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【007祭り】「プラモデルはやっぱり面白い」番外編その2 「実は日本と関係深い007」

2021年10月24日

先日、「007」映画の新作「NO TIME TO DIE」が封切られた。すでにご覧になった方もいらっしゃるだろう。お気づきと思うが、本作の至る箇所に日本を意識した、と思われるシーンが見受けられる。監督はキャリー・ジョージ・フクナガという日系人だが、それが原因なのか否かは不明である。

本作品を私も鑑賞したが、帰路ふと思ったことがある。「007映画を見てきたのかな?」と頭に浮かんだのだ。「007」映画といえば、世界の平和を乱そうとする悪をジェームズ・ボンドが大暴れして倒す、という基本ストーリーだったはずだ。しかし前作、前々作である「スカイフォール」、「スペクター」(2作品ともサム・メンデス監督)はジェームズ・ボンドのヒューマンストリーが加味された気がする。それが新作では一気にメインテーマになったとも思える。
私自身は、「スカイフォール」がシリーズ中で一番気に入った作品であるが、「NO TIME TO DIE」はこれまでの作品とはまったく異質である。あと数回は劇場に通わないと「007」シリーズとしての評価が出来ないようだ。

それはともかくとして、今回は、「007」と日本に関わるトリビア(既に死語か?)を紹介したいと思う。

「ゴルゴ13」のルーツは「007」なのか?

先般、惜しくも劇作家のさいとう・たかを氏が亡くなられた。ご存知の通り、氏は「ゴルゴ13」の作者として活躍されてきた。しかし「ゴルゴ13」以前に007シリーズの「死ぬのは奴らだ」、「サンダーボール作戦」、「女王陛下の007号」、そして「黄金の銃を持つ男」を劇画化しているのだ(映画タイトルでは「女王陛下の007」、「黄金銃を持つ男」であるが、原作の翻訳タイトルは前記の通りとしている)。

4作品が発刊された。
単行本の発刊は昭和55年。

1963年に「ボーイズ・ライフ」誌(小学館から発刊されていた月刊誌)に連載し、後日、単行本としても発刊された。
氏は「死ぬのは奴らだ」のあとがきで「第一作である「ドクター・ノオ」が映画化され、その映画を観てきた私が“これを劇画にすれば、きっとおもしろい‼”と思っていた矢先に、編集部から“あれを劇画にしよう”という話がきた。まさに渡りに船だった。」と記している。
劇画版「007」の内容は、タイトルこそ「007」シリーズの作品名であるが、ストーリーは殆どさいとう・たかを氏によるオリジナルである。連載された「ボーイズ・ライフ」は、当時の中学生向けとしていたので、かなり分かりやすいようにアレンジされたのであろう。
現在でも復刻版が入手可能なようである。
ただし、表紙のデザインが変えられているようだ。

さいとう・たかを氏のご冥福をお祈りいたします。

「死ぬのは奴らだ」の表紙だが、ボンドガールが「ドクターノー」のボンドガールのハニー・ライダーに見える。

「ジョーズ」はあの日本人プロレスラーが演じたかも?

「007」シリーズの第10作「私を愛したスパイ」、第11作「ムーンレイカー」には愛すべき悪役として「ジョーズ」が出演している。
「ジョーズ」は同時期の大ヒット映画で、鋭い牙で人間を襲う巨大鮫を扱った映画名「ジョーズ」を意識したネーミングである。
悪役「ジョーズ」も光り輝く鋼鉄製の歯を武器に人やクルマまで襲う、というショッキングな設定で恐ろしい風貌である。しかし「ジョーズ」にはユーモアさえ感じられ、ファンから大好評であり2作連続で出演したのだ。
演じたのは「リチャード・キール」(2014年没)という米国人俳優であった。(身長218cm、体重143kg)彼の代表作品となったが、「007」シリーズの代表的な敵役ともなったのである。

こんなに恐ろしい形相だが、可愛いらしさも感じさせた。

そのような「ジョーズ」役に日本人プロレスラーである「ジャイアント馬場」(1999年没 身長203cm、体重135kg)にも出演オファーがあったのである。しかし、残念ながらそれは実現しなかった。007シリーズ製作期間は長期に渡るので、「ジャイアント馬場」のスケジュール調整がつかなかったと言われている。
今でも私は「ジャイアント馬場」演じる「ジョーズ」が、「アポ~」と呻きながら16文キックでボンドを攻撃するシーンを観たかったと思っている。

ジャイアント馬場の16文キックはプロレス界で一世を風靡した。
「ムーンレイカー」の最終頁には「日産ブルーバード」の広告が! 一方で、ロジャー・ムーアはライバル車の「トヨタ コロナ」の広告に採用されていたが?

「007は二度死ぬ」以外にも日本を舞台にした映画が計画された?

「007」シリーズの原作者であるイアン・フレミングは「黄金の銃を持つ男」を校正中に亡くなった。(1964年没 56歳)
しかしフレミング亡き後も「007」シリーズを継続させるべく、数名の作家がオリジナルの007小説を発表している。
それらの一つとして「007/赤い刺青の男」(レイモンド・ベンスン著)が上げられる。この作品は「007は二度死ぬ」以後のストーリーであり、ボンドの別の使命での活躍の場を、日本を舞台とした小説である。

外国人が日本をどのように見ているか、が分かる小説。

この作品が日本でも2003年に発表されると、「007」映画化が噂されて、某地方都市では、ロケ誘致運動が実際に開始された。8万人以上の署名が集まるほどの盛り上がりをみせた事の顛末は、「ジェームズ・ボンドは来ない」という本に描かれている。

涙なしには読めません。

ネタバレとなってしまうので、ここには詳細は紹介出来ない。

しかし第二の「007は二度死ぬ」が映画化されたら、どんなにか私を含めた日本の「007」ファンが歓喜したことだろうか。

Text & photo: 桐生 呂目男