【新車情報】アイコンモデルがEVに転身 フィアット500eの全てをレポート
2021年9月18日
フィアット500の電動モデルが街に登場!
新世代のフィアット500は、電気自動車のみの設定だ。新しいインフォテイメントを搭載し、半自律運転も可能だ。そんなフィアット500eのすべての情報はこちら!
➤ モデルラインナップと価格
➤ 外観とサイズ
➤ インテリア
➤ 装備
➤ コネクティビティ
➤ ドライビング
➤ パワーユニット
モデルラインナップ: 3種のバリエーション
生産開始から13年を経て、2020年に新世代の「フィアット500」が登場した。
これは新しいプラットフォームをベースにしたもので、駆動方式は電動のみだ。
ただし、ハイブリッド駆動のクラシックな(従来モデルの)「500」は、電動バージョンと並行して生産が続けられる。
電気自動車「500」には、3つのボディバリエーションがある。
クラシックバージョンは、フィアットがセダンと呼ぶ「3ドア」、「カブリオ」、そしてドアの追加された「3+1」の3種類だ。
「3+1」は右側に小さなドアがあり、観音開きなるため、後席へのアクセスが大幅に向上している。
価格は26,790ユーロ(約350万円)からだが、欧州でも電気自動車の購入補助金は、ここから差し引かれ、若干はリーズナブルな値段となる。
価格一覧:
フィアット500eセダン: 26,790ユーロ(約350万円)より
フィアット500e 3+1: 32,990ユーロ(約430万円)より
フィアット500eカブリオ: 33,990ユーロ(約445万円)より
外観: フロントのフィアットロゴがなくなった
新型車は、「500」であることははっきりと認識できるモデルだが、新しいデザインの特徴が、おなじみのレトロな要素と自然に混じり合っている。
例えば、ヘッドライトだ。
初代「フィアット500」がすでに持っていた、おなじみの丸いライトの特徴が、再解釈された、よりキュートものになっている。
ボンネットもデザインが変更され、よりワイドな印象になっている。
電気駆動のため、ラジエターグリルは省略されているが、台形の形でシートメタルに再統合されている。
中央にはフィアットのロゴではなく、「500」の文字を配し、2本の水平方向のトリムストリップで挟み込んでいる。
新しいフロントエプロンも台形になっており、1つ下の階のデザインを引き継いでいる。
そして、その上には、新開発の微細なハニカムグリルが配置されている。
サイドビューでは、新型「500」がより平面的なデザインになり、ドアが視覚的によく調和しているのがわかる。
また、ドアハンドルはボディに収納されている。
一方、リアでは、デザインを一新したテールランプと、トランクリッドや、エプロンのギザギザしたデザインが際立っている。
サイズ一覧:
● 全長: 3632mm
● 全幅: 1683mm
● 全高: 1527mm
● ホイールベース: 2322mm
● トランク容量: 185~550リットル
インテリア: 新しいワイドスクリーンディスプレイと新しいメーター
新しいインテリアは、よりすっきりとしたデザインになっている。
まずは「アイコン」のトリムを見てみると、ダッシュボードには大幅に大型化された、ワイドスクリーンディスプレイが配置されている。
10.25インチの画面は、タッチ操作や分割が可能で、アプリの表示も自由に設定できるようになっている。
その下には、ボタン類が整然と並び、収納スペースを縁取っている。
一番上の列は、エアコン、シートおよびフロントガラスのヒーターをコントロールする。
その下の4つのボタンは、ドライブギアの選択に使われる。
これは従来、オートマチックトランスミッションを搭載した、「アバルト」バージョンにのみ採用されていたものだ。
デジタルスピードメーターユニットは、すでにおなじみの丸いデザインを継承している。
もちろん、残りの航続距離や、バッテリーの充電量などを表示するディスプレイも新たに追加されている。
ステアリングホイールは、下部がフラットになったことで機能が増え、ボタンも今や貴重なものとなっている。
装備: 電動500が半自律運転に
新型「フィアット500」には3つの走行モードが備わっている。
「ノーマル(Normal)」では、通常の内燃機関のような走行を想定しており、「レンジ(Range)」では、アクセルペダルだけで走行し、ブレーキは完全に停止したときにのみ使用するワンペダルモードを採用している。
そして、「シェルパ(Sherpa)」モードは、可能な限り長い航続距離を確保するためのものだ。
このモードでは、時速80km以下で走行し、アクセルペダルの踏み込みがエンジンに優しく伝わり、エアコンやシートヒーターなどの消費電力は自動的にオフになるが、手動で再起動することができるようになっている。
そして、新型「フィアット500」は半自律運転が可能だ。
そのために、ブレーキとアクセルを独立して操作するアダプティブクルーズコントロールをはじめ、さまざまなアシストシステムが搭載されている。
