日独ディーゼルエンジンSUV対決 マツダCX-5対BMW X1対VWティグアン ベストセラーコンパクトSUV×3台比較テスト その結果は?
2021年8月23日
ディーゼルエンジンを搭載したコンパクトSUV、BMW X1、マツダCX-5、VWティグアンを比較テスト。最大200馬力のディーゼルを搭載した、3台のSUV。パワフルなエンジンは、ドライビングプレジャーとユーティリティーの両方を向上させる。
今回の比較対象となる3台の候補は、いずれも実績のあるベストセラーSUVであり、少なくとも1回のリフレッシュ(フェイスリフト)を行っている。
我々は、2020年11月に、よりマイルドな150馬力バージョンをすでに比較したが、今回は、184〜200馬力の「BMW X1」、「マツダCX-5」、「VWティグアン」の3台がテストに臨む。
3台のSUVの出来栄えは、まず、しっかりしているように見える
初めは、3台とも同じように加工されたルーフを備えた、似たようなSUVのように見えるが、改めて見直すと、その違いが明らかになる。
BMWでは、ボンネットの下に歩行者保護リフトを設けたり、ラジエーターグリルをロックできるようにしたりするなど、デザインに力を入れている。
VWでは、エンジンルームのシートメタルは塗装ではなく、下地処理のみ。
マツダは、ドアシールが一部しか固定されていなかったり、運転席のフットウェルが中途半端な仕上がりになっていたり、その全体的に上質な印象を、損ねている。
また、「CX-5」はカーペットが足りないようで、断熱材やステアリングの技術の遅れが見え隠れしている。その部分は隠れているため、膝をついて見ないとわからないので、ちょっとびっくりする。まあマツダらしいといえば、らしいのだが・・・。
洗練されたマツダは、184馬力を感じさせない
走行中、「CX-5」のディーゼルは、控えめで、滑らかな走りで楽しませてくれる。
スカイアクティブの原理を採用し、余裕のある排気量(今回の対戦相手は2.0リッター)と、ディーゼルとしては低い圧縮比(14.4:1)が、洗練された印象を与えるが、アジア代表のSUVは、184馬力を感じさせない。
加えて、マツダのディーゼルは、そのパワーを、わずか6段のトルコン式オートマチックで制御している。
16馬力よりパワフルな、「VWティグアン」よりも、タフな印象を受ける。
後者は、加速時には「BMW X1」よりも優れている。
また、80km/hから120km/hまでの、中間スプリントでは、バイエルン製SUVよりも、1秒早く完了する。
VWのデュアルクラッチトランスミッションの原理により、シフトチェンジは競合他車ほどスムーズではない、その変化は以前よりも細かく感じられる。
「CX-5」のオートマチックトランスミッションは、ターボディーゼルのトルクを利用して、細かくシフトするのではなく、高いギアに留まることを好む。
自動制御がうまくいっているにもかかわらず、燃費はリッターあたり14.7kmと、(軽量な)競合モデルよりもわずかに劣る。
X1の敏捷性は、けっこう神経質
BMWのエンジンは、低回転域では、マツダ製エンジンよりもディーゼルらしい音がする。
噛みしめるようなスロットルレスポンス、最高のブレーキ、センター付近の不正確さを排除した、ダイレクトで意図的にやや硬めに設定されたステアリング、非常にタイトでショートストロークかつ強力にプログレッシブなサスペンションなど、期待通り、「X1」は本物のスポーツマンである。
全体的に俊敏性を重視しているため、神経質になってしまいそうなほどだ。
今回装着されていたスポーツシートには、ランバーサポートはなく、シートボルスターをネジで調整するタイプのもので、ノルトシュライフェ(ニュルブルクリンクサーキット北コース)では必要なような類のものだ。
それに比べて、「マツダCX-5」のステアリングは、センター位置を中心にして、ややドッシリとした印象を受ける。
悪路では、「CX-5」はかなり頑固で、サスペンションは「VWティグアン」よりもショートストロークのようで、より多くのものを提供してくれる。
ティグアンは最も快適な車である
コーナリングでは、コンチネンタル製プレミアムタイヤが、よくグリップしているにもかかわらず、マツダのリアエンドが旋回したときには少しショックを受けた。
一方で、他の2台は頑固にステアリングの指示に従ってくれた。
