ポルシェミュージアムツアー
2020年3月29日
ツッフェンハウゼンのスポーツカーコレクション
ポルシェファンのための巡礼地:シュトゥットガルト-ツッフェンハウゼンで、ポルシェは壮大な建物の中に、自社の歴史上、最も美しい車たちを展示、訪れる人を魅了している。
70年以上にわたって高速車を製造しているポルシェは、2009年1月、シュトゥットガルトのツッフェンハウゼンのポルシェ本社のそばに在るポルシェ博物館を全面的にリニューアルし、オープンした。新ポルシェミュージアムには、100台近い同社の歴史の中で最も美しく、最も重要な車が展示されている。壮大な建物の中でポルシェは展示されたモデルを通してファンを魅了する。建物自体はまるで芸術作品で、巨大なボルトが空中に自由に浮かんでいるように見える。たった3本の柱が、巨大なホワイトボックスを60メートルの高さにまで持ち上げ支えている。それは建物ではなく、まるで大きな橋のようだ。ポルシェの従業員たちはオープン後すぐに「Flieger(パイロット)」という愛称を付けた。
ミュージアムリニューアルにかかった費用は1億ユーロ(約125億円)
建設中の最もエキサイティングな瞬間は、エンジニアたちが、長さ140メートル、35,000トンの直方体をゆっくりと3本の支柱の上に据えた時だった。そして見事成功させた。しかしそこに至るまでは困難の連続だった。複雑なデザインが厳密なスケジュールを完全に混乱させてしまう。判断を誤った鋼桁が建設を半年も遅らせた。ウィーンにオフィスを構える建築家、デルーガン マイスルは、その野心的な設計に多くの神経を使った。しかしその冒険はそれだけの価値があった。約1億ユーロ(約125億円)をかけて、ポルシェはツッフェンハウゼンに世界に誇る自動車ミュージアムを作り上げた。そこには特別なものも一貫したものもない。それは巨大で高貴なガレージに過ぎない。しかし豊富な宝を持つ自動車メーカーの歴史のショーケースだ。 ここにはアドベンチャーはない。あるのは高用量のポルシェのみだ。
ほぼすべての展示物は運転可能な状態にある
多くの場合、博物館は過去の物の管理場所だ。だがここはそうではない。エキスパートたちが、908や917などのモータースポーツの宝物をセレクトして並べ、訪れた人々が時代とその興奮や喜びを分かち合う。それがコンセプトの核を形成している。「ほとんどすべての展示車は運転可能です」と、80点以上の展示品のオープニングで、博物館の責任者であるクラウス ビショフは述べた。すべての展示車を可動状態で保存するということはエンジニアやメカニックにとって、非常に大きなミッションだ。したがってミュージアムのそばにワークショップがあるということは非常に役に立っている。ミュージアムに入ると長いエスカレーターがあって、来場者を展示場にまで運んでくれる。圧倒的な第一印象だった。レベルこそいくつかに異なっているが、展示室は1つだ。
ポルシェのアイデアの火花
したがって、多くのミュージアムを訪れる人の予想とは異なり、彼らを出迎えるのはUr-356ではない。そこに待ち受けるのは、裸体で、光沢のある流線型のボディだ。ベルリン‐ローマ車として知られるタイプ64を展示している。フェルディナント ポルシェ博士が、1939年から一貫して、彼のフォルクスワーゲン開発に関するアイデアに先駆けて考え出したテスト車両だ。生まれたのは3台のみで、その後まもなく戦争が始まった。ポルシェ博士には8気筒や10気筒エンジンをミッドにマウントするという計画には至らなかった。彼の頭に浮かんできたのは、性能、ライトウェイトな構造、そして空力特性のことだった。タイプ64こそがポルシェの構想の火付け役だった。むろんポルシェ博士の作ったVWビートルもそうであるし、1949年にポルシェが開発を始めたチシタリアの全輪駆動式で12気筒ボクサーエンジンを搭載した、シングルシーターレーシングマシンも忘れてはならない。フェラーリにはそのようなものすら存在しなかった。ここから、ポルシェの物語は現代へと進化する。 オーストリア北部の町、グミュントで生まれた伝説的な最初のロードスターである「ナンバー1」は、356 B 2000 GSカレラGT、914/8、そしてワイドなレンジの911モデルだ。そしてさらに研究は続き、917アルマダ(1978 Martini Racing Porsche Le Mans Armada)が多くの人々を魅了した。ポルシェはタルガフローリオとル マンで多くの勝利を獲得、それらのパルクフェルメで自らを祝福した。
天井から956が吊り下げられている
956がポルシェと呼ばれるものを象徴している。展示車は天井からぶら下がっている。 そのボディは非常に多くのダウンフォースを生み出し、逆さまに運転することさえできたのだ。しかし、このクルマでさえ、わずか20分間のねじ回しの後でスタートする準備ができている。不幸にして、このミュージアムに訪問できない方へは、ある訪問者が残したメッセージ、「わたしは今レースをしています」を伝えよう。運がよければ、かすかにパチパチという音も聞こえるはずだ。惜しいのは、ここで永遠にリタイアするには、すべてのクルマが未だにワイルドすぎることだ。
一目でわかる博物館
ポルシェ博物館は、クリスマス、正月、正月を除く年中、火曜日から日曜日の午前9時から午後6時まで営業しています。 入場料は8ユーロ(約1,000円)、以前に比べて4ユーロ(約500円)割引されている。駐車料金は2ユーロ(約250円)だ。
Photo:Werk
すべてのスタートラインにポルシェはいた。1961年、シュヴァーベン(Swabians=ドイツ南西部の人々をさす言葉)はF1に参戦し、1962年にはダン ガーニーが新しいポルシェ804(左から2番目)を駆ってフランス グランプリで優勝した。これは現在に至るまで、100%ドイツ製のF1マシンの最後の勝利である。
Text: Andreas Lindlahr