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【ドライビングレポート】スポーツチューンされたキャデラック エスカレード V ESVに初試乗 そのインプレッション!

2022年9月3日

682馬力超のエスカレードは現代のマッスルカーだ。キャデラックの未来は電気自動車だ。しかしGMブランドはまだ内燃機関のV8も賞賛している。スポーツチューンを施されたエスカレードV ESVほどフィットするものはめったにないだろう。

ここ数ヶ月、キャデラックは2台の新しい電気自動車モデル「リリック」と「セレスティック」を発表し、プレミアムリーグに大きな波紋を投げかけている。ライバルのダッジは、すでにV8電動化のアメリカ的なあり方を示しているが、近未来の電気自動車にまだ乗り気でない人は、このキャデラックで本物の内燃機関に酔いしれることができる。

「キャデラック エスカレード」は、スポーティな「V」バージョンで輝く王冠をかぶる。特に長距離の移動では、もう車から降りたくなくなるほどだ。この新しい「エスカレード」のライバルは、アメリカ市場だけでなく、世界中にほとんど存在しない。

キャデラック エスカレードV ESVは、5.76mという巨大さで、682馬力のフラッグシップだ。

「もちろんBMW X7やレンジローバー、メルセデスGLSもありますが、実はもっとリンカーン ナビゲーターに注目しています」とプロダクトマネージャーのジョーダン ガーウッドは語り、「他のモデルはもっと小さく、エクステンデッドホイールベースバージョンがないため、違う客層に向けたものです。従って、生産数がかなり違います」と説明する。

最高の贅沢、それなしには成り立たない

「キャデラック エスカレード」は、アメリカ大統領が乗り回すような巨大な高級車だ。XXLバージョンは、リアジェットではこれ以上ないほど豪華な6つの個別シートを装備している。「販売構成は70:30で通常版に軍配が上がっています」とガーウッドはさらに説明する。「ESV」のロングバージョンは、最高のラグジュアリーを求める方が多いのです。それがないと存在する意味がないんです」。

そして、「キャデラック エスカレードV」のスポーツバージョンにも、まさにこのXXLのバリエーションが用意されている。特にブラックの「ESV」は、パワフルでありながら、エレガントな高級SUVだ。

36個のスピーカーで、華やかなエンターテインメントをお届け。GMは、そのうちの4個をフロントのヘッドレストに配置した。

インテリアも38インチディスプレイ、クライメートコントロール付きレザー個別シート、セパレート式クライメートコントロールと、豪華な内容になっている。エスカレードのリアには、豊富なスペース、2つの12.6インチタッチスクリーン、36個のスピーカーからなるAKGプレミアムサウンドが用意されている。

スピードメーターとインフォテインメントディスプレイのサイズは38インチだ。レザーをふんだんに使ったインテリアは、とてもよく仕上がっているように見える。

キャデラックが平凡な作りで知られていた時代は終わった。「エスカレード」の「V-Sport」バージョンは、革張りの内装やハンドリングなど、目を見張るような仕様になっている。

682馬力のV8カタパルト

「エスカレードV ESV」は、ライバル車と同様、ターボチャージャー付き8気筒エンジンを搭載している。ターボでも排気量に代わりはない。エスカレードの中で最もスポーティなこのモデルは、おなじみの6.2リッターV8エンジンを搭載し、その存在感を示している。この自由な呼吸をする8気筒エンジンは、ドライバーの要求に応じて深呼吸をし、682馬力のパワーを発揮してドライバーをシートに押し付けるのだ。

巨大なスクリーンやヘッドアップディスプレイでドライバーがスプリントを確認しながら、アメリカの巨人がスタンディングスタートから時速100kmまで約4.5秒で疾走すると、自社製10速オートマチックは変速ショックがほとんどない。

エスカレードのV8は682馬力、最大トルクは885Nmを発揮する。しかし、100kmあたり20リットルのハイオクガソリンが必要なのも事実だ。つまりリッター5km程度である。

8気筒の通常の熱狂に物足りなさを感じるなら、やや青白いトランスミッションセレクターレバーの前にある比較的目立たないVスイッチを押せば、巨人は凄まじい咆哮と雄叫びを挙げ始める。一方インテリアの16:9の巨大なスクリーンには、シャシー、ステアリング、トランスミッションなどの各種モード設定が前面に集中的に表示される。

心地よいサウンドと885Nmのトルクを実現

好みや路面に応じて、Vモードをセレクトすることで、燃焼の巨体を本当にスポーティにすることができる。V8エンジンは、特に強力な682馬力のバージョンで真価を発揮する。一部のハイパーカーのように顔立ちが崩れることはないが、最大トルク885Nmのおかげで加速は猛烈だ。

さらに、4本のテールパイプから周囲に吹き出す8バルブエンジンの唸るようなサウンドがドライバーを魅了する。人工的な音がする電気自動車とはまったく異なり、パワーアコースティックサウンドの極致を味わうことができる。

US版のみ200km/hの高速化

「キャデラック エスカレードV ESV」は、その巨大なサイズから想像できる最も速く、最もパワフルなコンドミニアムの1台だ。ただし、アメリカがVの最上級モデルの多くに走らせている時速155マイル(250km/h)は、アメリカ仕様には設定されていないのが玉に瑕だ。ジョーダン ガーウッドによると、現在のところ最高速度は200km/hに一応設定されているという。