「CX-5」の重量の59パーセントが、フロントアクスルにかかっているというフロントヘビーな重量配分が、おそらく一役買っているのだろう。
リアは非常に軽いのだ。
一瞬のショックでも、ESPがリアを受け止めてくれるので、安全上の問題はない。
一方、「BMW X1」は、本当に素晴らしいコーナリング性能を見せる。
今回、VWは、調整式ダンパー(1,045ユーロ=約13万8千円)とプログレッシブステアリング(225ユーロ=約3万円)を装着した、「ティグアン」をテストに送ってきた。
「ティグアン」だけが、18インチ、他は19インチのホイールを装着していた。
サイドの高いタイヤが持つ、固有のダンピング効果だけで、快適さが増している。
一方、BMWは操作性に優れている。その回転式のプッシュボタンに加えて、スクリーンにタッチ式のオプションが用意されており、その操作性は他の追随を許さない。
「ティグアン」のインフォテイメントは多くのことができるが、遅さ、わかりにくい記号、わかりにくいメニューナビゲーションに悩まされ、一般のユーザーは圧倒されてしまうだろう。
マツダは、メンテナンスのしやすさや、価値の一貫性など、いくつかの隠れた品質を提供している。
ダンパーの調整や、ドライビングモードもなく、セレクターレバーをDにセットして走り出すだけという、他のモデルよりもシンプルなものだ。
しかし、競合他車が導入している、セーリング機能のような低燃費技術は備わっていない。
また、携帯電話用の誘導式充電クレードルや、ワイヤレスのApple CarPlayの接続コマンドなども見つかりにくく、無駄な時間を探すことに費やすことになる。
第3位: 800満点中507点: マツダCX-5スカイアクティブ-D 184 AWD
シャシーや接続性に細かな弱点はあるが、価値は高い。特に価値が安定している。
第2位 800満点中553点: BMW X1 xDrive20d
高価で、シャシーが硬すぎる。しかし、ブレーキ、燃費、品質感、操作性は際立っている。
第1位 800満点中571点: VWティグアン2.0 TDI 4MOTION
スペース、サスペンション、ステアリングはトップレベルだ。ただし、ナビなどの操作性については、よほどスマートフォンに詳しい人でないと喜べない。
結論:
「VWティグアン」は、価格、性能、広さ、最もバランスのとれたサスペンションとステアリングのパッケージで勝っている。そのため総合的に1位となった。
「BMW X1」は、最高のディテールクオリティと、最高のブレーキを提供するが、価格が高い。それでもドライビングプレジャーは高い。
「マツダCX-5」は、購入費用を抑え価値を維持してはいるが、それでもやや古くなってきたと言える。
個人的にはディーゼルエンジンのモデルが大好きで、今も所有している車はディーゼルエンジンだし、以前にもディーゼルエンジンの車を所有してきた身としては、今後のディーゼルエンジンの未来を考えると寂しくなってしまう。
ここ数年で世の中から姿を消すということは考えにくいが、それでも今後ディーゼルエンジンの乗用車、SUVに薔薇色の未来などはないし、おそらく縮小の速度はガソリンエンジンの内燃機関よりも速いだろう。
今回の3台はどれも魅了的だし、順位をつけられてはいるが、ディーゼルエンジンとSUVのマッチングを考えると、どれもそれなりに積極的に選びたくなるような自動車たちである。
確かに「CX-5」は出てからけっこうな年月が経過したモデルでもあるため(噂では来年以降にフルモデルチェンジらしい)、厳しい結果とはなってはいるものの、まだまだ乗ってみれば魅力的な面も多いし、エンジンの仕上がりは3台中でも一番なのではないかとも思う。
「フォルクスワーゲン ティグアン」が一位になったのは、言うまでもなく総合的なバランスが良く、優等生的な面と良心的な価格が評価されたからで、2位の「X1」がスポーツの部分をより前面に押し出した結果とその割高感のある価格が裏目に出たのとは、対照的だといえる。
本当にこういう風に自由にディーゼルエンジンもガソリンエンジンも、そのハイブリッドモデルも自由に選べる時代はあとどれくらいなのだろう、そんなことを考えると、今のうちにこんな時代をたくさん愉しんでおくべきかな、とも感じてしまう。
Text: Rolf Klein, Berend Sanders
加筆: 大林晃平
Photo: Christoph Börries / AUTO BILD