独仏コンパクトMPV一騎打ち 新型ルノー カングー対VWキャディ 勝者は?
2021年9月11日
新型ファミリーフレンドバンの決闘。カングーとキャディは何が違うのか? ハイルーフのステーションワゴンは、決して古いものではない。それを証明するのが、このVWキャディとルノー カングーの新型車だ。
ハイルーフのステーションワゴンを探している人はほとんどいないだろう。
しかし、この非常に実用的なMPVは、純粋に商用のための車であり、魅力に欠ける荷台を備えたバンという評価を受けているが、それは極めて不当な評価である。
フォルクスワーゲンとルノーは、初めて「ゴルフ」をベースにした「キャディ」と、ディーラーショールームに並び始めてまだ数週間しか経っていない「カングー」の新モデルで、このことを印象的に証明している。
ワークマンシップとマテリアルの面ではキャディが勝っている
「キャディ」も「カングー」も、高級感よりも実用性を重視していることは間違いない。
目で見ても、手で触っても、どこもかしこも実用車だ。
ちょっとしたテクスチャーが、それを和らげてくれるものの、どちらのインテリアも硬質プラスチックが主流だ。
それでもVWの方が、素材やインテリア全体の質感が高く、完成度が高いように感じる。
「カングー」では、特にハイルーフステーションワゴンで重要かつ需要の高いラゲッジルームを中心に、細部に不満が残る。
「キャディ」は床から窓のラインまでカーペットが敷かれているが、「カングー」の荷物は見栄えの悪いプラスチックの上に置かれるしかない。
一つの要素でカングーの方が明らかに実用的な点がある
「キャディ」の荷台の高さは地面から56センチ、「カングー」は57センチなので、どちらも荷物を積むときに背中が痛くなることはない。
背骨が痛むのは、「キャディ」の重いベンチを取り外そうとするときだけだ。
それをくれぐれも一人でやらないように。
一方、「カングー」は、この問題をもう少し巧妙に解決し、分解することなくリアシートを完全に下げることができるようにしている。
「キャディ」も「カングー」も、大きなテールゲートからラゲッジルームにアクセスできるようになっている。
ルノーでは、テールゲートを開けるときに手が鋭角のプラスチックを握るようになってしまい、この部分など細部にもう少し注意を払う必要がある。
両者にとって魅力的な選択肢は、特に都市部では、非対称のリアドアだ(カングーは200ユーロ=約2万6千円)、キャディは202ユーロ=約2万6千円)。
2列目には、3人の乗員が頭と足を乗せるスペースは十分に確保されているものの、膝のためのスペースはあまり広くない。
もっとスペースが必要、あるいは欲しいという人には、VWとルノーは、「キャディ」と「カングー」ともに、ロングホイールベースを設定している。
また、1列目のスペースが非常に広々としていることも、シートポジションが心地よく高いことも評価できる。
しかし、「キャディ」は、より快適なシート表皮と、わずかに優れた外観で感銘を受けるが、テストしたバージョンでは収納スペースが少なくなっていた。
その点では「カングー」の方が明らかに有利だ。
価格面ではキャディがカングーに明らかに負けている
「キャディ」と「カングー」は、それぞれの操作コンセプトがあまり評価されていない。
VWのシステムの場合、答えよりも疑問が多く、電子デバイスなどのタッチコントロールには慣れと忍耐が必要だ。
ルノーの場合は、ドライバーとクルマのコミュニケーションもタッチディスプレイを介して行われ、少しすっきりしているが、グラフィックの古さには驚かされる。
クライメートコントロールは、古典的なアナログ式のままだ。
「キャディ」は「ゴルフ」にも搭載されている「MQB Evo」システムを採用しているため、ダイレクトで正確なステアリング、しっかりとしたサスペンション、18インチのタイヤを履いていても段差を荒々しく処理する程度だ。
一方、「カングー」は、サスペンションがゆったりしていて、体の動きが少し大きくなるが、荷物を積んでいなくても柔らかく、暴れることはない。
115馬力(VW)と130馬力(ルノー)のガソリンエンジンは、どちらもそれほど猛烈なパワーは出ないので、のんびりしたい人におすすめだ。
荷物を積んで出かけることが多い人は、高トルクのディーゼルエンジン(VW: 75、102&122馬力、ルノー: 95馬力)をお勧めする。
最終的な比較は価格に関してだ。
「カングー」の追加料金リストは簡潔にまとめられている。
26,700ユーロ(約350万円)の「カングー インテンスライン」には、ほとんど不満はなく、管理しやすい数のエクストラが用意されているので、預金を使い果たすことはない。
シートヒーターは350ユーロ(約4万5千円)、リアビューカメラも同額、ナビゲーションシステムは標準装備となっている。
VWはオプション装備などなど、ルノーより高価だ。
我々のテストに供された車は、「キャディ」が35,557ユーロ(約465万円)、「カングー」は28,580ユーロ(約374万円)だ。
第2位 800満点中477点: ルノー カングーTCe 130
「キャディ」と互角に渡り合うためには、ほんの少しの調整が必要だが、完璧なファミリーパートナーだ。
第1位 800満点中508点: VWキャディ1.5 TSI
広々としたスペース、細部の作り込みは優れているが、インフォテイメントは劣る。より自信を持って運転できるが、コストは高い。
結論:
この2台のハイルーフのステーションワゴンをよく見てほしい。
「VWキャディ」と「ルノー カングー」は、SUVの競合車に比べても、本当にほとんど劣っていない。
性能が良く、燃費も悪くなく、スペースも広いので、簡単に競合車を上回ることができる。
最初は「いったいあの可愛い「カングー」になんてことをしてくれるんだ!」と思ったフルモデルチェンジだが、慣れるしかないかな、とも思うようになった。しかしそれでも、今回のテスト車の地味なボディカラーと、あらずもがなの(しかもこれまた地味な)、木目パネルのついた内装など、我々の知っている「カングー」らしくない、「カングー」だ。こんなのテスト車に選ぶなんてセンスが問われる。
といったことはともかく、今回の比較テスト、けっこうな点数差がついてしまっていることが、ちょっと不思議でもある。内装も(フォルクスワーゲンゴルフの方だって、特別に魅力的なわけではない)、走行性能も、「カングー」に圧勝しているのかというと、それほどのアドバンテージがあるとも思えず、正直、このファミリーバン&商用車のセグメントにおいては、価格が高価な分だけフォルクスワーゲンのほうが、分が悪いのではないか、とも思うのだが…。今回の裁定は納得いかないというのが本音だ。
まあ、日本市場に「ゴルフ キャディ」が導入されるかというと、今の感じだと可能性は低いだろうし、日本では直接比較テストはできないから何とも言えない。あとは本当にこの「カングー」のルックスが、日本のファンに認められるかどうか、そここそが一番気になる部分なのである。
Text: Tim Dahlgaard, Christoph Richter
加筆: 大林晃平
Photo: Olaf Itrich / AUTO BILD