1. ホーム
  2. 面白ネタ&ストーリー
  3. 【サステナビリティ】次の10年に対するメルセデスの構想 メルセデスのフューチャーラボを訪ね、自動車の明日について尋ねてみた

【サステナビリティ】次の10年に対するメルセデスの構想 メルセデスのフューチャーラボを訪ね、自動車の明日について尋ねてみた

2022年10月7日

明後日からはこんな生活、運転になるのだろうか?次の10年に向けて、私たちはどのように愛車をドライブしていくのだろうか。そして、クルマはどう変わっていくのか。我々は、メルセデス フューチャーラボを訪ね、明日のサステナビリティについて尋ねてみた。

未来の都市は2層構造で形成される。しかし、それは環境活動家によって考え出されたものではない。このアイデアは自動車メーカーで自動車社会の未来に関して研究をしている女性、マリアンヌ リーブ教授・博士が創り上げた構想で、シュトゥットガルト、ソウル、上海、ロサンゼルスの各市オブジェクトの写真を作成した。それらの都市では、金属を減らし、緑と人のためのスペースを増やすなど、どこでも似たような光景に見えるという。

リーブ博士は、メルセデスのために世界中を飛び回り、新しいモビリティのトレンドを探っている。「コペンハーゲンは自転車の街として10年先を行っていて、二輪の高速道路まであるんですよ」と彼女は興味深く語る。しかし、彼女はソウルのことを「8車線の道路を緑化し、川を作ったのだった」と面白がってもいるのだ。「こうして人々は自分の居場所を取り戻していくのです」と未来の都市構想を語る。

ひょっとしたらメルセデスはもうこれからはクルマを売る気がないのだろうか? 例えば、狭い都心部などでは、もはやどこでも運転できるわけではなく、その場合は配達のためのクルマだけが運転を許可されることになるとも考えられる。リーブ博士は、「今後10年の間に、ドローンやロボット、あるいは電子宅配車が登場して、注文した人のところに荷物を運んでくれるようになるでしょう」と言う。

メルセデス・ベンツのために未来を研究している女性は、マリアンヌ リーブ教授・博士で、年齢は59歳だ。

では、クルマはどうなるのだろう?「自律的に駐車するようになるのです。ドライバーが降りると、車が駐車場に入るという仕組みです」。人が車に要求し、車は走り去り、持ち主を中に入れる。街中どこでもというわけではなく、狭い地域で。「大都市にはまだ自家用車があるが、自家用車のない地域も増えていくだろう」とトレンド研究家は予言する。

地方における需要志向の地域交通

それでは田舎では車はどうだろうか? リーブ博士にとっても、カーシェアリングは通常、そこに価値を見いだせない。「しかし、将来は誰も乗っていないバスが村を走ることはなくなり、需要に応じた地域公共交通を経験することになるでしょう。そして、おそらく2035年までには、すでに自律的に、つまりドライバーなしで走る環境にやさしい公共交通が可能になっていることでしょう。美しい新しい田舎暮らしです」と博士は未来についての構造を述べる。

AUTO BILDの記者アンドレア メイに明日の素材を見せるベリンダ ギュンター(中央)とエヴァ ヴェッケンマン。

リーブ博士の未来研究所が「明後日」を研究している一方で、ベリンダ ギュンターさんとエヴァ ヴェッケンマンさんは、明日の自動車界を考えている。そのジャンルは正確には、新素材についてだ。

メルセデスEQXX電気自動車に搭載されたサステイナブルファニチャー

インテリアデザインを専攻し、メルセデスのカラー&トリム部門を率いるベリンダ ギュンターさんは、「EQXX」エレクトリックスタディモデルにサステナブルな素材を装備した。生地はすべてペットボトル、古いカーペット、TシャツなどのリサイクルPET(ポリエチレンテレフタレート)でできている。資源を大切にするために、一度生産され廃棄されたものを再活用する、つまりリサイクル活動だ。

ベンリンダ ギュンターさん(43歳)は、ファッションデザインを専攻していた。彼女は、サステナビリティが美しい外観を排除するものではないと考えている。

スエード調のシートカバーは、動物の皮ではなく、マイクロファイバーフリースを使用している。フロアマットは化学繊維のパイルカーペットのように見えるが、素材は竹だ。そして、3Dプリンターで作ったゲーム機の穴あきプラスチック部品は、紙おむつやパッケージ、つまり家庭ゴミだったものだ。メルセデスにとっては「The Next Green Thing」であり、ケーブルダクトがかつてゴミだった素材で作られる日も近いだろう。

車のタイヤがドアハンドルのプラスチックに

廃棄物を新しいものに変える。ちなみに、これは使用済みの古い車のタイヤでも可能だ。エヴァ ヴェッケンマンさんは、車のドアの取っ手を見せながら、「私たちのパートナーは、近いうちに古いタイヤの熱分解油を使って、このドアの取っ手用のプラスチックを生産するようになるでしょう」と語る。「タイヤからゴム、鉄、繊維を取り出し、ほぼすべてを再利用しています」と説明してくれた。「石油をベースに生産されたものは、リサイクルされ、ずっと生き続けることができる」というのが彼女のモットーだ。

エヴァ ヴェッケンマンは27歳で、繊維技術を専攻していた繊維のエキスパートだ。

そして、さらに別のプロジェクトとして、なんとメルセデスはキノコを栽培している! キノコの菌糸、つまり根っ子の組織を活用しようと考えている。「革(のような)小物」にすることができると言うのだ。「革のように見えるけど、そうではないんです。素晴らしい素材です」とベリンダ ギュンターさんは楽しそうに語る。

これらのプラスチック部品は、3Dプリンターで作られたものだ。昔は家庭ゴミだったものだ。

メルセデスは、自然に働きかけたい

また、同僚のエヴァ ヴェッケンマンさんは、「バイオテクノロジーによって、私たちは自然を利用することができるのです」と付け加えた。キノコの”革”やサボテンの繊維をシートフィラーに使ったビーガンカーが新しいラグジュアリーになるのか?「いずれにせよ、新しい素材という形で代替品を提供しなければなりません。意識の変化は確かに顕著です」とデザイナーは確信をもって語る。おそらく、すべてが明日より過去のほうが良かったという考えは、すでに時代遅れになりつつあるのかもしれない。

【ABJのコメント】
メルセデス・ベンツが昔からリサイクル素材に熱心だったことは有名で、たしか「W124」のころのグローブボックスの中の素材はリサイクルのものであったと記憶している(シートには天然ヤシを使っていたが、あれは環境対策というよりも、汗を吸いやすいとか通気性の問題だったはず、である)。

もちろんメルセデス・ベンツだけではなく、トヨタもリサイクルに関してはかなりの対応をしているし、ほかのメーカーももちろん研究も開発もしていることだろう。今回の記事を読んで感じるのは、想像もつかない素材を使うこともあるものだ、という点で、まさかキノコを栽培して研究しているとは想像もつかなかった。こういう想像もつかない研究開発をしていることが最近の企業には多く、某鉄鋼メーカーは海洋の環境を保つために海藻の研究をしているというし、クモの糸を熱心に研究しているメーカーもあったと記憶している。

まだまだ天然の中には私たちには達成できないほどの素材や技術が眠っているのだろうと思う。やはり命ある自然というのはなんともすごいと思うと同時に、それを日夜探している研究者にも頭の下がる思いである。つぎはどんな新素材や知恵が生まれてくるのだろう。まだまだ未知の世界は身の回りに存在しているのである。(KO)

Text: Andreas May
加筆: 大林晃平
Photo: Mercedes-Benz Group AG