【テスト】リヴィアンR1TとR1S スタートアップEVメーカー リヴィアンの電動ピックアップとSUVを試す
2022年9月25日
アメリカのBEVメーカーであるリヴィアンがピックアップとSUVを合体させる。リヴィアンR1TとR1Sのダブルパック、e-ピックアップトラックで初ドライブ、e-SUVに初対面。
リヴィアンの世界初の拠点が、サーファーの楽園であるロサンゼルスのベニスにオープンした。アメリカのBEVメーカーであるリヴィアンは、e-ピックアップを開発した米国の新興企業である。我々はリヴィアンを訪問し、新型電動ピックアップトラック、「R1T」をドライブし、SUVの新型「R1S」にも触れてみた(フォトギャラリー参照)。
スーパースポーツカー並みの走行性能
「リヴィアンR1T」に乗ると、これまでピックアップ車に乗ってきた人ならカルチャーショックを受けるだろう。なぜなら、この2.7トンのクルマは、ウサギのように機敏で軽快、コンパクトカーのような回転半径を持つ、電動スポーツカーのような走りをするからだ。そして、スーパースポーツカーのような「スポーツモード」での加速。4基の電動モーターにより、なんと「R1T」は、わずか3秒で、0から100km/h弱まで加速するのだ。電気駆動のパワーは、トラックの重さを完全に克服している。
リヴィアンではすべてがデジタル化されている
2列目シートのスペースも広く、リヤアクスルの前にハッチのようなものがあるのが特徴だ。両サイドから開けられるこの収納スペースには、キャンプ用品のキッチンが丸ごと収まる。さらに、フロントボンネットの下にある巨大なスペースは、BEVのバッテリーのおかげで冷蔵庫を丸ごと稼働させることができるようにもなっている。「これはビールのために」とリヴィアンの社員は言って、ニッコリした。彼は、米国のトラック運転手の好みを知っているのだ。
【車両データ】
モデル | リヴィアンR1T クゥワッドモーター ラージパック |
エンジン | 4基の電動モーター(各車軸に2基ずつ) |
最高出力 | 562kW(754PS) |
最大トルク | 1120Nm |
電池容量 | 135kWh |
航続距離 | 最大500km |
充電速度 | 最大224km/20分 |
駆動方式 | 全輪駆動、入力ギア |
全長/全幅/全高 | 5514/2077/1986mm |
乾燥重量 | 2670kg |
0-96km/h加速 | 3.0秒 |
最高速度 | 201km/h |
基本価格 | 79,500ドル(約1,090万円)より |
そして、このたび、米国のお客様に最初のリヴィアンが納車された。スタートアップ企業にはつきものだが、生産の遅れや資金面での苦労もあった。また、リヴィアンでは、12,000ドル(約165万円)もの価格上昇を余儀なくされた。しかし、「R1T」や「R1S」がベースとするプラットフォームを使って、現在、リヴィアンはバンも作っているのだ。そして、アマゾンから10万台の注文を受けたとされる。それが財政的な追い風になる。
e-ピックアップの競争は激しい
現在電動ピックアップトラックの市場での競争は激しさを増している。それは強力なライバルである「フォードF-150ライトニング」、「シボレー シルバラードEV」、そして「ハマーEV」が市場投入されるからだ。そしてさらにはテスラの「サイバートラック」も・・・。
リヴィアン社に戻ると、「このトラックは他のトラックよりカッコイイね」と娘をリヴィアンの保育園に迎えに行く途中のバーバンクのスコットさんが親指を立てながら笑顔を見せた。プライベートでは、シボレーのトラックとシボレーの「ボルトEV」に乗っていると言う。彼にとって、「R1T」は「完璧な組み合わせ」なのだ。以下、リヴィアンの新型SUV「R1S」に関する情報は、フォトギャラリーとともにどうぞ。
リヴィアンR1S
結論:
e-ピックアップがやってくる。「リヴィアンR1T」は、電動フォードF-150と並んで、市場に初登場した。そして新型SUV、「R1S」には、多くのファン層が存在する。アマゾンからの大量発注は、新興企業にとっては生命線といえる。
AUTO BILDテストスコア: 2
【ABJのコメント】
つい数日前、アメリカの今後のEV(ECOカー)に対しての方策が発表されたばかりで、それによればアメリカ国内で生産された自動車(だけではなくパーツやバッテリーなども含まれる)でなければ様々な補助を受けられない、という「インフレ抑制法」にバイデンがサインしていたニュースであった。どのようなものなのか、具体的に書いていくとものすごく長く複雑なものになってしまうが、とにかく連邦税の税額免除額や様々なパーツを含めた北米生産比率などが、大変厳しく制定されている。そういう観点から見ると、今回のリヴィアンのBEVはアメリカ製だからよかったねぇ、という話になるかというと、実はそういう簡単な話ではなく、この車に使われているバッテリーなどなどのパーツの生産国が大きく関係してくる。さらに今回制定された施策の中で気になるのはBEVのピックアップかSUVの場合、8万ドル(約1,120万円)以下が補助金対象になるそうで、そういう場合72,500ドル(正式には、72500ドル=約1,015万円以上)というリヴィアンは、ギリギリセーフなのか、オプション装備を加えたら超えちゃうからアウトなのか、実にビミョーな感じがする。
という、なんともややこしくつまらない話になってしまったが、BEVとか水素自動車というと、ついこういう小難しい補助金とか控除、みたいな話題になってしまうが、一台の自動車としてみた場合、デザインなどは個人的に好感が持てるものである。相変わらず、ものすごい加速性能を誇っている部分に関しては、もうBEVだからといってもそういう部分を売りにしなくてもいいじゃないか、という気持ちにもなるが、やはりこういう車の場合、アメリカでは大きなセールスポイントになるのであろうか。それにしても、まだまだ不透明ながらも、アメリカにおけるBEVの動向や政策からは目が離せない状況が続くことは間違いない。(KO)
Text: Hauke Schrieber
加筆: 大林晃平
Photo: Rivian