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【動画付き】初テスト 新型ポルシェ911(992)GT3ツーリング フェイスリフトバージョンに初試乗&レポート

2021年8月23日

ポルシェ911 GT3ツーリング(992)に初試乗。それは至福の時。911 GT3にツーリングパッケージを装着して、目立たないように走るポルシェ 911 GT3 ツーリングには特徴的なリアウィングはないものの、それでも刺激的な効果がある。そのことは、我々のテストドライブが示している。

何かが違う!?数字は多くを約束する。最高出力510馬力、最大トルク470Nm、0-100km/h加速3.9秒。新型「911 GT3ツーリング(正式にはツーリングパッケージを装着した911 GT3)」は、後輪駆動で、ターボなしの水平対向6気筒エンジンを搭載し、最高出力をリアに送り、加速する。ギアチェンジはもちろんマニュアルだ。つまりこの車は、オールドポルシェファンの、お馴染みの、「911」なのである。

リアのボクサーエンジンは特に回転数を欲しがる

技術的には、シンプルで、その性能は、最近のほとんどのスポーティなセダンでも体験することができるものだ。それなのに、どうして新型「911 GT3ツーリング」はこれほどまでに我々を興奮させるのか。それはそのパワーユニットだと即座に断言できる。今回のテストでも、その驚異的な自然吸気エンジンのフィーリングが好印象だった。素晴らしく自由自在なボクサー6気筒エンジンは、素晴らしい性能を発揮する。991シリーズの「GT3 RS」や「スピードスター」のコンポーネントが、このボクサーエンジンに引き継がれている。このエンジンは、レッドゾーンに向けて狂ったように暴れ、猛烈なパワーを発揮し、レッドゾーンを超えてもなお猛烈なパワーを発揮して、ドライバーを楽しませてくれる。エンジンの回転数を、常に5,000回転以上に保ちたいという願望は、過剰であり、ほとんど無茶苦茶であり、現代の気候変動の観点からは、罪悪感をも持ちそうだ。しかし、最終的には、パティキュレートフィルターを搭載しているので、環境規格にも準拠していることになり、小さな問題で済む。もうひとつ、エンジンサウンドシステムについてだが、ポルシェの才能は、OPFにもかかわらず、素晴らしいサウンドを奏でるスピードスターですでに証明されているが、992にも同じことが言える。そのエンジンサウンドはまさに我々を興奮させる。

数字だけを見ても、多くのことが期待できる。最高出力510馬力、最大トルク470Nm、0-100km/h加速タイム3.9秒だ。

RSRのシャシーパーツを使ったコーナリングアーティスト

そのコーナリング性能は眼を見張るほどに素晴らしいもので、圧倒される。なぜ、これほど、正確かつスムーズ、そしてシャープにコーナリングができるのだろうか?それは、ギアボックスのおかげだ。手で管理しなければならない6つのギアは、おそらくポルシェでなければ、あれほど簡単かつ正確にレーンを移動することはできないだろう。革で覆われたギアシフターが、車線から車線へと移動するときの、ある種の機械的な音の響きが恋しくなる。加えて、新型「911 GT3ツーリング」の重さも、このハイパフォーマンスに貢献している。ポルシェは、テクニカルデータに、乾燥重量、1,418キログラムと記載している。先代モデルと比べても、1グラムも増えておらず、比較的、ライトウェイトスポーツの水準を保っている。

では、ステアリングやシャシーは?「GT3ツーリング」は、極めて正確に素早くステアする。方向制御は、当然のことながら、今回もレール上を走るような正確さで、十分なフィードバックと、一流の復元トルクも輝いている。これは、「GT3」が「RSR」から受け継いだ新しいダブルウィッシュボーンのおかげでもある。

壮大: GT3ツーリングは、まるでレールの上を走っているかのように走り、ステアリングの精度はピカイチ。

快適性? あまり期待しないほうがいい

乗り心地だが、サスペンションのスプリングの剛性を高め、スタビライザーバーをやや柔らかくしたことも新しい点だが、これだけでは快適性はあまり期待できない。確かにそうだが、この点に多くを期待するのであれば、「カイエン」や「パナメーラ」を買ったほうがいいだろう。それでも、特に長距離ドライブならば、コンフォートモードやツーリングモードが望ましいだろう。本革をふんだんに使用しているインテリアもとても好ましい。先代モデルと同様に、ステアリングホイールのリムやシフトレバーには、アルカンターラではなくスムースレザーが採用されている。また、標準装備のブラックのファブリックが採用されている、バケットシートも長時間ドライブをしっかりとサポートしてくれる。

テクニカルデータ: ポルシェ911 GT3ツーリング
● Engine: 水平対向6気筒エンジン、リア縦置き ● 排気量: 3996cc ● 最高出力: 510PS@8400rpm ● 最大トルク: 470Nm@6100rpm ● 駆動方式: 後輪駆動、6速MT ● 全長×全幅×全高: 4573×1852×1279mm ● 乾燥重量: 1418kg ● トランク容量: 132リットル ● 最高速度: 320km/h ● 0-100km/h加速: 3.9秒 ● 平均燃費: 7.7km/ℓ ● CO2排出量: 292g/km ● 価格: 170,969ユーロ(約2,256万円)

パワーハウス: 素晴らしく自由な6気筒ボクサーエンジンは、最高出力510馬力、最大トルク470Nmを発揮する。

結論:
ポルシェはまたしても最高のエンジニアリングを発揮した。「911 GT3」のパフォーマンスは堪能したいが、注目を浴びたくないという人には、これ以上のものはないだろう。
AUTO BILDテストスコア: 1-

このウイングなしの「GT3」が出た時に、日本でも「ウイング付きのGT3にすべきか、ウイングなしのGT3にするべきか」悩む問題だ、というレポート記事を読んだ。確かに、それはその通りで、せっかく「GT3」を買うのだから、ウイングのついた、「わかりやすい」、「GT3」を購入するというのは正論?だし、ウイングもなく、控えめな「GT3」のほうが、エンスージャスト濃度が高い、という論も実によくわかる。

というのも、この「一見外観が地味な仕様のGT3」というのは、なかなかシブイ、実にエンスージャスト向けに、ポルシェはいいところをついてきたように個人的には思うからだ。今までの「GT3」はご存じのように、ひたすらレーシーで、大型のウイングが起立したモデルだが、そういったアピアランスではなく、普通のルックスで「GT3」のような、辛口のポルシェに乗りたいというコニサーは、必ず、そして少なからずいるはずだ。

そもそもポルシェというのはそういう、実用になる高性能車というのが本来の姿であり、今回のツーリングパッケージはそういう意味では王道のような気もするからである。さらに、それに、MTが組みあわされ、写真のように、しぶいブラック塗装などを施された車は、まさに通のための一台。これこそが究極の「911」、と言ってもいいのではないだろうか。でも自分でこういう渋いクルマの契約書にハンコを押すかというと、最後の最後で、「これでよかったかな」と、必ずビビってしまうであろう私は小市民である。

Text: Christoph Richter
加筆: 大林晃平
Photo: Porsche AG