【このクルマなんぼ?】ホンダ S2000 未だに高人気を誇る日本の生んだカルトスポーツカー クラシック オブ ザ デイ
2021年8月28日
1999年の創業50周年を記念して、ホンダは「S2000」を発表した。240馬力の高回転型自然吸気エンジンを搭載したこのロードスターは、現在でもカルト的な人気を誇っている。そんなS2000も、もはやクラシックカーというかオールドタイマーの仲間入りと聞いては感慨深いものがある。
1963年は、ホンダにとって特別な年であった。それまで、この日本のメーカーは、自動車は作らず、オートバイだけを作っていたのだ。そして、その年に生まれた「ホンダS500」は、従来のコンパクトモデルではなく、ロードスターとして世間を騒がせたのだった。
そして、1999年の本田技研工業創立50周年を記念して、「S2000」というオープンスポーツカーが作られることになったのである。その3年前の、「SSM」スタディモデルで、ホンダはモダンなスポーツカーのビジョンを示していた。市販モデルでは、ドライバーオリエンテッドなコックピットに、ハイレブコンセプトや、デジタルインストルメントクラスターなど、「SSM」の中心的な要素が採用された。
高回転型エンジンを搭載したホンダS2000
1999年に生産を開始したホンダS2000。2.0リッターのエンジンは、自然吸気で240馬力を発揮する。9,000rpmという高回転を実現するために、駆動部をショートストローク化し、クランクシャフトを短くすることで安定性を高めている。また、この4気筒エンジンには、ホンダの可変バルブタイミングシステム「VTEC」が採用されている。
6000rpm付近で、エンジンの電子回路が、バルブの吸排気時間を延長し、より多くの空気をシリンダー内に送り込む。また、噴射量を増やすことで、必要なときに、必要なだけ、パワーを発揮することができるようになっている。このコンパクトなユニットは、2000年から2004年まで、「インターナショナル エンジン オブ ザ イヤー」を受賞している。「S2000」は、「SSM」スタディモデルが、オートマチックトランスミッションを搭載していたのに対し、マニュアルトランスミッションのみを搭載したモデルである。
2004年のフェイスリフト時に、シャシー、フロント、リアのデザインなどが変更された後、2009年半ばに生産を終了した。ドイツ国内では、10年間の生産期間中に、約4,500台しか販売されず、2021年1月1日時点で、1,813台が登録されている。国際的には、11万台以上が販売され、その半数以上が米国で販売された。「S2000」に搭載されたマニュアルトランスミッション仕様として見ても、確実に成功したモデルと言えるだろう。純粋なドライビング体験に加えて、「ワイルド・スピード(Fast and Furious)」シリーズの映画にも何度か登場し、その中で、「S2000」は登場人物のスキとジョニー トランによって運転され、ロードスターは伝説となった。
現在のホンダS2000の中古車価格は?
現在、ホンダS2000の中古車を探すなら、最低でも15,000ユーロ(約200万円)の予算が必要で、走行距離が10万キロ前後の個体では、最低でも20,000ユーロ(約265万円)になる。走行距離の極めて少ない個体では、30,000ユーロ(約400万円)から40,000ユーロ(約520万円)以上で、取り引きされている例もある。2002年当時、「S2000」の新車価格は3万5,000ユーロ(約450万円)だった。
申し訳ないことに、最近、「ホンダS2000」のことをすっかり忘れてしまっていた。街でみかける機会もめっきり減っていたし、今回のコンテンツを見たときに、「そういえばそういうクルマもあったっけなぁ」と思ったのだから失礼にもほどがある。
こうして改めてみると、内装が極めてシンプルで好感が持てるし、その中身もかなり真剣に作ったスポーツカーであることがわかる。そう、「S2000」は、真剣に走りを追求して作ったオープンモデルで、その部分に関しては、相当ピュアな成り立ちの自動車なのである。「マツダ ロードスター」とも比較されるが、あちらは絶対性能よりも、軽さと軽便な方向性を持っているが、「S2000」は、より本格派であって、言ってみればマジな走りの自動車である。20年前にこの車を所有していた人に乗せてもらったことがあるが、その時はエンジンの違いや剛性感など、「マツダ ロードスター」との違いに驚いたものだ。
もちろん絶対的な性能は魅力のすべてではないが、そちらの方向を追求するのはいかにもホンダらしい。もうこういうピュアな走りを追求した2シーターは、ホンダから今後出ないのだろうか?そう思うとドイツでの高価格も納得がいく額である。
Text: Jonas Uhlig
加筆: 大林晃平
Photo: autobild.de