このシステムは、他の車や歩行者、自転車にも注意を払う。
また、車線逸脱警告システム、標識を認識するスピードアシスタント、ブラインドスポットアシスタント、眠気警告システム、駐車を容易にする360度カメラシステムなども、このコンパクトカーには搭載されている。
装備: 小型電気自動車のための3つの装備ライン
フィアットの最小モデルには、3つのバリエーションがある。
「アクション」と呼ばれるベーシックモデルは、3ドアモデルのみの展開だ。
主な標準装備は以下の通りだ。
エアコン、光センサー、交通標識認識機能。
中位モデルの「アイコン(Icon)」からは、すべてのボディタイプが用意されている。
10.25インチワイドスクリーンディスプレイ、リアパーキングセンサー、16インチアロイホイールなどを標準装備している。
最上級のトリムは「ラ プリマ(La Prima)」と呼ばれている。
そして、「500e」には、フルLEDヘッドライト、シートとステアリングホイールのレザーシート、全周のパーキングセンサーとバックカメラ、ハイビームアシスト、半自動運転などが搭載されている。
コネクティビティ: アプリで気候をコントロールできる
Eプラットフォームを採用した「フィアット500」は、新しい「Uconnect 5」インフォテイメントシステムを搭載したブランド初のモデルだ。
このシステムは、Android Automotiveをベースにしており、Apple CarplayとAndroid Autoに対応している。
操作は10.25インチのワイドスクリーンディスプレイで行う。
このシステムでは、リアルタイムデータを利用して、渋滞や天気をナビゲーションに表示したり、周辺の充電スタンドを表示したりすることができるようになっている。
また、最大8台のデバイスにWi-Fiホットスポットを提供することができ、Amazon Alexaによる音声認識機能も搭載されている。
また、一部の機能やデータには、リモートでアクセスすることができるようにもなっている。
例えば、アプリを使ってバッテリーの充電状態を確認したり、車の位置を確認したり、タイヤの空気圧を確認したりすることができる。
また、車のロックやアンロック、ライトやエアコンのスイッチを入れることもできる。
ドライビング: 500eはよりタイトにチューニングされている
我々は、最初のドライブで、特に省エネ効果の高い「シェルパモード」を当然ながら試してみた。
このモードでは、ブレーキを使わずに車を走らせることができる、いわゆる片足走行が可能だ。
アクセルペダルを離したときの最大の減速感にはすぐに慣れる。
しかし、最大の航続距離が得られる、「シェルパモード」では、77馬力と80km/hという狭い範囲の最高速度しか得られない。
そのため、そのモードでは、運転していてもすぐに飽きてしまう。
それ以外のモードでは、移動中の「500e」は確かにきびきびしていて、それは穴や段差の多いトリノの道路でもよくわかる。
新型「500」は、快適性と安定性のバランスを重視しているが、先代よりもはるかにタイトなチューニングが施されている。
場合によっては、サスペンションの音がややうるさく、段差が乗員に伝わってしまうこともある。
それを補うために、安定性が大幅に向上し、ドライビングプレジャーもプラスされている。
パワーユニット: ベースモデルには弱めのパワーユニットが搭載されている
「フィアット500e」には、2種類の電動モーターとバッテリーが用意されている。
95馬力(70kW)の出力と220Nmのトルクを持つ弱いほうの電動モーターは、ベーシックな「アクティブ」トリムにのみ搭載されており、小型のバッテリーも同様だ。
バッテリーの容量は23.8kWhで、最大190kmの航続距離を提供する。
最高速度は135km/hだ。
上位の2つのトリムには、118馬力(87kW)と220Nmのトルクの電動モーターが搭載されている。
0から100km/hまで、スムーズに9秒で加速し、150km/hで停止する。
航続距離は最大321kmで、エネルギーは42kWhのバッテリーに蓄えられる。
そんなEVになった新型「500」を、数日前に横浜の路上で目撃した。淡いブルーのメタリックのそれは、ちゃんとナンバーもついていたことから、おそらくどこかの自動車メーカーが商品比較用に購入したものか、あるいはインポーターが認証用に輸入した一台だったのだろうか。
その時は遠くから走ってきたのだが、「フィアット500」であることは一見してわかるが、なにかが違い、あきらかに新しく感じられ、そして品質も高いこともわかるような、きわめて魅力的なアピアランスを持っていた。
その姿を見たときに思ったことは、多くの自動車好きときっと一緒だと思う。
「あの姿で、ツインエアエンジン搭載モデルは発表されないものだろうか?」
今の時代の流れを見ていると、可能性は少ないと思われるが、それでも内燃機関エンジン追加モデルの登場を、ついつい待望してしまうのである。
Text: Katharina Berndt
加筆:大林晃平
Photo: Fiat