つで構成されているのだ。これは、フロントとリアのバンパーや左右のドアが同じであるのと同じで、組み立てコストを削減することができる。

コスト削減のため、フロントバンパーとリアバンパーを同一にした。ドアも同様で、両側とも同じものだ。

シトロエンは、ボンネットとルーフを段ボールで折りたたむことで、軽量化とコスト削減も実現している。心配する必要はない。「トラビー(トラバント)」とは違うのだ。ルーフもボンネットもハニカムで補強され、保護塗料でコーティングされているので、段ボールはより安定したものになっている。

スニーカーソール素材を使用した無地の内装とフロア

また、インテリアにもこだわりがあり、見た目も非常に美しい。シンプルなドアオープナー、ヒンジ式の窓、そしてステアリングホイール横のスロットにスマートフォンをスライドさせることで初めて動き出すコックピットなど、魅力的なミニマリズムを駆使して、明らかに空気感のある空間を演出している。

ロゴの下にある充電用ソケット: 40kWhのバッテリーで400kmの航続距離を目標とする場合、100kmあたり10kWhまで消費電力を抑える必要がある。

なぜなら、シトロエンはアップル社に対抗し続けるのではなく、シリコンバレーとの競争に見切りをつけながらも、スマートフォンの知能を活用しようとしているからだ。シトロエンのデザインチーフであるピエール ルクレルクは、このようなデザインは、さらに進化しつつあり、すでに実現化しつつあると主張している。

もちろん、「オリ」でデモンストレーションしたことをすべて実行できるわけではない。「しかし、コンセプトカーのアイデアは、その後のモデルに影響を与え、シトロエンは手頃な価格の電気自動車を作ります」と、「オリ」のメーカーは約束し、したがって、「iD.2」の計画を持つVWや、電気自動車「R5」のルノーと同じ方向に進んでいる。

結論:
ぜひ作ってほしい。いや、ぜひ、作ってください。3Dプリンターで作ったプラスチックシート、板金ではなく段ボール – もちろん、「シトロエン オリ」は少しばかりオーバーシュートしている。しかし、方向性は正しく、手頃な価格の電気自動車が登場する時期が来ているのだ。それに、「オリ」は見た目もよく、驚くほど多機能で、楽しさを犠牲にすることなくお金の節約を約束してくれるのだ。そして、そういうクルマを作れるのは、シトロエンだと思うのだ。だから、フランスの友人たちよ、金と体重はケチるが、アイデアはケチるな。そして、「ハマー」の赤ちゃんを我々の国にも連れてきて!

【ABJのコメント】
シトロエンの今回のスタディモデル、まずはそのスタイリングや新しいシトロエンのエンブレムに目を奪われてしまうが、この車の神髄はそんなところにはない(左右同じドアや前後どういつのバンパー、直角に規律したウインドー = できるだけ重いガラス面積の低減、といった機能面でも決しておろそかにはなっていないが)。

では、この「シトロエン オリ」のどこに着眼すべきか? それはもう決まっている。性能の上限をしっかりと設定し、最高速度を見切り、できるだけ軽いBEVを作るという明確で正しい目標を設定し、それに向かって車を作ったということである。私は電気自動車を否定しないどころか、いつかは所有してみたい、と思っている。静かで滑らかでガソリンスタンドに行かなくていい・・・。それは素晴らしいことじゃないか。だが今のところ乗るべき電気自動車はないし、どの車も魅力的ではない。なぜならどの車も重く、大きく、高価で、どれも自分で購入する気にはどうしてもなれない。さらにどの車も加速イッパツを重視したような高性能モデルになることも多く、そんな車が本来の電気自動車の魅力なのだろうか、というと、それは違うんじゃないか、と疑問を抱いてしまう。そんな重く高性能な電気自動車ではなく、最高速度はそれほどでない代わりに軽く、コンパクトで航続距離も決して悪くない、そんな新しい方向を向いて作ったのが今回の「オリ」、である。

もちろんまだコンセプトモデルであり、このような車が生産されるまでには乗り越えなくてはいけないハードルは多数あるだろう。だが自動車と人との関係をできるだけ身近にして、生活の中でも軽く、気の置けない存在として残しておきたい・・・。そんな開発陣の暖かい気持ちがこの車には感じられる。人を驚かすような加速力も最高速度もないけれど、そんな世界よりも自動車にとって本質的である、(速度は遅くとも)自由に人の運転で移動すること、それを形にすると現代の「2CV」はこうなるのか、と思いながら「オリ」のフォトをしげしげと眺めた。

Text: Thomas Geiger
加筆: 大林晃平
Photo: Stellantis N.V.