【初試乗】新型メルセデスAMG SLに初試乗 AMG製SLカブリオのドライビングパフォーマンスとその感想
2021年10月24日
新型は再び祖先のようなスポーツカーになる。
10月中旬に発表される新型メルセデスAMG SLの最終プロトタイプに初乗車。メルセデスはかつてのSLのアイデアを再現しようとしている。初試乗。
294台。
これは、メルセデスが、2019年の最後のフルセールスの年に、ドイツで売却した「SL」の台数だ。いかに少なかったかわかるだろう。
SLはAMG GTと技術的なプラットフォームを共有している
我々が乗っているのは新型の「メルセデスSL」だが、そのこと自体が自動車の歴史上の新たな一歩となる。1954年のガルウイングに始まり、ブランドを超えたスタンダードを確立し、その名声を形作ってきた「SL」だからだ。2021年10月中旬に正式に発表される前に、今日、一時的に乗ることの許された次期型「SL」、「R232」シリーズも、同じようなことが期待されている。メルセデスの子会社である、AMGで初めて開発されたこの新しい「SL」モデルは、次期型「AMG GT」にも採用される、第2世代の自社製アルミニウム構造をベースとしている。この点では、新型「SL」は、先代「SL」の後継モデルであるだけでなく、もはや存在しないであろう「AMG GTロードスター」の後継モデルでもある。しかし、せいぜい、祝福された「107」シリーズや「129」シリーズ以来初めてとなる、リアシートが復活したものの、「Sクラス カブリオ」の後継としては、まったく不十分なものである。「問題は、誰が後ろに座るのかということです」と、AMGのR&Dボスであるヨッヘン ヘルマンは笑う。
シャシーの精度にはかなりの重点が置かれた
しかし、彼はそんなことは気にしていなかった。プロダクトレンジをスリム化し、販売台数では小人のようになってしまった「SL」を、AMGプラットフォームの力を借りてスポーツカーとして救済するという、企業としての基本的な決断だったのだ。「今、SLを買う人は、私たちのロゴがないと買えません。これは紛れもなくAMGモデルなのです」。彼が問題点として指摘するのは、前後両アクスルのほぼ中央に位置するフロントシートポジションで、角度のある道路では、車幅が掴みにくくなってしまうため、これは緊急の課題だった。短いフロントには、おなじみの4リッターV8または直列4気筒が収まる。しかし、より長い直列6気筒は、おそらく入らないだろう。テクニカルな詳細は伏せられており、プラグインハイブリッド付きのバリエーションの数も伏せられている。
SLは依然美しく転がることができる
3本スポークのステアリングホイールのスイッチをコンフォートに設定しても、「SL」はスポーツカーのように走り、ドライでしっかりとした減衰力を持っている。「気持ちよく走れること、それがSLの条件です」とヘルマンは言う。そして、本当に不快ではない。しかし、ラグジュアリークーペの走りは別物であり、今後「SL」を購入する人はドライビングダイナミクスを楽しむべきだと指摘した。
そして、一年間で294台の新規登録台数の話に戻ろう。この50年間、SLは、コンフォートカーとして活躍してきた。特に先代の「231」シリーズでは、それが顕著だった。新型「SL」は、今や需要の少ないコンフォートカーではなく、ドライバーズカーとして生まれ変わるのである。
結論:
シャシー、シート、パワートレイン、すべてがスポーツカーというアイデアに沿って仕上げられている。それは我々を納得させるものだが、従来の(残存)顧客層との関係を断ち切ることは、明らかなリスクとも言えよう。
いよいよ新しい「SL」も発表までカウントダウン、である。何回も書いてきたことだが、今回の「SL」の注目ポイントは、幌に戻るオープントップと、AMGブランドとして登場すること、である。幌に戻るオープントップは個人的に大賛成で、機能性よりも雰囲気向上に大いに貢献するだろう、と思う。やはり「SL」ともなれば、ラグジュアリー感がなくてはいけないし、メタルトップでは醸し出せない世界なのだから。一方、AMGブランドになることにはちょっと疑問があり、メルセデス・ベンツブランドとまま、最上級オープンモデルとして君臨していてはいけなかったのだろうか、とつい感じてしまう。速いのも、高性能なことも大切だし、きっと一般道路では使い切れないほどのパワーがあるのだろう。だが本当に大切なことはその部分だけではなく、もっと気持ちよくラグジュアリー感を醸し出すということであり、「SL」が速いだけ、高性能だけになったとしたらあまりにも残念なことと言える。だから、実際にこの「AMG SL」に乗ってみて、街で、どれだけ快適に、ゆったり走れるかどうか、そこが一番気になるところである。
Text: Henning Hinze
加筆: 大林晃平
Photo: Daimler AG