重厚感: ESVのトランクは、後席を倒すと4,043リットル(!)にもなる。

700馬力のパワーSUVの仲間の中では、明らかに少なすぎる最高速度のため、輸出モデルにはもっと高速度なバージョンが必要だ。

目標: ラップタイムよりも走行快適性

アメリカでは、とにかく旅の快適さを重視するユーザーが多いのが特徴だ。そして、このスポーティな巨像は、装備や長距離走行の資質に関しても、ほとんど何も望めないのだ。2.8トン近い車重を持つSUVのサスペンションは、電子制御ダンパーがでこぼこ道や急カーブでピッチングやローリングを抑制するのに十分な性能を発揮しているのだ。

ドライビングレポート: キャデラック エスカレードV ESV

キャデラックの未来は電気自動車だ。しかしGMブランドはまだV8を賞賛している。その点で、スポーツチューンの「エスカレードV ESV」ほどフィットするものはない。
現行エスカレードのロングバージョンは全長5.76mで、VW T7より80cmも長い。682馬力と885Nmのトルクを持つV8は、そのフィット感を維持する。
室内もゆとりのある広さだ。個別シートと3列シートで最大6名まで着席可能だ。運転席と助手席には、38インチのモニターから重要な情報が表示される。
インテリアを彩るたくさんのレザー。特に長時間の移動では、シートから降りたくなくなるほどだ。AKGの36個のスピーカーのうち、4個をフロントヘッドレストに配置したのが賢いところだ。
足回りはタイトでしっかりしている。エスカレードの車重は2.8トンもあるので、電子制御ダンパーは大変な仕事である。しかし、彼らは成功している。
「VW T7」より1メートル近く長く、最大4,043リットルという巨大な収納スペースを持つキャデラックはバン型車と互角に戦える。スポーツバージョンは4本のテールパイプが特徴的だ。
米国では、コントロールユニットが6.2リッターエンジンを200km/hで制御している。しかし海外版はもっと速くてもいいはずだ。
22インチホイールがキャデラックの走りを支えている。パワーブーストとVモードのおかげで、キャデラックは特にスポーティだ。
0から100km/hへのスプリントは4.5秒で終わり、10速オートマチックの出番が多い。シャシー、ステアリング、トランスミッションをインフォテインメント画面上で手動調整することができる。
これ以上のクルマはありえない! しかし、XXLサイズのSUVは100km走行あたり20リットルという大量のガソリンを消費することも事実だ。そんなキャデラックの価格は15万USドル(約2,000万円)から。すべてのオプションを装着したスポーティなロングバージョンは、さらに3,000ドル(約40万円)高くなる。

運転席と助手席のスペースも、荷室と同じように十分に確保されている。テールゲートが電動で開くだけでなく、ロングステップが電動で展開し、まるで魔法のようにドアが閉まることも、「エスカレードV ESV」の優れたイメージに合致している。

むろん、このような車は、ヨーロッパにもファンがいて、最低価格15万USドル(約2,000万円)を喜んで払ってくれるだろう。そして安全システムなどを搭載したXXLバージョンは、3,000USドル(約40万円)も高くなる – これもまたアメリカならではだ。

【ABJのコメント】
キャデラックの魅力、それは大きさと豪華さと安楽さであろう。という僕みたいな感覚の人はもはや古くさく、21世紀のキャデラックは高性能とスポーティさを魅力として前面に出してきたモデルも多くあった。そんなスポーティなキャデラックを見るたびに、なんとなく違和感を覚えていた私だが、最近発表された「リリック」と今回の「エスカレード」を見ると、キャデラックはまだ安楽さと豪華さを忘れてはいないんだという安堵感をちょっと抱いた。

もちろんドデカイ4ドアセダンにルーズクッションベンチシートとコラムATのような自動車などを連想する人はもはや絶滅危惧種なのかもしれないが、それでもスポーティさだけではなく快適さや安楽という、一番大切で維持しなくてはいけない部分を忘れていることはなさそうだ、と今回の「エスカレード」を見てそう感じた(今回の一台は黒い内装色がなんとも味気ないが、ほかの色もきっと選べるのだろう)。

SUVであったとしても、簡単に体力を使わず運転することができ、しかもゴージャスな空気感を演出する存在、そういう他の車ではなくキャデラックであることに自信を持って生み出された一台、それが「エスカレード」なのだろう。であるからして、絶対的な性能とかハンドリングは追求してもしょうがないし、追求するべきではない。リッター5kmとい燃費も仕方ない、と割り切るべきだし、この時代にそういう数値を持つSUVを堂々と発表することは、もはや清い、とさえ感じてしまう。

さすがにボンネットの上に角をつけてカーボーイブーツとテンガロンハットみたいな自動車はそれこそ絶滅危惧種ではあるが、巨大で豪快なキャデラックが内燃機関の自動車として悪びれることなく登場したことに、なんとなく安心感さえ抱いた。(KO)

Text: Stefan Grundhoff
加筆: 大林晃平
Photo: General Motors Co.